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街が消え、静寂が喧騒に

2019-04-15 07:32:11 | 町ネタ(京都編)
歩道を観光客が埋め尽くした中京区の四条通。
長い列は河原町から四条大橋を超え、祇園、東山まで続く。
 2018年に京都市内の主要ホテルに泊まった日本人客が前年比9.4%減で、4年連続のマイナスとなったことが市観光協会などのサンプル調査で明らかになった。
1カ月間の宿泊者数は2018年12月まで21カ月連続の前年実績割れ。
外国人の宿泊者数が依然として増えているだけに、市は日本人観光客が混雑を嫌がって敬遠したとみているが、京都外国語大国際貢献学部の廣岡裕一教授(観光学)は「京都のキャパシティが限界に来ている。
その結果、日本人観光客がイメージする静の京都らしさを感じられないことが影響しているのではないか」と懸念を示している。

●市中心部を埋め尽くす外国人観光客の長い列
 広い歩道を埋め尽くさんばかりの外国人観光客で足の踏み場もない。
日本人観光客も大勢いるが、数の上では外国人に圧倒されている。
京都を代表する繁華街の河原町から四条大橋を通って観光名所の祇園、東山に至る一角は連日、外国人観光客でごった返している。

 外国人観光客が増える前は全国からやってきた日本人観光客であふれていた場所なのだが、四条通の和菓子店で働く女性は「最近は外国人観光客の急増で日本各地のお国言葉を聞く機会が少なくなった」と苦笑いする。

 河原町近くにある中京区の錦市場商店街にも、外国人観光客が殺到している。
錦市場は全長390メートル、道幅3.3メートルの細長い通りに生鮮食品や豆腐、湯葉、漬け物などを売る店舗が120店以上軒を連ねている。

 かつては地元の人相手の商売で「京の台所」と呼ばれてきたが、ここ数年で客層の多くが外国人観光客に変わった。
錦市場で食材を調達し、宿泊先で食べるのが、外国人観光客の楽しみの1つになっている。

 狭い通りは外国人観光客の増加で混み合う一方。
その混雑ぶりから地元の高齢者らは足が遠のきがちだという。錦市場商店街振興組合は「外国人観光客がたくさん来てくれているが、観光シーズンになると混雑がひどくなる」という。

 河原町から錦市場、祇園、東山までの界隈は歩いて観光できる狭い範囲内で、キャパシティに限界がある。
京都の中心部では外国人観光客の姿が目立ち、日本人観光客の影が薄くなったように見える。

●2018年の日本人宿泊客、紅葉時期も二けたの減
 京都を訪れる日本人観光客の減少は、さまざまな調査で数字となって表れている。
市観光協会と京都文化交流コンベンションビューローがまとめた2018年の市内主要ホテル52施設を対象とした宿泊状況サンプル調査では、日本人宿泊客は206万2,716人で、前年より9.4%、10万4,129人減った。

 日本人の年間宿泊客減少は2015年の4.0%、2016年の3.8%、2017年の4.8%に続いてこれで4年連続。
この間、3.5~34.7%の増加が続いた外国人宿泊客と対照的な動きを示している。

 月間の日本人宿泊客数は2017年4月から前年同月割れが続いており、21カ月連続になる。
特に2018年は西日本豪雨があった6、7月だけでなく、紅葉シーズンの11月、12月も10.7~12.2%減と二けたのマイナスを記録した。
 市は毎年、市内を訪れた観光入込客や宿泊客数を推計している。2018年分の数字はまだ出ていないが、2017年は過去最高の1,557万人を記録した。
しかし、日本人の日帰り客に限れば、前年を349万人下回る3,415万人に落ち込んでいる。

 日本人客の減少について、市観光協会は「宿泊状況調査はあくまでサンプル調査。
これだけで原因を把握できない」としているが、市観光MICE推進室は「外国人観光客の増加で混雑が広く知られるようになって敬遠されたのでないか。
京都のホテルが満室という先入観が影響した可能性もある」と現状を分析する。

●中心部の混雑解消へ市は新プロジェクト
 混雑が著しいのが祇園や東山、嵐山、二条城周辺など市中心部であることから、市と市観光協会は「とっておきの京都プロジェクト」と題して大原や伏見、山科など市周辺部にある6つの観光地を推奨している。

 プロジェクトのホームページは2018年11月に開設され、6地域の見どころやイベント情報を発信している。
観光客受け入れの余地があるこれらの地域を売り込むことで市中心部の混雑を緩和しようとしているわけだ。

 宿泊施設の混雑を解消するためには2015年、市宿泊施設拡充・誘致方針で2020年までに1万室増やす目標を掲げ、積極的にホテルの誘致を進めてきた。
その結果、目標を上回る1万2,000室が新たに開設される見通しだ。

 2018年の宿泊施設客室稼働率は市観光協会などのサンプル調査で86.4%と、前年より1.7ポイント下がった。市は中心部の混雑を緩和すれば、さらに多くの観光客を受け入れられるとみている。

●京町家の消失で街のイメージが変容
 外国人観光客の殺到は中心部の混雑だけでなく、路線バスが時間通りに運行できないなど市民生活に影響を与え始めた。
さらに宿泊施設の建設ラッシュが街のイメージを変え、京都らしさを消しつつあるとの見方も出ている。

 京都は古い寺社とともに京町家が続く街並みが大きな魅力だ。
そこには歴史や伝統と同居した住民の暮らしが垣間見え、京都らしさを形成している。
しかし、東京や外国資本による宿泊施設の建設ラッシュが始まって以来、京町家が相次いで取り壊され、味気ないビジネスホテルに変わりつつある。

 京都の中心部は高さ制限の影響で以前から満杯状態で、宿泊施設建設に適した場所が少ない。
このため、多くの業者が京町家に目をつけている。
中国系投資会社の中には、2018年1年間で約120戸の不動産を買収、訪日中国人向けに再開発する計画を打ち出したところもある。

 市は京町家保全条例を策定し、保護に努めているが、買収の動きに追いついていない。
2018年には室町時代に建築されたとされる文化財級の京町家が中京区で取り壊された。
京町家再生研究会の小島富佐江理事長は「京町家の消失で京都らしさが失われつつある」と危機感を募らせる。

 商店街で販売する商品もワインやステーキなど京都らしさより外国人観光客の好みに合わせたものが増えている。
古都の雰囲気を楽しもうとやってくる日本人観光客にとって、京都らしい静のイメージと正反対の部分が目につくようになったのかもしれない。

 廣岡教授は「急激な変化は京都の価値を下げることになりかねない。
自治体は京都が変容するのをコントロールし、京都が持つ価値を適正に持続する方向に変える必要がある」と警鐘を鳴らしている。

 京都の魅力とは何なのか、なぜ京都が全国の観光客から愛され続けてきたのか。
市や観光業者は日本人観光客の減少を契機に、あらためて問い直す必要がありそうだ。

政治ジャーナリスト 高田 泰(たかだ たい)