月と蟹
遂にたどり着きました。
道尾秀介の『月と蟹』
月と蟹 (文春文庫) | |
道尾 秀介 | |
文藝春秋 |
道尾秀介渾身の一作であり、第百四十四回直木賞の受賞作。
道尾氏の作品はこれまでも結構読んでいて、個人的に感じるところがあるのですが、それは人がどのように生きて行くのかを追い求めているところなのかなと言うところです。
この作品でも小学生の少年少女たちが、彼らの短い人生の中で、身の回りに起こるどうして良いのか分からない、モヤモヤとした感情の持って行き場所を探すのが主題になっています。
全体を通して、主人公達のちょっとした絶望感は、大人からすればそれは時間なり、自分の成長における変化なりで捉え方も変わってくるのだろうけど、子供の世界は大人のそれよりも身動きが取れる範囲に限度がある。
その子供から大人へと成長していくなかでのもがき・苦しみ、それが道尾作品には満ちている。
特に本作はトリックミステリーとは違い、その子供たちの心の変化を見事に表現している作品だと思います。
思えば『向日葵の咲かない夏』『龍神の雨』『シャドウ』など少年少女を主人公に置いた作品も多く、その主人公達がとても淡くて脆い。
そんな危険で複雑な心情を、もしかすると自分が幼少期に思っていていて、当時の語彙力では整理できなかったものを、今大人になって解決しようとしているかも知れない。
そんな思いを持って愛でるように拝読しました。
直木賞受賞作品。
侮れないです。
ちなみに直木賞受賞作で読んだことがあるのは
つかこうへい『蒲田行進曲』
蒲田行進曲 (角川文庫 緑 422-7) | |
つか こうへい | |
KADOKAWA |
高村薫『マークスの山』
マークスの山 (ハヤカワ・ミステリワールド) | |
高村 薫 | |
早川書房 |
重松清『ビタミンF』
ビタミンF (新潮文庫) | |
重松 清 | |
新潮社 |
の3冊でした。
まだまだ読まないといけない本がありそうです。
さて、明日からは時短勤務ながら出社することになりました。
また病気が再発して、出社できなくなることもあるのかも知れませんが、当座足元を見てプラプラと出社することにします。