Ｉ，Ｄ，Ｂ

パルムドールの本作はストレートである。
英国北部の工業都市を舞台にし、発作に見舞われ仕事を続けられなくなった主人公と、たまたま知り合ったふたりの子供のシングルマザーの物語。
それぞれ国の援助を必要としているにも拘らず、お役所的な複雑なシステムや理不尽な対応がそれを阻む。
日々切迫していく彼らの姿を通して、人間が生きられない社会とは、いったい何なのかということを問う。
そのリアリティーに怒りがみえる。
それをメッセージとして訴えるのではなく、日常のありがちなシチュエーションやディテールの積み重ねで観る者の共感を誘う。
コンピューターなど使ったこともないが、必要に迫られ初めてマウスの使い方を学ぶシーン。
思いが積り、壁に落書きをする場面は少しづつでは有るが、追い詰められた感がある。
観ているうちに他人事と思えなくなってくる。
ある日、病で倒れたら、失業したら、子供をひとりで育てなければならなくなったら？
良心を代表する作者の信念が、観る者の心にずしりと響く。