あるキング
2011-05-09 | 本
伊坂幸太郎『あるキング』。
多分に著者のチャレンジ的要素が含まれる作品だと思う。
著者自身も巻末で今までの作風との違いを述べているくらいだし。
ストーリー的には野球に対して圧倒的な努力と天賦の才能を兼ね備えた主人公が、成長する過程での苦悩と葛藤を描いています。
球界の「王」となるべく生まれ生きていく様や、周囲の環境・三人の魔女・バーナムの森などはシェークスピアの「マクベス」をモチーフとしているが、主人公自身のキャラクタ設定はマクベスとは異なる。
また主人公の王球が過去の名選手の生まれ変わりとして扱われ、また彼自身が次の世代へと移っていく様はこれまでも伊坂作品で扱われる輪廻転生思想が交じり合っている。
著者としてはかなり前衛的な作品であり、完成度としてはそれほど高くは無いと思うが、ある意味で実験的に作られた作品とも思われる。
伊坂幸太郎という作家を追っていく中では読むべき一冊。
単に「この本おもしろいのかな」とか「野球小説をよみたい」などと思っている人は避けたほうが良い一冊。
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