今日の「 お気に入り 」は 、伊集院静( 1950年〈 昭和25年 〉2月9日 - )さん
の随筆から スクラップ 。備忘のため 。
「 人類の最初の旅を十二 、三歳で想った日があっ
た 。ネアンデルタール人なるものを教えられた時
である 。どうやら私たちの種の誕生はアフリカの
高原にあるらしいと言われた 。
『 先生 、それがどうして世界中に分布をしたので
すか? 』
アホな生徒の私は訊いた 。
『 分布か? それはちょっと違うな 。私たちは風に
よって運ばれる種を持たないし 、流浪によって辿
り着く木の実ではないからね 』
おう 、それはそうだ 。私は目をかがやかせて教師
の次の言葉を待った 。
『 人類は山を越えれば何かしあわせの土地があると
思ったんじゃないのかね 。目の前の海に漕ぎ出せ
ば新天地があると夢見たんじゃないだろうか 。も
っともその考えに至るには疎外や 、迫害や 、差
別を受けた或る一族の実態があるかもしれないが
ね ・・・・ 』
『 それでも山を越えたんですね 。それでも大海原
へ小舟で漕ぎ出したんですね 』
『 そう考えたいね 、私は ・・・・ 』
少年の私は 、人類の 、人間の旅へむかう志しに
ひどく感動してしまった 。」
作家が教わった中学校の先生は 、やはり只者ではないように思われる 。
もって生まれた資質もあるが 、 十代に 、こういう師と何人出逢えるか
によって 、そのひとの人生は 、随分と違ったものになるのかも知れない 。
近人に得られなければ 、古人を師とし 、友とするしかないような ・・・・ 。
「 旅の時間でどんな時が一番好きですか? と尋ねられる
と 、私はいつもこう答える 。
『 乗り物に乗って ”流れる風景 ”を見つめている時
です 。その時間が私に安堵を与えてくれます 』
そんなことを感じるのは 、私一人だけだろうか 。」
ひとりの人間には 、少なくとも 、六人のご先祖さまがいる ( ^ω^)・・・ 。
生きてる間に出逢えるご先祖さまは多くても六人ぐらいか
・・・ 私の場合は 、祖母と父母 、三人のみ 。