先日友人が遊びに来て、最後に地元の居酒屋に行った。カウンターで10席もない、自宅の横に建てた小さなプレハブ小屋の、70歳にさしかかりそうなご夫婦がやっている店。看板もペンキで手書きしてある手作りの店。周りには雑木林がいっぱいある。メニューも少なく、地元の常連さんが一日の仕事を終えたお祝いにヤキソバなどを食べながら一杯だけ飲むような店。
そこで私たちは木と建築の話をしていた。昔から高級な日本の仏壇はインドの方の木で作っていたことなど。客はほかに誰もいなかった。いい大工さんは木の10年先を見て設計しているということから、いい設計をしようと思ったらもうからないとか、そんなことから話が進み、だから入札はよくないんだよね、そうだそうだ、などとくだをまいていたら、お店のおじさんがカウンターの向こうからうずうずした感じで話に加わってきた。聞けば、おじさんは地元の材木屋に勤めていたのだという。「行政の年度単位の発注が日本の木の文化をダメにしている」とおじさんは言った。
こんな田舎の小さなお店のおじさんがこんな言葉を平然と話す中津川はすごい。木にかかわる人の層の厚さ、裾野の広がある。この町の底力を見た気がした。もっともっと木の文化にみんなが誇りを持ってほしい。