「ナァ ナァ ナァ」
石塀の上で催促しているカラス。
「うおーん うおーん」
八つ手の根元で地団太踏んでいる犬。
大きな器から美味しそうに湯気が立ちのぼり
猫たちがゆったりとアラを食べている。
カラスもタローもずっと待たされている。
うっかり近づこうものなら
たちまち鋭い猫パンチがとんでくる。
順番がある。
はじめはミルクとシャム。
つぎにネム。
いちばんあとになるのは
前足を失くしたゴンベエさん。
そうして猫たちが腹いっぱいになると
ようやくタローの番となる。
タローは大食い、
器は舐めたように空っぽ。
なかなかカラスまでは残らないので
塀の上からスキを狙っている。
それでもやさしいお婆さんが
追加のアラを出してくれることもあるので
こうして諦めずに待っている。
「ナァ ナァ ナァ」
よく晴れてはいるが、雪の来そうな気配。