近所にある顔なじみの焼き鳥屋に入った。
席につくとすぐお通しが出てくる。
茄子の煮浸しだった。
困った。
僕は茄子が苦手なのだ。
これからの時期、お通しで茄子が出ることがしばしばあり、
毎回困るのだが、この時もそうだった。
結局、手をつけぬままいると、お会計の時にそれを見つけられ、
「茄子、お嫌いでした?」
「実はそうなんですよ」
「今度から苦手なものの時は言ってくださいね」
そんなやりとりをして、この日は店を出た。
それから二週間ほどして、再びその店に行った。
お通しが出る。
また茄子だった。
「茄子は・・・」と言おうとしたが、
その日はかなり混み合っており、
こんなことで手を煩わせるのも悪いと思い、黙っておいた。
そして、またまったく手をつけないと気を使われると思い、
ビールで流し込むようにして、二切れほど茄子を食べたのだった。
しばらくして、突然言われた。
「あー、ヤマナさん、茄子ダメだったんですよね!
すいません、すっかり忘れてました。客商売失格ですね」
僕と店主の心模様を俯瞰で観ていたら、
なんともコメディな状況だったに違いない。