壽初春大歌舞伎 通し狂言 仮名手本忠臣蔵 昼の部から
四段目 扇ヶ谷判官切腹の場(おうぎがやつはんがんせっぷくのば)
同 城明渡しの場(しろあけわたしのば)
五段目 山崎街道鉄砲渡しの場(やまざきかいどうてっぽうわたしのば)
同 二つ玉の場(ふたつだまのば)
六段目 与市兵衛住家勘平腹切の場(よいちべえすみかかんぺいはらきりのば
【大序・三段目】を記録してから月も変わり、ずいぶんと日がたつ。
せめて昼の部だけでも簡単に記録しておこう。
四段目 扇ヶ谷判官切腹の場(おうぎがやつはんがんせっぷくのば)
同 城明渡しの場(しろあけわたしのば)
扇ヶ谷判官切腹の場(おうぎがやつはんがんせっぷくのば)でははらはらした。
遅い!何をも保たしているんだ。大星由良之助が遅い。
会場全体が緊張感に満ちた中、塩冶判官はあきらめ厳かに切腹が行われたーーーと思った所にやっと現れる大星由良之助。
藤十郎丈と扇雀丈との息の良さ。
扇雀丈は感情移入され迫真の演技を披露して下さった。
ここでもうひとつ好きだったのは我當丈演じる石堂右馬之丞の優しさと薪車丈演じるにくにくしげな薬師寺次郎左衛門との対比はこの芝居に華を添えた。
そして四段目 城明渡しの場(しろあけわたしのば)ではお名残惜しく方を落として皆は去っていった。
五段目 山崎街道鉄砲渡しの場(やまざきかいどうてっぽうわたしのば)
同 二つ玉の場(ふたつだまのば)
だいたいここの場面は五段目と六段目をまとめて演じられることが多い。
今回みた五段目は表現が違っていたので嬉しかった。
山崎街道鉄砲渡しの場(やまざきかいどうてっぽうわたしのば)では斧定九郎は
「ごじゅぅううりょぉう!!」
では無く、原郷右衛門との出会い頭に会話を交わし、対面で殺してから軽めに
「五十両~。」
本来わたしは斧定九郎の手ががばっと藁の小屋?から手が伸び、つかんだ財布の三度ばかりちょんちょんちょんとはずませて
「ごじゅぅううりょぉう!!」
という場面が好きで、その場面に近づくと、今回もそれを期待していた。
だが、違った演じ方を見られ、それはそれで特をした気分。
二つ玉の場(ふたつだまのば)でも同様にことが言える。
勘平が猪だと思い撃ったのは人間(斧定九郎)であった。
わたしが何度となくみた二つ玉の場は死んだ猪を確かめる間での細やかな仕草。人間と知ってからの縄との格闘など趣向が凝らされていた。
この部分は結構好きだったが、今回みたのはあっさりとしていた。
今回のような表現もまたいい物だと感じた。
六段目 与市兵衛住家勘平腹切の場(よいちべえすみかかんぺいはらきりのば)
六段目 与市兵衛住家勘平腹切の場(よいちべえすみかかんぺいはらきりのば)では千崎弥五郎に殺された義父の遺体置き場は上手の部屋だった。今回頭は客席方向。
遺体置き場と遺体の向きは毎回興行によって変わることが多いので、決まりはないのかもしれない。
ここで付け加えたいのがおかる役の秀太郎丈のかわいらしさと美しさ。
そして竹三郎丈の素晴らしい母おかや。涙が潤む。
ここでも母と勘平とのやり取りに複雑さは見られず、来客が来ると義母はついたての裏にすんなりと引っ込む。
勘平に迫る母。後悔と忠義の勘平。
勘平は裏を向き切腹。一足違いの
「勘平、はやまったかぁ。」
ここで毎回、
『どうしてもう少し早くわからなかったのか。』
とジレンマに陥るわたし。
だが、本当の勘平の悲劇は
『どうしてもう少し早くわからなかったのか。』
ではなく、切腹に同情し、勘平が義母の敵だけではなく敵の一人を討った観客の人々に浸透していないことだと以前読んだ『忠臣蔵とは何だろうか』 武士の政治学を読むに書かれていたことを思い出す。
「色にふけったばっかりに」
の決め台詞を言いながら左頬(上手方向)に血糊をつける勘平。
今回はこの台詞も見物と書かれていましたので、しっかり楽しんできました。
早野勘平は血判。夢を果たし、ここでこの世を去った。
大阪松竹座
壽初春大歌舞伎
通し狂言 仮名手本忠臣蔵
平成22年1月2日(土)~26日(火)
昼の部
大 序 鎌倉鶴ヶ岡兜改めの場(かまくらつるがおかかぶとあらためのば)
三段目 足利館門前進物の場(あしかがやかたもんぜんしんもつのば)
同 殿中松の間刃傷の場(でんちゅうまつのまにんじょうのば)
四段目 扇ヶ谷判官切腹の場(おうぎがやつはんがんせっぷくのば)
同 城明渡しの場(しろあけわたしのば)
五段目 山崎街道鉄砲渡しの場(やまざきかいどうてっぽうわたしのば)
同 二つ玉の場(ふたつだまのば)
六段目 与市兵衛住家勘平腹切の場(よいちべえすみかかんぺいはらきりのば)
【大序・三段目】
高師直 藤十郎
塩冶判官 扇 雀
顔世御前 孝太郎
足利直義 進之介
桃井若狭之助 翫 雀
【四段目】
大星由良之助 藤十郎
塩冶判官 扇 雀
顔世御前 孝太郎
大星力弥 壱太郎
薬師寺次郎左衛門 薪 車
原郷右衛門 段四郎
石堂右馬之丞 我 當
【五段目・六段目】
早野勘平 藤十郎
原郷右衛門 段四郎
一文字屋お才 孝太郎
千崎弥五郎 薪 車
母おかや 竹三郎
斧定九郎 翫 雀
女房おかる 秀太郎
夜の部
七段目 祇園一力茶屋の場(ぎおんいちりきぢゃやのば)
八段目 道行旅路の嫁入(みちゆきたびじのよめいり)
十段目 天川屋義平内の場(あまかわやぎへいうちのば)
十一段目 師直館表門討入の場(もろなおやかたおもてもんうちいりのば)
同 広間の場(ひろまのば)
同 柴部屋本懐焼香の場(しばべやほんかいしょうこうのば)
【七段目】
大星由良之助 藤十郎
寺岡平右衛門 翫 雀
大星力弥 壱太郎
遊女おかる 秀太郎
【八段目】
戸無瀬 藤十郎
小浪 扇 雀
奴可内 翫 雀
【十段目】
天川屋義平 我 當
女房おその 吉 弥
大星由良之助 藤十郎
【十一段目】
大星由良之助 藤十郎
寺岡平右衛門 翫 雀
大星力弥 壱太郎
原郷右衛門 段四郎
わたしは歌舞伎を楽しむのは好きですが、難しいことは存じません。
間違いやお気づきの点がございましたら、お教えいただければ幸いです。
最後までお読み下さいまして、ありがとうございました。
後日夜の部の記録を予定しております。