今日の「お気に入り」は、ポルトガルの詩人フェルナンド・ペソア(1888-1935)の「わたしが死んでから」と題した詩一篇。
「わたしが死んでから わたしの伝記を書く人がいても
これほど易しいことはない
二つの日付があるだけだ――生まれた日と死んだ日との
この二つの出来事にはさまれた日びはすべてわたしのものだ
わたしがどんな人間であったか語るのは易しい
わたしは見た 狂人のように
事物を愛した いかなる感傷もなく
果せなかった望みはなにもない 盲(めし)いたことがなかったから
聞くことさえ見ることに付随する行為にすぎなかった
わたしは学んだ 事物は実在したがいに異なることを
それをわたしは理解した 頭でなく眼で
頭で理解することは事物をすべてひとしいと見なすことであろう
ある日わたしは子供のように睡くなった
わたしは眼を閉じて睡った
そしてわたしはただ一人の自然詩人だった」
(「フェルナンド・ペソア詩選『ポルトガルの海』」池上岑夫編訳 彩流社刊 所収)
「わたしが死んでから わたしの伝記を書く人がいても
これほど易しいことはない
二つの日付があるだけだ――生まれた日と死んだ日との
この二つの出来事にはさまれた日びはすべてわたしのものだ
わたしがどんな人間であったか語るのは易しい
わたしは見た 狂人のように
事物を愛した いかなる感傷もなく
果せなかった望みはなにもない 盲(めし)いたことがなかったから
聞くことさえ見ることに付随する行為にすぎなかった
わたしは学んだ 事物は実在したがいに異なることを
それをわたしは理解した 頭でなく眼で
頭で理解することは事物をすべてひとしいと見なすことであろう
ある日わたしは子供のように睡くなった
わたしは眼を閉じて睡った
そしてわたしはただ一人の自然詩人だった」
(「フェルナンド・ペソア詩選『ポルトガルの海』」池上岑夫編訳 彩流社刊 所収)
