◎寺子屋では十八貫の石を担がせた
昨日の続きである。清水文弥『郷土史話』(邦光堂、一九二七)の「民俗」の「三、村の遊戯と娯楽」の中の「二、寺小屋教育の話」を紹介している。本日は、その三回目(最終会)。寺子屋では、身近な物に即して「勤倹」が教えられ、また、今で言えば、「体育」の授業のようなものもあったという。
すべて教へる事は「虚偽」を言はぬ事、実践躬行〈キュウコウ〉のこと、器物を愛することなどであつた。本を愛し、筆を愛し、硯を愛し、草紙を愛し、すべて手近のものから漸次其愛を遠きに及ぼすことを教へられたのであつた。
私は草紙二十枚をとぢて貰つて裏表〈ウラオモテ〉黒くなるまで稽古した、其反古紙〈ホゴガミ〉は丸髷〈マルマゲ〉や島田〈シマダ〉の型に使つた。
また其頃文庫と云ふものがあり、其のかけご〔懸子〕の中に川原〈カワラ〉から砂を取つて来て入れ、其砂の上に箸で字を習ふものもあつた。之れを砂書き〈スナガキ〉又は砂手本〈スナデホン〉とも云ふた。
筆子〈フデコ〉が十四歳位に衣れぼ五貫位、十六歳位になれば、六貫目位の石をかついで、庭をあるかせたものである。力のない者は早く疲〈ツカレ〉が来る。それで力を出すことを稽古するのである。二十歳位になれば十八九貫の石をかつがせる。この体力を養ふことも亦教育の一つであつた。
それから服装の事であるが、御年始〈ゴネンシ〉などの時羽織を着る者は二十人に一人位、袴は婿になる時着るので、之れも二十人中一人位のものであつた。
履物は寒中は藁くつ、其他は藁草履、雨天には樫の下駄であつた。今日では誰でも桐の下駄を履いて居るが、昔は五百石以上の身分ある者でなければ穿へなかつた。
学校は板の間であつて、生徒は皆そこに座はるのであつた。
清水文弥の『郷土史話』については、このほかにも、紹介したいところがあるが、とりあえず、明日は話題を変える。
なお、本年の三月くらいから、「このブログの人気記事」というものが表示されるようになった。参考までに、三月二八日のもの、および本日のものを紹介しておこう。
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