田舎町の群像ドラマ。中心となるのは、娘を何者かに殺された母親と、住人たちから信頼の厚い警察署長、そして部下で粗野な巡査。
娘を殺した犯人が捕まらないことにしびれを切らした母が、町はずれにある三枚の古い看板に署長を非難する意見広告を出したことから、町を揺るがせる。
悲劇に見舞われた母親の訴えと、事件の解決に消極的な警察との対立。
しかし、世の中はそんな風に白黒つけられるものではない。
映画は予定調和では終わらない。そんな早合点をしてはダメだ。
敵は警察かと思えば、本当に厚い信頼を得ていた人物であったし、粗雑に見える署員も、そうではない。
犯人捜しのミステリーに向かうかのように思えるが、それも梯子を外されてしまう。
気がつけば、姿を見せない犯人以外に誰も悪人などいない。
しかし、なぜいがみ合わなければいけないのか。
現実の世の中は、われわれ一人一人の人生など所詮不毛なのではないかという疑念。
空気が読めない、あらんかぎりの力で壁にぶつかっていく不器用で正直な生き様。
われわれ観客も全力で迷うべきである。