永子の窓

趣味の世界

源氏物語を読んできて(166)

2008年09月20日 | Weblog
9/20  166回

【薄雲(うすくも)の巻】  その(5)

 源氏は、山里に残る明石の御方の侘びしさを、思いやって、いとおしく思いますが、このように、紫の上が思いのままに姫君を愛育していかれると思えば、あちらも満ち足りた気持ちにもなることでしょう、などとお思いになります。が、

「いかにぞや、人の思ふべき疵なきことは、このわたりに出でおはせで、と口惜しく思さる」
――なんでまあ、紫の上にはこれという世間から差し障りになりますような疵(きず)など全くありませんのに、この御腹に御子がお生まれにならずに、なんとしても残念なことだ、とお思いになります。――

「しばしは人々もとめて泣きなどし給ひしかど、おほかた心安くをかしき心ざまなれば、上にいとよくつき睦び給へれば、いみじううつくしき物得たり、と思しけり。」
――姫君はしばらくの間、ここに居ないあの人やこの人を捜しては泣いておいででしたが、大体が素直で、かわいらしいご性格で、紫の上に大層よくなつかれますので、紫の上は本当に可愛いものを手に入れたとお思いになります。――

 紫の上は、他のことは差し置いて、姫君を抱きかかえてのお世話や、遊び相手をなさっておられます。源氏はもう一人身分の高い乳母を姫君のためにお抱えになりました。

 姫君の袴着のお式は、なにという格別なご準備もないようですが、それでもやはり並々ならぬお心遣いがうかがわれます。

ではまた。