「ボヘミアン・ラプソディ」の第二弾を期待すると肩透かしを食らう。名曲誕生秘話やレコーディング裏話はほぼゼロ。
代わりに貧困家庭で毒親に育てられた内気な少年がいかにスターの座へと駆け上り、アルコールやドラッグで転落していったかを、キャストがその都度シーンにぴったりの歌詞を持ったエルトンのヒット曲を歌い踊ることによって説明していく。
これはミュージカル映画なのだから当然、エルトン役の俳優本人が歌わなければならない。
強靭な喉と艶を併せ持ったエルトンのヴォーカルを再現するのは至難の技。
高いハードルをロケット・ジャンプで飛び越えてみせたのが、「キングスマン」シリーズのタロン・エガートン。
「キングスマン」第二弾「ゴールデン・サークル」でエルトン本人と共演して信頼を獲得、ゴリラのジョニーの声を担当したアニメ「SING シング」でもエルトン・ナンバーを歌っていたエガートンではあるものの、ここまで器用な男だったとは驚き。
天才ゆえの孤独と傲慢さを漂わせながら、周囲の人間が放っておけないチャームを撒き散らす姿に、エルトン本人も大喜びしているはず。
そんなエルトンとは正反対の堅実な性格の持ち主ながら、音楽面では最高の相性を示す作詞家バーニー・トービンをジェイミー・ベルが好演。
本作はふたりの出会いと諍い、そして和解を描いたブロマンス映画でもある。