2015/03/31
「新羅から天之日矛が妻を追いやって来ました出石の地へと()」
「印象とずいぶん違う話なり天之日矛はゲス野郎かな()」
「この話ずいぶん混乱あるようで整理をすれば次のようなり
(1:女がストーカーされた
/2:昼寝していて妊娠
/3:赤い珠を出産
/4:ストーカーが珠をもらう
/5:天之日矛が横取り
/6:珠がきれいな女に変身
/7:結婚するがDVする
/8:女は故郷日本に逃げる
/9:天之日矛が追ってくる
/)」
「
詳細はいろいろあるが面倒でまとめて以下にあげてみる
(昔、新羅の国王の子が居て、名を天之日矛といった。この人は海を渡って日本に来た。渡来したわけは次のようである。つまり、新羅国に一つの沼があって、その名を阿具奴摩という。この沼のほとりに一人の卑しい女が昼寝をしていた。すると日の光が虹のようにその女の陰部の辺りをさした。又一人の卑しい男が居て、その様子を不思議に思って、その後いつもその女の行動をひそかに観察していた。するとこの女は昼寝をしたときから妊娠になって、赤い玉を生んだ。そこで様子をうかがっていた卑しい男はその玉を女に所望して手にいれ、いつも包んで腰につけて居た。
この男は田を谷間につくっていた。それで農夫たちの飲食物を一頭の牛の背に乗せて谷のなかに入って行ったところ、かの国王の子の天之日矛に出合った。そして天之日矛がその男に尋ねた『何だっておまえは飲食物を牛に背負わせて谷に入るのだ。おまえはきっとこの内を殺して食うつもりなのだろう』といって、すぐにもその男を捕えて牢屋に入れようとした。その男は答えて、『わたしは牛を殺そうとするのではなく、ただ、農夫の食物を運ぶだけです』といった。けれど、天之日矛はなおもゆるさないかったので、腰に付けた玉をほどいてその国王の子から逃れるために送った。これを受け取った天之日矛は、その卑しい男を許し、その玉を持ち帰って床の上に置いたところ、玉は美しい乙女に姿を変えた。それで天之日矛はその乙女と結婚して正妻とした。それ以来その乙女はいつも様々な山海の珍味を用意して、その夫に食べさせた。ところが、その国王の子が高慢になって妻をののしるので、その女は『大体わたしはあなたの妻になるような女ではありません。わたしは祖先の国に行
きます』といってすぐにこっそりと小船にのって逃げ渡ってきて、難波にとどまった。これは、難波の比売碁曾の社に鎮座する阿加流比売という神である。
一方天之日矛はその妻が逃げたことを聞き、早速そのあとを追って渡ってきて、難波に行こうとしたが、その海峡の神は行く手を遮って入れなかった。そのため、さらに迂回して但馬国に停泊した。
)」
「ゲス野郎天之日矛は他の女妻にしたりて子孫を残す
(0:そのままその国にとどまって、多遅摩之俣尾の娘で名を前津見という人と結婚して生まれた子が多遅摩母呂須玖である。
/1:そしてその子は多遅摩斐泥であり、
/2:またその子は多遅摩比那良岐である。
/2-1:さらにその子は、多遅摩毛理、
/2-2:次に多遅摩比多訶、
/2-3:次に清日子である。
/)」
「たどったら天之日矛が祖先なり神功皇后新羅にルーツ
(0:この清日子が当摩之雍メ斐と結婚して生んだ子は、
/1:酢鹿之諸男、
/2:次に妹の菅竈由良度美である。
/3-0:それから先に述べた多遅摩比多訶がその姪の由良度美と結婚して生んだ子は
/3-1:葛城之高額比売命
=この人は息長帯比売命つまり神功皇后の母君である。
)」
「新羅より持ちくる宝は八種にて珠・領巾・鏡出石神社に
(0:さて、その天之日矛が持って渡来したものは、玉津宝といって、
/1:珠が二連、
/2:また、浪振領巾・浪切領巾・風振領巾・風切領巾、
/3:また奥津鏡・辺津鏡、
/4:併せて八種である。これは、伊豆志神社に祭る八座の大神である
)」
2015/03/31
「応神は宇遅能郎子に天下治めさせたき思いのありし
(1:兄大雀命は天皇の言うとおりにした
/2:兄大山守命は天皇の言うことに背き天下を治めようとした
/3:弟宇遅和紀郎子を殺そうという気持ちをもっていて、ひそかに蜂起しようとしていた。
/4:大雀命は大山守命が蜂起しようとしていることを聞いて、宇遅和紀郎子に使いを出してそのことを知らせた。
/)」
「驚いた宇遅能郎子は迎え撃つ準備をしたり大山守を
(1:兵を宇治川のところに待機させた
/2:山の上には絹布の幕を貼り天幕を立てて陣地に見せかけた
/3:敵をだますために舎人を王とみなして目立つように呉床に胡坐で座らせた
/4:その呉床の前を官人が敬意を払いつつ行き来させる有様を演出した
/5:大山守命が川を渡るときに備えて船や櫓櫂を用意して飾り
/6:佐那葛の根を剥いで汁のぬめりを取って、それを船の中の笥の子に塗って踏めば滑って倒れるようにしかけて
/7:そして宇遅能和気郎子は布の上着と袴をつけて、すっかり卑しいものの姿に変装して楫をとって船の上にお立ちになった。
/)」
「なかなかに宇遅能和気郎子策弄し完膚なきまで兄を滅ぼす
(1:一方、その兄の大山守命は兵士を隠し潜ませておき、着物の下に鎧を着けて、宇治川のほとりにたどり着いて船に乗ろうとした
/2:山の上を望み見て、弟の宇遅和紀郎子は山の上の陣地に居るものと思い込んでいた
/3:実際は、楫を手にして船の上に立っているとは少しも気づかずにいた
/4:その船頭に尋ねて『この山に怒り狂った大きな猪が居ると噂に聞いている。わたしはその猪を打ち取りたいと思う。どうだろう、その猪を仕留めることができるだろうか。』といった。
/5:これを聞いた船頭は、『できますまい』とこたえたのに対し、また、大山守命が『どうしてか』と尋ねた
/6:船頭は答えて、『なんどもあちこちで打ち取ろうとしましたが、とうとうできませんでした。だから出来ますまいと申すのです』といった。
/7:そして河を渡って中ほどまで来たときに、船頭、実は宇遅能和紀郎子は、船をかたむけて大山守命を水中に陥れてしまわれた。
/8:するとまもなく兄の皇子は水面に浮かび出て、水の流れるままに流れ下った。流れながら、大山守命は次のようにと歌われた。
)」
「ちはやぶる宇治の渡りに棹取りにはやけむ人しわが伴に来む
(歌謡番号#51)」
「『訶和羅』なる擬音語ありし今ならたぶんカチャリという音なるか
(1:この時、河のほとりにひそみ隠れていた兵士があちこちから同時に姿を現して
/2:矢を弓につがえて流れる大山守命射て追い流した。
/3:そして、訶和羅というところのあたりにまで流れ着いて水中に沈んでしまった。
/4:そこで鉤で大山守命の沈んだところを探ると、その着物の下につけた鎧に引っ掛かって『かわら』と音がした。
/5:だから、その地を名付けて『訶和羅の前』というのである。
/6:その遺骸を鉤でひっかけてあげたとき、弟皇子の宇遅能和紀郎子は、次のように歌った。
)」
「
ちはや人 宇治の渡りに
渡り瀬に立てる 梓弓 檀弓
いきらむと 心は思えど
いとらんと 心は思えど
本方は 君を思いで
末方は 妹を思いで
苛なけく そこに思いで
かなしけく ここに思いで
いきらずそ来る 梓弓 檀弓
(歌謡番号#52)」
「葬らる大山守は奈良山に彼を祖にするその子らは
(1:こうしてその大山守命の遺骸は奈良山に葬った
/2:この大山守命は、土形君、幣岐君、榛原君等の祖先である
)」
「天皇位継承するに兄弟の相克ありき血で血を洗う
(1:大雀命と宇遅能和紀郎子とのお二人が互いに皇位をお譲りあっている間にずいぶん日がたった
/2:海人が天皇のご食料になる鮮魚を献上した。
/3:ところが兄の大雀命はこれを辞退して弟の宇遅能和紀郎子の方に献上させ、弟はまたこれを辞退して兄の方に献上させて、互いにおゆずりになっているので、そのあいだ、すっかり多くの日数が立ってしまった。
/4:こうして互いに譲り合われることが一度や二度ではなかったので、海人はすっかりその往来に疲れて泣いてしまった。
/5:これにちなんで、献上品が腐ることから、ことわざに『海人なれや己がものから泣く』という
/6:こうしている間に、宇遅能和紀郎子は早くお亡くなりになってしまった。
/6:そこで大雀命が天下をお治めになった
/)」