木箱のことをネットで調べていたら、茶箱のことを調べることになり、結局茶について知ることになった。
番茶という言葉を知ってはいても、それがどういうものなのか、いまいちピンとこなかったのだけど、やっと分かるようになった。
和歌山県印南町(いなみちょう)で、普通の家庭で茶を作るところを見せていただいたことがある。
印南町では、街でない限り、どこの家でも庭先で自家用の茶を作っていたという。
今はみんなやめたのだが、山間地で1軒、作っている家を見つけた。(ほかにもあるかもしれない)
茶葉はかなり大きくなったものを採り(5月中下旬ごろ)、それを炒るまでは煎茶と同じだが、
その後、揉まずに干すのである。(揉む家もあるということだが)
ふんわりしている。
お茶を出す(淹れる)ときには、昔は茶釜というのがあったが、今はやかんを使う。茶の葉を「ちゃんぶくろ」というかわいい名前の木綿袋に入れて、水を入れたやかんに入れ、熱する。つまり、水から煮出す。やかんに一杯作った茶を置いておき、一日中、家族は好きなときに飲むのである。この煮出したお茶は緑ではなく茶色っぽい。ほうじ茶と似ている。
作った茶を鍋に入れて沸騰させて米を投入すると茶がゆになる。このときの米は水に浸さず、乾燥したままで入れる。書籍によれば、アジア全体で米の炊き方には2系統あり、日本のように鍋の中の水分をすべて使って蒸らすような感じで焚くやり方と、大量の湯の中に米を入れてゆでるやり方があり、後者を「湯取り法」というのだが、茶がゆはこの湯取り法になるようだ。東南アジアの湯取り法はゆでた水を捨てたりするが、茶がゆでは捨てない。
話が米になってしまったが、茶に戻ると、和歌山県印南町の山間地で行われているやり方は、今お店で売っている緑茶(煎茶)が広まる以前に一般的に行なわれていた方法だということ。
それが番茶である。
今はこういう番茶はなかなか手に入らないので、ほうじ茶で代用しているのだと思う。家庭で朝ほうじ茶をたくさん作っておく習慣はそれとなく残っている。また、ほうじ茶で茶がゆを作ることもよく行われている。
印南町のスーパーの棚は、緑茶よりもほうじ茶の占める面積の方がはるかに大きい。
*写真/和歌山県印南町の山間地で作られている番茶(2017年)