ポポーの木を植えた。
子供のころ食べた果実の味が忘れられずに
長い間、あちこち探していたところ
偶々、N市の友人宅にあるというので
苗木を分けてもらった。
原産地は北アメリカ、
明治中ごろに小石川植物園に植えられたのが
たちまち日本中に広がっていった。しかし
南国風の芳香とクリーミーな味が当時の日本人にはよく馴染めず
庭木としては好まれたが果樹園としての栽培はなかった。
そのうえ、やがて輸入が盛んになると
沢山の美味しい果実が手に入るようになり
ポポーの木は次第に姿を消し
今では、知っている人も少なくなった。
ぼくの舌の奥まった所には味の貯蔵庫があって
いくつかの珍しい味、懐かしい味が収納されている。
代表的なその一つは、
都電早稲田終点近くの小倉アイス。
天井から吊るされたテレビジョンでは力道山が大活躍し
銀の皿にウエーハスなど添えてあって
五円のアイスキャンデーしか知らない田舎者には大変な
カルチャーショック・・・・9歳であった。
二つ目は、田園都市線(当時は東横線と呼ばれていた)
自由が丘のキッチンフライパンのカキフライである。
牡蠣などという食物があるのをはじめて知ったのもそのときで
・・・18歳であった。
東京は安保反対のシュプレヒコールが渦まいていた。。
その他にも、初めてのレタスの味、初めての支那そばの味、
初めて吸った煙草の味・・・・・
いろいろ詰まっているが
完熟したポポーの味は初めての接吻によく似て
とてもミラクルで官能的。
どなたか是非、お試しあれ。
おお! おお!と、必ずや得心されることうけ合いです。
出目金の口寄せてくるあのねのね やす