『ツバメのこと(平城宮跡 岩井明子氏のエッセイ、ツバメねぐらを見守る)』
『夏の夕空に飛来する6万羽の観察を続けて10年、企画展も開く』
平城宮跡に飛来するツバメ
ウエブ情報から引用
二年前(20210831)の日経新聞文化欄に、岩井明子氏の表題のエッセイが載ってました。 『遮るもの何ひとつない平城京跡(奈良市)の空に、夏の日没直前になると一面を黒く塗りつぶすツバメの集団がやってくる。 その数、最大6万羽。 渦を巻くような群れを作って旋回し、眠りにつく場所に飛び込んでいく光景にいつも目を奪われる。 ツバメが夜に集まって眠る場所を『集団ねぐら』といい、その場所にやってくることを『ねぐら入り』という。 ねぐらを作る場所は、湿地で育つ植物のヨシが群生するヨシ原。
奈良市平城宮跡のヨシ原では毎年ツバメの集団ねぐらが形成されます。 最盛期の7月下旬から8月には最大6万羽のツバメのねぐら入りが観察され、日本野鳥の会発行の改訂版『ツバメのねぐらマップ』によるとその数は日本最大級です。
2012年以降、春の渡りの途中に立ち寄るツバメが‘春ねぐら’を形成する時期から子育てを終えすべてのツバメが南下するまでの間にほぼ毎日観察し、ねぐら入り総数などを記録しています。 その結果、この9年間で平城宮跡のねぐらに集まるツバメの総数が増加傾向にあることがわかりました。 その原因のひとつとして、県内にあった他のねぐらが開発によって消失した影響があるのではないかと考えています。
夏の夕焼け空を層になり飛び交うツバメは一体どこから平城宮跡に集まって来ているのか、ねぐらを失ったツバメが本当に平城宮跡に来るのか、ねぐら入りを観察していると様々な疑問が湧いてきます。
2020 年の夏はコロナ禍でたくさんの人が集まる観察会ができなくなりました。 そこで、この機会に従来の観察会の代わりに家や近所で平城宮跡に向かうツバメを観察して移動のルートを探ろうと考え、STAY HOME企画として、奈良つばめねぐら子ども研究部、日本野鳥の会奈良支部会員などに調査への協力を呼び掛け、延べ 118 人・47 地点の記録が集まりました。 しかし、まだまだ6万羽のツバメのルート解明には及びません。 そこで、来季もねぐらへの移動ルートを明らかにするための調査を継続した いと考えています。』
表題のエッセイを見て思い出しました。 十数年も昔のことですが、茨城県南の田圃の中の戸建ての団地に住んだことがありました。 我が家の玄関のひさしには、ツバメが巣をつくってくれないので、不思議に思っておりましたが、暫くして気が付きました、ツバメが毎年来て巣をつくってくれる家には、犬が飼われておりました。 『ツバメの賢さ』に驚いたことがありました。 先ずは、ツバメのこと調べてみました。
ツバメと日本人の関係
ツバメ(燕)は、スズメ目ツバメ科ツバメ属に分類される鳥類で、古くはツバクラメやツバクロと呼ばれていました。 ツバメは北半球に広く分布し、日本は沖縄にも存在しています。 スズメと同じく稲栽培で益鳥と認識されていますが、ツバメは害虫を食べても穀物は食べることはありません。 そのため、ツバメの巣や雛に悪戯することは禁じられ、古くから人々に大切にされていました。
さらに、文化的な側面でも「竹取物語」「幸福な王子」のような物語に登場し、ことわざでも『燕雀安くんぞ鴻鵠の志を知らんや』(小人物には大人物の考えや大きな志などがわからないことのたとえ)、『燕が低く飛ぶと雨が降る』が有名です。
ツバメが減少している!絶滅の危険性
そんな私たちに馴染み深いツバメですが、このままでは絶滅してしまうのではないか、と言われています。 2021年10月25日、環境省が20年ぶりに行った鳥類の分布調査結果を公表しました。
それにより、ツバメの個体数が大きく減少していることがわかり、将来的には絶滅危惧種に指定する恐れもある、という話も出ています。 調査は1974~78年、1997~2002年に続き3回目で、今回は2016~2021年にかけて、日本野鳥の会や山階鳥類研究所などと共同で行われました。 その結果、ツバメは1万4978羽から8,987羽に減少したことがわかっています。 ツバメは何が原因で個体数を減少させてしまったのでしょうか。
ツバメの減少原因は?分布広げる外来種
ツバメが減少してしまった原因は、彼らを育んでいた穀物を作る農地が、野菜を栽培する畑地に変わったことではないか、と考えられています。 環境省はこの今回の調査結果を今後の生物多様性を守る施策に生かす方針です。
また、この調査で分かったもう1つのことは、ツバメが個体数を減少させる一方で、ガビチョウのような外来種が分布を拡大させていることでした。 ガビチョウは、スズメ目チメドリ科に分類される鳥類で、鳴き声が非常に大きいことから、騒音の原因と捉えられ、害鳥に指定され、日本の侵略的外来種ワースト100にも選ばれています。
ツバメが警戒するものは、カラス、蛇、猫など捕食者と、 スズメやムクドリ など、 巣を壊す鳥です。 やはり、ツバメの減少は、天敵である『カラス・ヘビ人・間』であるようです。
ツバメの無着陸飛行距離(300㎞以上)を他の留鳥と比較
『野鳥の無着陸飛行距離』
- キジ;高度5mも行けば良い方で、飛行距離は最大で70m
- スズメ;大体10m~15mくらいの高さ、一日に飛行できる距離は5㎞程度
- カラス春だと、農家の近くにねぐらを作り、一日に数キロ程度しか飛ばない。しかし、夏から秋にかけては、広い範囲で食料を探すために30~60㎞程飛びます。 冬になるにつれ、食料を安定的に確保できる農家の近くで生活します。
鳥類は、 地上を這いずり回る鳥から、アホウドリの様に数千キロも飛び続ける鳥もいます。 他にもツバメのような渡り鳥は小型ですが、300㎞以上航続可能なようです。 スズメの様に定住しているような鳥であれば長くても4~50㎞位だと思います。 カラスに至っては一度に飛べる距離が数キロといわれています。 よって、鳥と端的に言っても種類によって航続距離が大きく違うようです。 ツバメが安心して『ねぐら入り』できる日本を維持できるよう自然を大事にして頑張りたいと思っています。
(記事投稿日:2023/09/28、#688)