今日もシロアリとの一戦に、手ぐすね引いて待っているが、人間の執拗さに恐れをなしたか、いっこうに姿を見せない。床の下と上、一家を守るもの同志がじっとスキを窺っている。人は彼らを害虫として憎むが、彼らには害虫としての認識は毛頭無い。身を寄せ合って理不尽を嘆いているかもしれない。悔しさに土台を噛み砕いているかもしれない。シロアリよ、お前が悪いわけではない。シロアリよ、おれが悪いわけではない。仕組みなのだ。総ては仕組みの中に仕組まれているのだ。だからシロアリよ、お前を見つけたらおれはtただ粛々と毒薬をまくのだ。