冒頭から車が縦横無尽に疾走する爽快感。お気に入りのナンバーが流れ出すと、イントロ部分から完コピした主人公“ベイビー”が一挙手一投足を同期させ、華麗なるステップでアクセルを踏み、神のような手さばきでハンドルを切る。
すがりつくように追いかけてくるパトカーの群れを音楽に合わせ優雅にかわし、今しがた銀行強盗を終えたばかりの仲間たちを見事に逃がす。
衝撃を受けっぱなしのこのオープニング。
台詞はほとんど無い。
一連の映像からは、各々の役割や性格、特徴、現在置かれている状況、力関係などが全て細やかに伝わってくる。
神業。
基本軸となるのは、（ケビン・スペイシー）を首領とする犯罪チームとそのお抱えドライバー。
決してアクションに固執することなく、人や車の動きを使ってリズムを刻むミュージカルであり、みずみずしいボーイ・ミーツ・ガールのラブストーリーであり、哀しみの過去を持つ青年が“音楽”を媒介に社会とのつながりを保とうとする物語でもある。
一つ向こうの世界へ行ってしまった感すらある。