霊能力と聞いて思い浮かべるのは、
「霊が見える」「前世がわかる」といった力ではないだろうか。
しかし、彼女が出会った霊能力者の力はそれとはまったく違った。
彼女が霊能力者と知り合うきっかけは引っ越しだった。
新しい部屋で夜な夜な怪異が起きるのだ。
ちゃんと締めたはずの水道から水が流れ出す。突然、夜中にテレビがつく。
まるでポルターガイストのような怪異が続いた。
こんな不気味な部屋にはもう住めない。
彼女の悩みを聞いた友人が、
知り合いの霊能力者を紹介してくれたのだ。
ひと通り話を聞くと、霊能力者はてのひらを彼女の眼前にかざし、目を閉じた。
そしてなにかを唱え始める。
いかにも霊能力者らしい所作だ。
だが、その口から飛び出してきたのは、予想だにしていなかった言葉だった。
「パッキンが緩んでる!」
パッキン?
一瞬、なにを言われているのかわからなかった。
あっけにとられている彼女をよそに、霊能力者は続けて叫ぶ。
「ほこりがつまってる!」
半信半疑だったが、クラシアンを呼び、水道のパッキンを取り換えてもらった。
水道の怪異はぴたりと止まった。
ほこりの方も、調べたらリモコンにほこりが詰まっていると接触不良を起こし、突然テレビが点くということがあるとわかり、
掃除したところ、もう二度と怪異が起きることはなかった。
なんて生活に密着したなんて便利な霊能力なのだろうか。
素晴らしい。
今度は作りたてのカレーがまるで二日目のカレーのようにおいしくなる方法を教えてもらいたい。
もちろん、霊能力で、だ。
※随分前に、あるサイトの連載として書いたものです。
先日、久しぶりにそのサイトを見たら、
リニュールされており、
かつてあった連載コラムのページがすでになかったので、
一部改稿したうえ、こちらに転載しておきます。