「今日の小さなお気に入り」 - My favourite little things

古今の書物から、心に適う言葉、文章を読み拾い、手帳代わりに、このページに書き写す。出る本は多いが、再読したいものは少い。

国旗と国歌 2005・04・29

2005-04-29 06:30:00 | Weblog
 今日の「お気に入り」は、新潮社刊「ひとことで言う 山本夏彦箴言集」から次の「ひとこと」です。

 「どこの国の旗も歌も血に染まってないものはない」

 山本夏彦さん(1915-2002)のコラムの中で、この「ひとこと」が、どのような文脈で用いられたものであるかを、本書は「コラムの抜粋」の形で次のように紹介しています。詳しくは、原典である山本夏彦著「世はいかさま」を見る他ないのですが、あいにく手許に見つかりません。

「いかにも戦前は戸ごとに日の丸の旗をたてた。三大節をはじめ国民の祝祭日には必ずたてたから、俗に旗日といった。
 白地に赤く日の丸染めて、ああ美しや日本の旗は――と歌った。日章旗の意匠は単純明快で世界に冠たるものだと当時はいった。それが一変して今は忌むべきものとなったのは、その旗のもとで将兵の多くが死んだからだというが、どこの国の旗も歌も血に染まってないものはない。フランスの国歌の文句のごときは『血ぬられたる旗はあげられたり進め祖国の子らよ』とアジっている。」

  (山本夏彦著「世はいかさま」所収の「白地に赤く日の丸染めて」という題のコラムです。)
  

 山本夏彦さんは、その著「二流の愉しみ」に収められている「旗なし旗日三十年」と題するコラムの中でも、同じテーマで書いておられます。そのコラムの中には次のような「ひとこと」があります。

 「食いものの恨みは忘れ、旗や歌の恨みだけおぼえているのは不自然だというより、うそである。」

  (山本夏彦著「二流の愉しみ」所収)
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