今日の「お気に入り」は、山本夏彦さん(1915-2002)のコラム集から。
「ある晩、私は泣いてみた。もうなん十年も泣かないから、泣き方を忘れていはしまいかと、はじめ私は危ぶんで、ひとり声をしのんで泣いてみた。やがて思い出して、高く低く、次第に真に迫って泣いた。」
(山本夏彦著「毒言独語」所収)
「私は夜誰もいないはずのわが家に、思い切って電話をかけてみることがある。まっくらな茶の間で、それはながくむなしく高鳴っている。誰か電話口に出やしまいかと息づまるような一瞬である。そして誰も出ないのに安堵してのろのろと帰るのである。」
(山本夏彦著「不意のことば」所収)
「ある晩、私は泣いてみた。もうなん十年も泣かないから、泣き方を忘れていはしまいかと、はじめ私は危ぶんで、ひとり声をしのんで泣いてみた。やがて思い出して、高く低く、次第に真に迫って泣いた。」
(山本夏彦著「毒言独語」所収)
「私は夜誰もいないはずのわが家に、思い切って電話をかけてみることがある。まっくらな茶の間で、それはながくむなしく高鳴っている。誰か電話口に出やしまいかと息づまるような一瞬である。そして誰も出ないのに安堵してのろのろと帰るのである。」
(山本夏彦著「不意のことば」所収)