永子の窓

趣味の世界

源氏物語を読んできて(161)

2008年09月15日 | Weblog
9/15  161回

【松風(まつかぜ)の巻】  その(6)

 源氏のお話は続きます。

「同じ心に思ひめぐらして、御心に定め給へ。いかがすべき。ここにてはぐくみ給ひてむや。蛭の子が齢にもなりにけるを、罪なきさまなるも思ひ棄て難うこそ。いはけなげなる下つかたも、紛らはさむなど思ふを、めざましと思さすば、ひき結ひ給へかし」
――わたしと同じお気持ちで考えて、何とかお心を定めてくださいませんか。どうしたものでしょう。あなたの許で育ててくださいますか。もう三歳になっていまして、罪のない幼い様子を見ますと、思い棄てることはできないのです。まだ頼りない腰つきも、なんとかしてやりたいのです。(三歳故、袴着の式)面白くないとお思いでなければ、袴の結び役を引受けてください――

 紫の上は、
「思はずにのみとりなし給ふ御心の隔てを、せめて見知らず、うらなくやはとてこそ。いはけなからむ御心には、いとようかなひむべくなむ。いかにうつくしき程に」
――あなたが人の気もご存じなく、分け隔てをなさるので、私も強いて知らぬふりをしたり、打ち解けたりすることも無いと思って拗ねたのです。幼い人にはきっと気に入るでしょう。どんなにか可愛らしいお年頃でしょう――

 紫の上は、お子をたいそう可愛がられるご性分ですので、ここに引き取って、抱きかかえして大切に育てたいと思われるのでした。

 源氏は、どうしたものか、ここにどのようにして姫君を迎えようか、と思いめぐらしておいでです。
◆蛭の子が齢(ひるのこがよわい)=三歳のこと。故事にいう。

◆写真:大覚寺大沢池の紅葉

◆【松風(まつかぜ)の巻】おわり。

○パソコンの不具合が出てきましたので、急にお休みが入るかも知れません。
その時はどうぞよろしく。