山里ひぐらしの小径

木曽路の入り口、岐阜県中津川市から
人と自然とのかかわりをテーマに、山里、植物、離島など。

ハックルベリージャム……

2019-11-07 | たべもの・台所

ようやく山々が色付いてきました。家の周りも、ドウダンツツジがやっと赤くなったけど、ちょっと鮮やかさに欠けます。

2週間ほど前、長野県伊那市の産直市場グリーンファームで、季節外れのブルーベリーを見つけた。結構大きいパックに入って500g400円ぐらい。安いので買ってジャムにしようと思う。けれどラベルをよく見ると、「ハックルベリー」なのだった。

ハックルベリーという名前は知っている。確かアメリカの何かの物語の題名に入っているような気がする。それが果物で、ブルーベリーの兄弟だとは知らなかった。でもまあ、こんな季節にブルーベリージャムが作れたら嬉しいので(ハックルベリーだってば!)買ってくる。

家に持ち帰り夜寝る前に、デザートデザート、ちょっと生で食べちゃお、と一粒口に入れたら……。うえっ。

なんじゃこれっ(怒)。

すぐ吐き出した。ブルーベリーとは全然違う味。パックの上に挿しこまれている折りたたんだ説明書を見ると、「ハックルベリーはブルーベリーと似ていますが、生では食べられません」とある。まあ、近縁の種でも味が全然違うということはよくあることだ。

やっとジャムを作る気になったのは数日後のこと。説明書を広げると……

「ハックルベリーはブルーベリーとは違い、ナス科で、……」

!!!!!

全然近縁じゃないじゃないか! アカの他人ではないか!

ブルーベリーはツツジ科である。コケモモなんかと同じである。

ナス科と知ったとたん、ハックルベリーがイヌホウズキに見えてくる。紫黒色の実がなるのは、イヌホウズキやらアメリカイヌホウズキやらワルナスビやら。あと、ナス科といえば、ヤマホロシ。トマト、ナス、ピーマンもだけど、野生の種には有毒のものがいっぱいある。有名なのはハシリドコロ、ホオズキ、チョウセンアサガオ。野生じゃないけどタバコ。

何だか怖くなってきた。それでもせっかく買ってきたのでジャムをつくるのである。煮たら変な匂いがする。焼き芋の匂いなんだけど微妙にいやな匂い。わずかにヨウシュヤマゴボウの臭い匂いを薄めたような匂いもする。いい匂いだと思えばいい匂いのようなのだが、イヌホウズキだと思うと変な匂いに感じてくる。これがバイアスってやつだろう。変なやつだと思うとどうしても変に思える。

砂糖をどさどさ入れてジャムにしたが、味見すらしていない。一度変なやつだと思ってしまうともうだめである。潰すとぶちゅっとはじけて汁が飛ぶし、その弾力加減もやな感じでいまいましい。おどろおどろしい。我ながら、こうまでハックルベリーをうとまなくていいじゃないかと思う。産直市場で堂々と売ってるんだからいいやつに違いないのである。みんながおいしいという人気商品に違いないのである。変だと思う私が間違っているのである。

でも、怖くて味見すらしていない。できあがったジャムはタッパーに入れて冷蔵庫の中にある。食べられる日が来るのだろうか。誰か代わりに味見してくれないだろうか。一体どんな味がするのだろうか。

私の偏見のせいでかわいそうなハックルベリーである。

 

*追記:調べたところ、ハックルベリーはツツジ科のブルーベリーに近い種で、ガーデン・ハックリベリーはナス科のイヌホウズキの仲間だとのこと。私が買ってきたのはガーデン・ハックルベリーの方です。あいつめ、やはりイヌホウズキだったか!

ちなみに、イヌホウズキは植物図鑑には有毒と書いてあるが、薬草の大家の故村上光太郎先生は「イヌホウズキが有毒というのはデタラメだ」とおっしゃっていた。