永子の窓

趣味の世界

源氏物語を読んできて(162)

2008年09月16日 | Weblog
9/16  162回

【薄雲(うすくも)の巻】  その(1)

源氏(大臣)  31歳秋~32歳秋
藤壺(宮)   36歳~37歳(崩御)
紫の上(対)  23歳~24歳
梅壺女御(前斎宮) 22歳~23歳
明石の御方   22歳~23歳
明石の姫君   3歳

 冬に入るにつれて、大堰の明石の御方のお住いの心細さを、源氏は思われて、早く二条院の東の院に移る決心をなさい、と催促されますが、明石の御方は、あちらへ移って、
かえって源氏のつれなさを見るようなことになれば、なお辛いと思うのでした。

「さらばこの若君を。かくてのみは便なきことなり。思ふ心あればかたじけなし。対に聞き置きて常にゆかしがるを、しばし見ならはせて、袴着のことなども、人知れぬさまならずしなさむとなむ思ふ」
――ならば、姫君だけでもあちらへ。このままにしておくのは良くないでしょう。将来考えがありますので、もったいないことです。紫の上が噂に聞いていて、いつも逢いたがっておいでですよ。しばらくお世話をおさせして、袴着の式などもきちんとしようと思っているのですよ――

 明石の御方は、予想していたことですので、胸のつぶれる思いがして、

「改めてやむごとなきかたに、もてなされ給ふとも、人の漏り聞かむことは、なかなかにやつくろひ難く思されむ」
――わざと格式ある身分に扱われましても、実情を世間の人が聞き知りましたら、かえって思わぬ苦労をすることでしょう――

 手放したくない明石の御方の気持ちは無理もないと源氏も思いますが、なおも、

「後やすからぬかたにやなどは、な疑ひ給ひそ。」
――姫を粗略に扱いはせぬかとのご心配は無用ですよ。――

 源氏は、紫の上のお人柄の申し分ないことをお話になります。

 明石の御方の心、
「紫の上の源氏との並一通りでないご宿縁を思えばこそ、自分ごとき物の数でもない者が、立ち並べる筈もない。昔は、どれほどの人を源氏が本妻になさるのかと、世の噂も耳にしたことがありましたが、紫の上の御方によって好色心(すきごころ)が、落ち着かれたのももっともなことです。そうであるならば、生い先長い姫君を第一に考えて、仰るとおりに、物心つかぬうちにあちらへ差し上げてしまいましょう。―でも姫君がこちらにおいでにならなければ、源氏の御君は何に惹かれてこちらへお出でになりましょう。

ではまた。