ひとの薦めで谷崎潤一郎の『吉野葛』を読む。
いや、正確には平幹二郎朗読のCDを聴く。
明治末から大正初めの吉野を遊行した際に書かれた小説。
前半は歴史小説的内容であり
当時の大和の風景が優雅な文章で表現されている。
後半の母への思慕の描写はまさしく第一級の耽美派。
これだけ書ける作家は現代にはいない。
ぼくに共通しているところが多いからと
薦めてくれたのだが
母に向けられる慕情には深く共感し
マザーコンプレクッスが単なる感傷にとどまらず
より耽美的であり そして文学的であること
あらためて自分の本質を認識させられた。
中庭に残っていた雪がようやく解けたところへ
昼からの雪が降り積もっている。
明日の朝は
山から尾長たちが猫の餌をねらって騒がしくやってくるだろう。
それを梅の古木の陰でねらうシャムとネム・・・・
冬の寒さの中で野鳥も猫もしっかり生きている。
人間は、と言えば暖房の効いた台所で
角煮の味付けについてあれこれもめている。
雪の夜の屋敷をだれか通りけり