Viedel/KukiHairDesign/ヴィーデル/クキヘアデザイン 四条烏丸 美容室

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イヴィチャ・オシム

2017-04-24 08:42:07 | 映画
ボスニア・ヘルツェゴビナの首都サラエボ。100年前に第一次世界大戦の引き金となった重大な事件が起こったことは世界史で習っていても、周辺諸国による占領・統治が繰り返され、民族的にも複雑なこの国についてよく知らないというのが私を含め大半ではないか。
もちろん、歴史的民族的背景をある程度把握しておくほうがより理解できそうな台詞も多いが、知らなければ楽しめないというほどでもない。
深刻なテーマを扱いながら、タノビッチ監督らしいユーモアもあり、ホテルでスリリングに進行する群像劇の面白さに引き込まれる。
監督はボスニア紛争を描いた「ノー・マンズ・ランド」をはじめ、常に社会的弱者や権力に翻弄される個人の側に立ってきた。民族対立、貧困、労働者の搾取といった問題はけっして遠い世界の話ではない。
この映画を入口に、当地について調べたり、監督の過去作をさらに観賞してみるのもありだと思う。

1914年に発生したサラエボ事件は、第一次大戦が勃発した原因としても有名だ。
しかし事の背景はあまりに複雑で、本作を紐解く前にある程度の概略を頭に入れて臨んだ方が良いかも。
というのも、『ノー・マンズ・ランド』のダノヴィッチ監督が放つこの異色作は、まさにそのサラエボ事件から100周年目のメモリアル・デイに様々な研究家や論客がこの地に集って特別報道番組のインタビューを受ける中、その舞台となる高級ホテルでは賃金の不払いに不服を唱える従業員がストライキを企て・・・といった、一筋縄ではいかない内容が展開するからだ。
この100年間、事あるごとに火薬がくすぶり続けてきたこの地の過去と現在が、ホテル内のあらゆる場所の対立として仄かに集約され、煙を立ち上らせていく。
本作が伝えるのは、歴史がまだ終わってなどいないということなのか。
それとも人類はこの諍いのメビウスの輪から逃れることなどできないのだろうか。
見終わった後にズシリと重みが増していく作品だ。