「今日の小さなお気に入り」 - My favourite little things

古今の書物から、心に適う言葉、文章を読み拾い、手帳代わりに、このページに書き写す。出る本は多いが、再読したいものは少い。

2005・04・12

2005-04-12 07:00:00 | Weblog
 今日の「お気に入り」は、山本夏彦さん(1915-2002)のコラム集から。

 「人間ひきぎわが大事だなどと他人のことなら言うが、自分のことになるとたいていの人は目が見えなくなる。」

  (山本夏彦著「『戦前』という時代」所収)


 「大企業に属していれば、友のごときものが出来ます。病気で休めば会社に届けなければなりません。ながく休めば見舞に来てくれます。結婚すれば祝ってくれる、忘年会もあれば新年会もあります。手帳には書くことがいっぱいあります。電話をかける相手もありますから、ついうかうかと定年までいます。そしてハタと気がつくのです。退職したらもう顔を出すところがないのです。」

 「以前は会社を去っても家族がありましたが、いまはありません。」

  (山本夏彦著「つかぬことを言う」所収)


 勤め人をしていた頃、退職者が元の職場を訪ねてくることがありました。現職の顔触れも大分変わっている中、いかにも所在なげでした。訪ねて来られる方も、本音では迷惑なのです。そうした空気を読めずに、その後も度々訪ねてくる人もおりました。
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