「今日の小さなお気に入り」 - My favourite little things

古今の書物から、心に適う言葉、文章を読み拾い、手帳代わりに、このページに書き写す。出る本は多いが、再読したいものは少い。

人生の苦味  Long Good-bye 2023・01・05

2023-01-05 05:45:00 | Weblog




   今日の「 お気に入り 」は 、伊集院静( いじゅういん しずか 、
   1950年〈 昭和25年 〉2月9日 -  )さん の 随筆から スクラップ 。
   順不同 。備忘のため 。

   「 私は父の手の感触を知らない 、手を引かれたことも腕で
    かかえられたこともない 。父はそういうことを子供にする
    人ではなかった 。 」

      昭和天皇と同じ1901年 ( 明治34年 ) 生まれの父を持つ筆者も 、
      父の手の感触を知らない。その父が1956年に亡くなった日は 、
      筆者が滿8歳になった誕生日の6日後 。学校を早引けして駆けつ
      けた自宅で見た 、死の床にある父の顔 、姿 、形は鮮明に憶えて
      いるが 、その日以前の父にまつわる記憶は 、すべて 、筆者の頭
      の中から消えてしまった 。
       修正を施された遺影やアルバムに残された画像の記憶は後付けの
      イメージだ 。在りし日の父の写真のみで 、一緒に写った家族写真はない 。
       父の40代後半になって出来た 、三人兄弟の末っ子として 、子供
      好きの父からずい分可愛がられて育ったと 、のちに母から聞かされ
      たものである 。その可愛がられた記憶がかけらもない 。
       幼時の記憶が薄れたせいではない 。67年後の今もない 。
       脳は 、不都合な事実を 、消すか 、どこかに封印するらしい 。


   「 失恋は 、そりゃしないで済んだ方がイイに決っているが 、
    失恋をした人間の方を 、私は信用する 。
     色男や 、ボンボンは 、なぜ失恋をした方がよいのかを
    わからず 、バカのまま一生を終える 。甘チャンの人生な
    のだ 。 なぜ甘チャンか? それは苦味 ( にがみ ) の味覚
    を知らないからである 。
     料理にとっても 、酒にとっても 、苦味が上質への必須条
    件である 。口にするものでさえそうなのだから 、ましてや
    人の生き方であるならなおさらである 。 」

      自慢じゃないが 、二度三度振られた経験はある 。ちょっと考えてみりゃあ
      すぐわかる 。なんの教養もない 、話しも薄っぺらな青二才に惚れる方がど
      うかしている 。自分の娘なら 、血迷うなと言いたい 。恋愛が成就するのは 、
      ホルモンか勘違いのせいだ 、と 今ならわかる 。






   

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする