がじゅまるの樹の下で。

*琉球歴女による、琉球の歴史文化を楽しむブログ*

当サイトの掲載写真・イラスト等の無断転載/無断使用を禁じます

キラキラ化に、何の意味があるのか

2018年07月01日 | ・琉球/沖縄、徒然日記

琉球歴女の琉球戦国キャラクター図鑑
(イラスト・文/和々・澪之助 ボーダーインク発行)

ボーダーインクのページ→ 
Amazon→ 

 

 

『琉球歴女の琉球戦国キャラクター図鑑』
お買い上げいただいた皆様、
感想などをツイートしてくださった皆様、
メッセージやコメントを下さった皆様、
どうもありがとうございます!

 

 

さて、この本は
『琉球史を楽しむ』
というコンセプトの元作られた本です。

この本で(歴史学として教科書的に)
琉球についての見識を深めようとか
この本で当時の琉球ついて詳しく勉強しようとか、
つまり「学習」が主な目的の本では、ありません。

だって、ピンクの髪色の百十踏揚や
パンクロックな鋲のついた革のコートを着ている賢雄のイラストを見て
なるほど、当時の琉球人はこんな格好をしていたのか!
と思う人は、さすがにいないでしょう(笑)

なので、
琉球史を題材にしたエンタメ本、
ということなのです。

 

このブログでキラキラ化シリーズを始めた時にも
書いていますが、
時代考証的に、年齢相応に、当時の風俗を踏まえて、とか
そういうのは一切放り投げて、
琉球史の人物をゲームやアニメのキャラクターのように
キラキラのイケメン化してみたら…!?

というのスタンスになっています。

 

 

でも、キャラクター設定やビジュアルデザインは、
歴史的な背景やモチーフ、史実、エピソードや伝承を元にアレンジしているので、
琉球史に詳しい人は詳しい人で、違った見方でも楽しめるようになっています。

また、関連する歴史的な話やエピソードやなども一緒に紹介したり、
(琉球史に基づいた)相関図や人物年表なども入れています。
なので、琉球史をまったく無視している、琉球史について1ミリも学べない、
というわけではありません。

エンタメから琉球史に興味を持つきっかけになる本、となれれば。

 

 

じゃあ、その意義はなんぞや。

キラキラ化することに何の意味があるのか。

 

 

流行ってるから、
というのももちろんあります。
琉球史ではまだそういう系のはまだ少なかったしね。

(本土の歴史ゲームの中のいち単体キャラとして、や
琉球モチーフのオリジナルキャラ、世界遺産の擬人化キャラなど
色々と出てき始めていたけど
琉球史の人物たちを琉球史を踏まえた上で体系的に描いたものはまだなかった。)

また、それは
これまでとは違った層に琉球史をアピールできる
ということでもありますし。 

 

ところで、
本来、ワタシはどちらかと言うと
このような現代美少年化した歴史キャラには
ちょっと抵抗がある派、でした。

首里城のアニメ調の里之子キャラを最初に見た時は
髭無しは許せても髪型は許せませんなぁ(# ゚Д゚)
なんてツッコんでます。

でも、次第に、
世間も擬人化やイケメンキャラ化のブームが広がって
そういった絵を目にする機会も増え、
多少なりとも私にも免疫的なものができてきたこともあり、
ある時からは、
いんじゃね!?
と。

悟りを得たというか、
新たなステージに行ったというか(^^;)


とりあえず、
私自身にもこんな変化(経緯)があり、
時を経て、ブログで興味本位かつ実験的に描き始めた
…という感じです。

 

 

でも、実際に描いていくうちに

確信したことがあって。

 


ワタシはただ単に、
イケメンキャラを描いて
”ほらかっこいいでしょ?きゃっきゃっ♡”
という類の、ミーハーな、オタクなノリだけをアピールしたいのではなく、

キラキラ化には意味があり、描く意義がある、

と。

 

それは、やはり、

人は見た目が9割(10割!?)!

ということ。

 

 

 

例えば。

南山王の他魯毎ですが、
これまでの彼がどう絵で描かれてきたのか。

嘉手志川と金の屏風の逸話から

小太りで髭もじゃで成金趣味のだらしない(もしくは頭の悪そうな)おっさん

だったと思います。

実際、ワタシもそんなイメージがあったし
『琉球戦国列伝』ではそのように描きました。

『球戦国列伝』での絵は基本、資料に基づいた中山視点がコンセプトになっています。
だから尚巴志に敵対した側は基本かっこ悪いor悪そう系なのです

 

でも、本当に他魯毎は
小太りで髭もじゃで成金趣味のだらしない(もしくは頭の悪そうな)おっさん
なのか?

この逸話だけで他魯毎という人物像を固めてしまっていないか?
この逸話は中山(勝者)側から見た他魯毎ではないのか?

阿麻和利がそうであったように、
他魯毎も(この逸話の真相も含めて)観方を変えれば
全然違う人物が浮かび上がってくるはずです。

 

『琉球戦国列伝』のあとがきでも、
今回の本の前書きでも書いていますが、

人物像というのは一つではない
100%悪人も100%のヒーローもない

ということは私がずっと意識していることです。
(このブログでも以前から何度も書いている通り)

英雄とされている人にも同時に黒い一面があるだろうし、
逆賊とされている人にも同時に英雄の一面もありうる。

どの立場に立ってその人を観るか、
その人のどの部分を切りとるかで、
人物像というのはガラリと変わってしまうのです。

 

でもね。

そういう別の角度でその人物をとらえるという作業は、
色んな人の解釈や歴史的背景や研究を読む・聞くなど、
とりあえず色んな知識(勉強)が必要になってくるわけです。

それにはある程度時間がかかる。
また、よほど琉球史が好きじゃないと、
こういったことを自分で調べて見方を深める…
という所まではなかなかできません。

 

そこで、絵、です。

それを一番簡単にアピールできるのが、
絵、だと思うのです。

 

しかも、それがサブカルなマンガ的イラストだとしたら?

 

琉球史をあまり知らない人、
特に若い女性や子どもたちが
初めて見る他魯毎の絵が、
小太りの成金おっさんか
キラキラな好青年か
では、その人物に対する印象は180度違うはずです。

 

そしてどっちに好印象を持つかは…
たぶん小太りおっさんよりはキラキラのほうが多数でしょう。
(絵としての好みはもちろんありますでしょうが)

つまり、

その人物のビジュアルが変わると
琉球史の見え方も変わる…!

と言ってもいいくらい
絵は影響力を持っていると思っています。

 

 


書店用に作ったポップ(全4種類あります)

 

ブログでシリーズを始めた時の中間考察でも書いているんですが、
これまでマイナスなイメージがあった人をキラキラにすることで
たとえ何かやらかしている人でも
なんだかそれも正義というか、分がある、
という印象を受けるから不思議(笑)

 

だから、

全員キラキラにしてみたかったのです。

そう描くことで、
これまでとは一味違ったその人や
新鮮さを知ってほしかったのです。

(なのでこのシリーズをブログで始めた時は
マイナー人物や
プラスイメージの薄い人物から始めているのです)

 

そして100%の悪者はいないのだと、
みんな琉球史を彩ったステキな人間なんだと、

 

そういうことを示したかった。

それが私が考えるキラキラ化の意義です。

 

 

 

1人の人物を澪之助と私との2人で描く、
そいうスタイルのもその一環。

同じキラキラ化だとしても、

モノの観方は一つじゃないよ
それぞれの解釈で人物像は変わるんだよ、と。

どっちが正しいとかではなく、
どっちがタイプ?とか、どっちが自分のイメージに近い?
みたいな感じで比較して楽しんでもらえれば。

でも琉球史の入口が一緒なので(というか私が洗脳した)
どっちも似た感じになったキャラもいますけどね(^^;)

ツイッター企画でやった時は眼帯が被った攀安知。本では外しました。

 

ちなみに、これは私の個人的なこだわりなのですが、
各人物には必ず弱点を設定しています。
(ステータス枠や文章に書いてあります)

弱点=人間らしさ

琉球史の偉人たちも、私たちと同じ人間。
弱点を通して、完璧ではない人間臭さも感じてくれれば嬉しいです。


  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

琉球歴女の琉球戦国キャラクター図鑑、について4

2018年07月01日 | ・琉球/沖縄、徒然日記

前回のつづき)

過程について書くのはこれがラストです。

 

全原稿、素材(写真など)をボーダーインクに提出し、
やったー!終わったー!
これであとは編集さんにおまかせ!
あとは誤字脱字などの最終チェックをするだけね☆

 

…と思っていたワタシ。

 

しかし、ここからが
「本を作るとはどういうことか」
を学んだ、初体験の連続でした。

 


ゲラ&校正チェックをした紙束。データでのやりとりや郵送したものもあるので、実際にはもっと多い。

 

前にもふれたように、
ワタシはこれまで「依頼・指示されたものを描くだけ」という経験しかなかったため、
各ページをどう作っていくか、という
「編集」に関わったことはありませんでした。

というか、
こういう感じにしたいというイメージだけを伝えれば
あとは編集者さんとプロのデザイナーさんが
ちょいちょいっとやってくれるものだと思ってました。

文章がメインの本ではそれでだいたいいいのかもしれませんが
今回はイラストがメイン。
しかもイラストのタイプや大きさ、組み合わせ、文字とのバランスなど
ケースバイケースの場合が多かったため、
ほぼ全ページ、完成予想図や細かな指示画像を作って送り、
それを元にできたものを更に検討して改善し…
という作業の繰り返しでした。

 

例えば、
「はじめに」と「この本の特徴」の見開き2ページの部分。

提出した原稿の文章を調整して
ページにざっくりはめられたもので最初の確認。

上部や周りには各キャラの決め台詞を入れてもいいかも、
という提案を受け、

どんな感じになるのか、
どのセリフを使うのか、
そしてどう構成するかを
ざっくりイメージを作ってみて再提出。

それを元に作られたものを見て、
改善案を再々制作して提出。

PC上で切り貼りしたり、
直接かき足したりして
ページの完成予想図の精度を高めていきます。

ワタシの意図が伝わるように、
完成予想図に説明(指示)を加えたもの。

これを元に再々度作られたものを見て…

 

更にチェック&赤入れ。

 


そしてその通りにできたものが
実際に収録されている完成形となりました。

 

 

ほぼ全ページこんな感じで、
私が編集の要領をイマイチ分かってなかったこともあり
実際の構成デザインを担当してくださった東洋企画印刷さんには
かなり手間をかけさせてしまいました…。
(最初から完成予想図をもっと具体的に作って
しっかり指示できていればもう少し楽だったかも…)

 

 

実際に作ってもらったけど、
比較検討した結果、没になった構成もあり。
(琉球七御嶽は○○戦隊みたいなグループ感や一体感を出したかった)

 

 

こういうこともあって
本の発売が当初の予定よりもかなり遅くなってしまいました

が、

時間がかかった分、
かなり細かいところまでこだわることもでき、
今のワタシの最大限を注いだ本、と言える
仕上がりになりました!

そして何より、多くの事を学ばせてもらい、
自分自身がレベルアップ(経験値が上がった)できた実感があります。

 

「次」がもしあれば、
今度はもっと要領よくできるはず!

 

 

ここまで『琉球歴女の琉球戦国キャラクター図鑑』を
出すにあたっての経緯を
記録もかねて振り返ってみました。

この約2年間、
ボーダーインクの新城さん、東洋企画印刷のTさんをはじめ、
多くの人の助言、サポート、励ましなどを頂きながら
思いを形にすることができました。

本当にありがとうございました!

 

そしてなにより、
共著者の澪之助。

彼女がいてこそ、
今回の本、今回のスタイルが実現できました。

叱咤多めの叱咤激励に、
最後までめげずについてきてくれた澪之助に感謝です。


  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする