

今日の「お気に入り」は、昨日の続き。
「 英国の子どもたちは小学生のときから子どもの権利について繰り返し教わるが、ここで
初めて国連の子どもの権利条約という形でそれが制定された歴史的経緯などを学んでいる
ようだ。
『 そういう授業、好き?]』とわたしが聞くと息子が答えた。
『 うん。すごく面白い』
実はわたしが日々の執筆作業で考えているような問題を中学1年生が学んでいるん
だなと思うと複雑な心境にもなるが、シティズンシップ・エデュケーションの試験で最初
に出た問題がエンパシーの意味というのには、ほお、と思った。
『 エンパシーって、すごくタイムリーで、いい質問だね。いま、英国に住んでいる人たち
にとって、いや世界中の人たちにとって、それは切実に大切な問題になってきていると思う
から 』
『 うん。 シティズンシップ・エデュケーションの先生もそう言ってた 』と、ちょっと誇
らしげに顎をあげてから息子は続けた。
『 EU離脱や、テロリズムの問題や、世界中で起きているいろんな混乱を僕らが乗り越え
ていくには、自分とは違う立場の人々や、自分と違う意見を持つ人々の気持ちを想像して
みることが大事なんだって。つまり、他人の靴を履いてみること。これからは『 エンパ
シーの時代 』、って先生がホワイトボードにでっかく書いたから、これは試験に出るなっ
てピンと来た 』
エンパシーと混同されがちな言葉にシンパシーがある。」
(ブレイディみかこ著 「 ぼくはイエローでホワイトで、ちょっとブルー 」 新潮社刊 所収)

