はぐくみ幸房@山いこら♪

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木質バイオマス発電の燃料用材はどのように確保されているのか

2016年04月02日 | 現場技術・安全管理・道具のお話

 3月27日から29日まで、第127回日本森林学会に参加してきました。

(実は、仕事関係で出席したので、私的なブログに投稿することを悩みましたが、こういう情報は研究機関や大学関係など以外にも広く発信すべきかと思いましたので、投稿することにしました・・・。)

 今回は「木質バイオマス発電事業」関係で口頭発表されたものの中から、現場に役立ちそうな内容を簡単に報告したいと思います。

■中小規模の木質バイオマス発電事業の課題と可能性(森林総研)
 森林総研が「木質バイオマス発電の評価ツール」を開発しました。

 なお、評価ツールは無料で提供してくれます。

  詳細はこちら→「https://www.ffpri.affrc.go.jp/press/2015/20151009/index.html

 今回は、「発電出力1999kWの発電事業を経済評価」
 試算した結果、燃料チップ価格が9000円/t-40%w.b.以下等の有利な条件であれば十分に経済性ありだが、燃料チップ価格が上昇しただけで赤字になる。


■木質バイオマス発電の燃料はどのような形でどこから集められているのか?(東京農工大)

 アンケート調査の結果、燃料は一般廃棄物・一般木材・建築廃材・未利用木材の順に多かった。

 そのうち、未利用木材・一般木材・建築廃材を利用している施設を対象にアンケート調査を実施。

 結果、多くの施設がチップを購入。

 なお、未利用木材は県内調達、一般木材と建築廃材は県外調達という傾向が見られた。

 多くの施設が燃料確保は「十分」としていたが、未利用木材と建築廃材は、実績量が計画量を下回っていた。

 

北海道における発電所向け未利用材の供給ポテンシャルに関する考察(北海道)

 バイオマス発電施設は5基が認可、内3基が稼働し、未利用材の新規需要は約70万m3。

 カラマツは需給が逼迫し、発電所に供給できる余裕はない。

 トドマツは現行の1.4倍の伐採量で約40万m3の余裕はありそうだが、70万m3にはほど遠い。

 製材工場に影響を与え、工場が淘汰されるおそれも。

 北海道はほとんどが直送式のため、製材工場が淘汰されると運材費が増となり、運材距離に比例して打撃も受ける。


■木質バイオマス発電の立地による木材流通への影響(岩手大学)

 5基ある発電所の内、2基が稼働。

 現在は、既存の流通に大きな影響はないものの、稼働を控えた施設が集荷体制を構築し、先行して燃料材を集荷している。

 一方、パルプ工場では、買取り価格を上げるなどの対応を先行して行っている。

 パルプ用材との価格競争が予想されるが、今のところ燃料用材の価格が上昇するような動きはない。

 スギAB材は、価格低下で過剰感、スギCD材は、価格上昇で不足感とねじれが生じている。

 素材生産業者は、供給先に困っておらず、どちらが得か静観中。


■富山県における木質バイオマス発電所稼働に伴う低質材生産量の変化(富山県)

 低質材需要に対応した採材方法が素材生産業者の中で見直されている。

 従来の採材を「材質優先採材」、見直した採材は「材積優先採材」とし、収量や生産性の影響を調査。

 材積優先採材ではC材の生産量が35%増加し、利益は材質優先の方が材積優先よりも高い。

 今回の調査をベースに試算したところ、C材価格が7000円/m3以上あれば、材積優先の方が利益が高くなる。


■高知県における木質バイオマス発電の現状と課題(高知大学)

 木質バイオマス発電(2基)の稼働に伴い、供給量を60万m3/年に増加、需要量ではチップが増加。

 枝条は近距離で、未利用木材は100km超でも収益ありと試算された。

 製炭用材の搬出に併せた広葉樹資源の利用といった新たな動きも。

 2基とも稼働率は約80%を維持。

 広葉樹林を利用した新資源の開拓。

 ただし、運搬体制に脆弱な部分(車輌不足)がある、枝条の需要に対応できるよう利用体制の整備や運搬の効率化といった課題あり。

■宮崎県における発電用木材の安定供給の取り組み(森林総研)
 稼働している発電所は9基(既存5基、新規4基)。

 県内から未利用材を312千t調達予定、木質ペレット製造施設などの需要は58千t、合計370千tの需要に対応できる安定供給の体制が不可欠。

 調達側の安定供給への取り組みとして、既存の物流システムを利用、営業マンのスカウトや積極な営業の展開、山側や土場での取引、A〜D材の仕分け作業の引き受け、価格の引き上げなど各社で調達方法を工夫している。

 行政や関係業界団体は、収集、運搬、加工などの施設整備や低コスト化を促進したり、情報交換や普及啓発、協議会の設立や運営などに取り組んでいる。

 出荷側はAB材生産を主としており、発電用材を目的とした増伐等は行わない(AB材を発電用材にまわすつもりもない)。

 一部で低質な山を購入した事例はあるが、切り捨て間伐材を発電用材として搬出する動きはなく(採算があわないから)、そもそも現場では、まずは、AB材の生産効率を高めたい。

 出荷側は利益確保を優先したいので、工場着で価格が決まる状態では輸送コストを重視し、毎年現場が変わる場合もあるため、固定価格による取引契約は困難。

 また、売り手市場が生じている場合、出荷側が利益確保とリスク分散の観点から自由な取引を求める。

 

 以上です。

 長文で大変申し訳ございませんが、最後まで、お付き合いいただき、ありがとうございます。

 ご覧いただいて、それぞれ感じることはあると思いますが、

 個人的な所感としては、予想通りといったところでしょうか・・・(チップ依存、切り捨て間伐には手を出さない、などなど)

 以前、長野県の「いいづなお山の発電所」を訪問した時、安定供給体制が上手く整っており、黒字経営で、しかも、銀行融資の補助金なしで2号機を建設されていました(2基とも2000kw未満)。

 地元はブルーベリーの生産が盛んで、剪定枝なども受け入れられていました。

 地元への貢献度も高く、銀行から融資を受けられるほどの信頼性。

 まさに、木質バイオマス発電事業のお手本という風に感じました。

  → http://www.mwwi.co.jp/hatsuden/power-plant/

 

 そして、2016年には、稼働する発電所が急増。

 木質バイオマス発電業界で言われている「2016年問題」が、今後、どのような所で、影響を与えるのでしょうか・・・。

 

※2016年問題については、こちら→http://news.livedoor.com/article/detail/10217710/

 以下、一部抜粋したものを掲載します。

 農林中金総合研究所の試算によると、2016年には427万トンの未利用木材の需要に対し、供給は412万トン程度に収まると見込まれており、在庫が尽きる2017年~2018年頃から燃料の供給不足が顕在することが見込まれ「2016年問題」として危惧されている。

・バイオマス発電事業者として「2016年問題」に対して打てる戦略は、シンプルに「輸入材の活用」ということに限られる。現状バイオマス発電において利用される主要な輸入材はPKS(パーム椰子がら)だが、この取扱量が2012年から2014年の間に10倍近く急速に伸びている。

 

コメント
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