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今日の「 お気に入り 」は 、山本夏彦さん ( 1915-2002 ) のコラム集から 。
「 わが国は ほとんどゼネコンの支配下にある とかねがね私は思っている 。
世間はそんなこと思ってない 。ゼネコン自身も思ってない 。近く気が
ついて思うだろう 。
ゼネコンというのは戦前の土建屋 、請負師 のことである 。それが日本
を支配しているなんて 誰も思わないのはもっともである 。昭和三十年代
まで住宅の過半は木造で 、大工が建てていた 。ゼネコンがそれをビルに
した 。日本中に高速道路をはりめぐらし 、ダムを 飛行場をつくった 。
港湾を埋立てた 。高度成長と共に これらをやってのけたのが ゼネラル・
コントラクター いわゆる ゼネコン なのである 。その下に サブコン があ
る 。
いま 家は建てるものではなく 買うものになった 。近く 日本中の住宅は
ハウスメーカー の建てた ハウス ばかりになるだろう 。デコレーション
ケーキみたいな家はいやだと言っても 、許されなくなるだろう 。ハウス
メーカー一社年間の売上げは ゼネコン一社の売上げに迫りつつある 。
清水建設 、鹿島建設 、大成建設 、竹中工務店 、大林組 が ゼネコンの
大手五社 で 、ほかに 準大手 、中堅 六十社以上があるが 、くだくだしい
からあげない 。ゼネコン とまではいかないが 山梨には山梨の土建屋があ
ることは 、今回の 金丸騒動 で知れわたった 。
金丸元副総理 は 山梨県出身 だという 。県の土建屋は仕事がほしいから
つね日ごろ 政治献金 している 。盆暮に五十万百万 、別に新しい大工事
の発注をリークしてもらえば 応分の リベート を出す 。県の土建屋の手
に余る仕事なら 中央のゼネコンが請負う 。飛島建設 、西松建設 その他
大手ゼネコンの名が出たゆえんである 。
リベート は 利益を越えないのが鉄則 である 。いくら 巨額でも 政治資金
として 届けてあればいいのである 。ウラ にするには するだけのわけ が
ある 。細分化しなければならないからである 。
わが国の政治献金の半分以上はゼネコンから出ている というが 六割だか
七割だか そこまでは知らない 。新聞は いまキャンペーンのまっ最中 だか
らついでに勘定してくれれば有難い 。」
「 都市計画をするのは官僚で 、それを政治家に漏らしてもらって初めて ゼネ
コンの仕事になる 。チェックする機関はない 。
ただ ゼネコンは大きくなりすぎた 。受注産業の域を脱した と 自分でも思い
だした 。域を脱すればどうなるか 。その気になれば 国政まで動かすことが
できるだろう 。」
「 都市計画 というものは 後藤新平 以外にしたものがあると聞かない 。いま
官僚がしているのは 街計画 で 、その情報を得て始めてゼネコンの仕事に
なる 。役人はそのプロジェクトを有名建築家数人を指名して競技設計させ 、
一等当選した案をゼネコンに施工させる 。
したがって 設計の責任は 建築家にあって ゼネコンにない 。ただ 建築家に
一々厳重にチェックされたら 、ゼネコンの利は薄くなる 。監理は ゆるやか
なほうがいいから 、ゼネコン は 前もって 有名建築家 と仲よしになる 。
建築家だって 盆暮の莫大な贈物には弱い 。まして 大プロジェクトの リベ
ートには弱い 。両者が 深い仲になれば 建築家のある者は ゼネコンのお抱え
に 似たものになる 。ゼネコンにとっては 建築家に贈るリベートなんて 政治
家に贈るそれと比べれば 物の数ではない 。
建築界のジャーナリズムは 一流建築家の手下で 、一流建築家はゼネコンの
友である 。故に ゼネコンを批評するものはない 。及ばずながら 私が試みる
ゆえんである 。」
( 山本夏彦 著「 オーイどこ行くの 」- 夏彦の写真コラム - 新潮文庫 所収 )
今夏 、「 官製談合 」の ごくごく一部にメスが入り 、発注者である 道路公団
の複数の現役高官に 縄付き が出ました 。道路公団発注の工事を請負う橋梁メ
ーカーにも昔から繰り返し「 談合 」を行っていた容疑で逮捕者が出ています 。
談合につきものの政治家の関与も噂されています 。政財官の関係者皆々が
「 今更どうして 」「 なぜ今なのか 」という反応です 。日本全国の高速道路
のうち「 橋梁 」発注の占める部分がどれくらいのものであるか知りませんが 、
「 官製談合 」が「 橋梁 」発注について なが年行われてきたのが事実なら 、
「 橋梁 」以外の高速道路建設にも 当然「 官製談合 」が なが年行われてきた
のだろうな 、とは 子どもでも察しられることです 。公団で行われていること
が 、他の役所で行われていないはずもなく 、「 必要悪 」と我も思い 、人にも
思わせ 、テレビカメラを前に 公然と口にする官僚出身の国会議員がいるくらい
日本国中に蔓延し 、常態化した「 談合 」が俄かになくなるはずもありません 。
改まらないには改まらないだけのわけがあるのです 。「 天下り 」も「 政治献
金 」も同根です 。
山本夏彦さんは 、「 一罰百戒のつもりなのか 」と題したコラムの中で 、次の
ようにも書いておられます 。
「 日本の政治献金の六割だか七割だかはゼネコンが出していると聞いた 。まさか
と思うがそうらしい 。ゼネコンの下にサブコンがある 。日本のゼネコンが一流
なのは サブコンが一流だからだ ということは容易に察しられる 。
下請 というとイメージがまるで違うから 、今は サブコン という 。サブコン の
筆頭者は 一流会社 である 。けれども その名を世間は知らない 。新聞が書かな
ければ存在しない 。ゼネコン が 基礎は サブコン A社に 躯体はB社に 設備はC社
に 請負わせて ゼネコ ンがその総指揮をとるのは 、昔の 請負の伝統 である 。
戦前の旦那は 大工 、左官 、建具の一々に発注して 一々に支払いはしない 。
棟梁にまとめて 払う 。サブコン は単能だから 一社でまるごとは建てられない 。
いくら ゼネコン でも献金の全部は出せない 。サブコン に割当てて出させる 。
サブコン はさらにその下請に割当てる 。
それらの合計が ゼネコンの献金 である 。ゼネコンが 万一『 お縄 』になっても
サブコン以下は 直接献金したのではないから その名は出ない 。ゼネコンもまた
出さない 。
いま パーティ券の相場は三万円だそうだ 。一枚三万円で買ってもらって 五千円
の料理しか出さなければ二万五千円が献金になる 。百枚買って 受付でサインだけ
して 入場しなければ 三百万円まるごと懐ろにはいる 。」
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