2010年度 30本目
映画『女の中にいる他人』
★★★★★ ★★★☆☆
東宝 1966年 104分 モノクロ
監督 成瀬巳喜男 成瀬巳喜男劇場 ファイナル~キネマ旬報ベスト・テン入り作品 一挙放送~
原作 エドワード・アタイヤ「細い線」(推理小説)
脚本 井手俊郎
出演 小林桂樹 新珠三千代 三橋達也 草笛光子
日本映画専門チャンネルの説明にある【フィルムノワール調の心理サスペンス】といった言葉がまさにぴったりとする。
ふとした犯罪からそれを取り巻く人々の心理の揺れ動きを見事に描いた秀作。
小林桂樹さんの悩み込んだ顔。
新珠三千代さんのへ微温なの酔うな恐ろしい表情。
三橋達也さんの複雑な仕草と面(おもて)。
小林桂樹さんが、新珠三千代さんが、三橋達也さんがーーーすごい。
犯罪を犯す前後の心情を目一杯のコントラストと鉛的な絵図等で表現。
それにより、人間の心の中味までえぐり出す。
もし心に形があるならば、きっとその袋を裏返し、中側のみにくい突起物まであらわにした感覚を覚える。
モノクロ映画がその効果をいっそう引き立たせる。
成瀬巳喜男監督は文学作品も推理小説も描き方が素晴らしいと感じた。
日本映画専門チャンネル ▼
エドワード・アタイヤの推理小説「細い線」を原作に、成瀬監督がはじめて取り組んだフィルムノワール調の心理サスペンス。平凡なサラリーマン田代(小林)は親友・杉本(三橋)の妻を情事の最中に誤って殺害。誰にも疑われなかったにもかかわらず、良心の呵責からノイローゼになってしまう。重圧から逃れるため、自らの犯罪を周囲に告白する田代だったが、妻・雅子(新珠)は意外な態度に出る。スタンダードサイズの映像が緊張感を生み出している。
(C)東宝 ~1935年 キネマ旬報ベスト・テン第1位。従来の家族体系にしばられず、賢明さを持ち近代的に生きる女性を主演の千葉早智子が魅力的に演じている。彼女のモダンな洋装にも注目。~
妻よ薔薇のやうに 1935 モノクロ
監督: (演出)成瀬巳喜男
原作: 中野實「二人妻」
脚本: (脚色)成瀬巳喜男
出演者: 千葉早智子/英百合子/伊藤智子/丸山定夫
(C)東宝 ~「妻よ薔薇のやうに」と同年1935年のキネマ旬報ベスト・テン第8位。古風で伝統を重んじる姉と、反抗的に現代に影響を受ける妹の対照が印象的な作品。~
再放送 噂の娘 1935 モノクロ
監督: (作・演出)成瀬巳喜男
出演者: 千葉早智子/梅園龍子/伊藤智子/汐見洋
(C)東宝 ~1947年 キネマ旬報ベスト・テン第8位。成瀬が担当した第二話「別れも愉し」は当初、阿部豊が監督する予定であったが、阿部が新東宝に移ったため、成瀬が担当することになった。~
四つの恋の物語 1947 モノクロ
監督: (演出)豊田四郎(第一話)/成瀬巳喜男(第二話)/山本嘉次郎(第三話)/衣笠貞之助(第四話)
脚本: 黒澤明(第一話)/小国英雄(第二話)/山崎謙太(第三話)/八住利夫(第四話)
出演者: 池部良(第一話)/木暮実千代(第二話)/榎本健一(第三話)/浜田百合子(第四話)
(C)東宝 ~1951年 キネマ旬報ベスト・テン第2位。原作「めし」は原作者・林芙美子が急逝したため未完。林芙美子と親交の深かった田中澄江と井手俊郎が脚色した名作。~
めし 1951 モノクロ
監督: 成瀬巳喜男
原作: 林芙美子
脚本: (脚色)井手俊郎/田中澄江
出演者: 上原謙/原節子/島崎雪子/杉村春子
(C)東宝 ~1952年 キネマ旬報ベスト・テン第7位。当時、流行した「母もの」とは一線を画す、普遍的な味わいを持つ上質な感動作。~
おかあさん 1952 モノクロ
監督: 成瀬巳喜男
脚本: 水木洋子
出演者: 田中絹代/香川京子/三島雅夫/加東大介
(C)角川映画 ~1952年 キネマ旬報ベスト・テン第2位。成瀬が得意とする当時の何気ない日常生活の描写が光る一作。~
稲妻 1952 モノクロ
監督: 成瀬巳喜男
原作: 林芙美子
脚本: 田中澄江
出演者: 高峰秀子/三浦光子/村田知英子/根上淳
(C)角川映画 ~1953年 キネマ旬報 ベスト・テン 第5位。紳士的な役どころが多い森雅之が、田舎者の乱暴な兄役を演じる。~
あにいもうと 1953 モノクロ
監督: 成瀬巳喜男
原作: 室生犀星
脚本: 水木洋子
出演者: 京マチ子/森雅之/久我美子/堀雄二
(C)東宝 ~1954年 キネマ旬報 ベスト・テン第6位。「乙女ごころ三姉妹」「舞姫」に続いて三度目の川端康成の原作小説に挑んだ。成瀬には珍しく、中流階級を舞台にした一作。~
山の音 1954 モノクロ
監督: 成瀬巳喜男
原作: 川端康成
脚本: 水木洋子
出演者: 原節子/山村聰/上原謙/杉葉子
(C)東宝 ~1954年 キネマ旬報 ベスト・テン第7位。東京下町の生活を描いた、成瀬らしい生活描写が印象的な作品。~
晩菊 1954 モノクロ
監督: 成瀬巳喜男
原作: 林芙美子
脚本: (脚色)田中澄江・井手俊郎
出演者: 杉村春子/沢村貞子/細川ちか子/望月優子
(C)東宝 ~1955年 キネマ旬報 ベスト・テン第1位。「人間を男と女の問題として」取り上げた成瀬美学の頂点に立つ傑作であり日本映画史においても重要な作品。「『めし』あたりからやってきたことのいわば集大成をここでやってみたかった」と成瀬自身も語り、見事大成功をおさめた。~
浮雲 1955 モノクロ
監督: 成瀬巳喜男
原作: 林芙美子
脚本: 水木洋子
出演者: 高峰秀子/森雅之/岡田茉莉子/中北千枝子
(C)東宝 ~1956年 キネマ旬報 ベスト・テン 第8位。当時のスター女優山田五十鈴・田中絹代・高峰秀子・杉村春子・岡田茉莉子に加えて、1938年を最後に引退した往年の大スター栗島すみ子が特別出演している。~
再放送 流れる 1956 モノクロ
監督: 成瀬巳喜男
原作: 幸田文
脚本: (脚色)田中澄江・井手俊郎
出演者: 田中絹代/山田五十鈴/高峰秀子/杉村春子
(C)東宝 ~1966年 キネマ旬報 ベスト・テン 第10位。従来の成瀬作品とはかけ離れたジャンルであるサスペンスに取り組んだ異色作。その中でも彼が得意とする「夫婦もの」の延長として、夫婦の葛藤を見事に表現した。~
女の中にいる他人 1966 モノクロ
監督: 成瀬巳喜男
原作: エドワード・アタイヤ「細い線」
脚本: 井手俊郎
出演者: 小林桂樹/新珠三千代/三橋達也/草笛光子
(C)東宝 ~1967年 キネマ旬報 ベスト・テン第4位。心の中をかき乱され、過去に縛られてしまう恋人達を感情豊かに描いた作品。この作品が遺作となった成瀬だが、この作品の撮影の後「最後にもう一本だけ自分のやりたいものをやって死にたい。」と語り、87本の作品歴に決して満足しなかった。~
乱れ雲 1967 カラー
監督: 成瀬巳喜男
脚本: 山田信夫
出演者: 加山雄三/司葉子/草笛光子/森光子