◎那須郷石林の盆踊り唄
清水文弥『郷土史話』(邦光堂、一九二七)の「民俗」の「三、村の遊戯と娯楽」の中の「三、盆踊」を紹介している。昨日、紹介したのは、その前半で、本日は、その後半。後半は、盆踊りの唄が紹介されている。
那須郷石林の乃木将軍の農場でも、お盆には、近隣の若い男女が、この唄にあわせて踊っていたのであろう。那須郷石林は、現在の那須塩原市石林。
ハーハ月はいみじき闇こそよけれ、忍ぶ姿の顔見えず。アーコラコラ
ハーハ思ひ出せとは忘るゝからよ、思ひ出さずに忘れずに。アーコラコラ
ハーハ丹後田どころよい米どころ、娘にやりたや婿欲しや。アーコラコラ
ハーハ親は子と云ふてたづねもするが、親をたづぬる子はまれな。アーコラコラ
ハーハ野にも山にも子なきは置きやれ、万の蔵より子は宝。アーコラコラ
ハーハ唄へ十七声はり上げて、胸の蓮華の開くように。アーコラコラ
ハーハわかい女の願かけるのは、神や仏もおかしかろ。アーコラコラ
ハーハおどり見たさにくね〔垣〕からのぞく、くねの小笹で目をついた。アーコラコラ
ハーハ今年しや豊年万々作よ、俵かますやみ〔叺や箕〕ではかる。アーコラコラ
ハーハ泥の中から育てたからだ、清き実をもつ稲の花。アーコラコラ
ハーハ上を思えばかぎりがないぞ、下見て咲いたか百合の花。アーコラコラ
ハーハ梅にやほれぬが桜にや惚れる、梅にや「ホケキヨ」のまぶ〔間夫〕がある。アーコラコラ
ハーハばらもぼたんも枯れゝばをなじ、花でありやこそわけへだつ。アーコラコラ
ハーハ盆のびたもちや中まで米よ、つねのぼたもちや中は麦。アーコラコラ
ハーハ霜にさらされ風にはもまれ、ついに錦を着る紅葉〈モミジ〉。アーコラコラ
ハーハそうて苦労は世間のならひ、そはぬ先から苦労する。アーコラコラ
ハーハそろたそろたよ踊子がそろた、秋の出穂〈デホ〉よりよくそろた。アコラコラ
ハーハ沖のかもめに潮時とへば、わたしや立つ鳥波にとへ。アーコラコラ
ハーハ、盆に牡丹餅〈ボタモチ〉、おひるにうどん、晩に米のめし、かぼちや汁。アーコラコラ
ハーハひよ鳥越さえせめ様で落つる、そうてそわれぬことはない。アーコラコラ
ハーハ道の半町〈ハンチョウ〉も行かないうちに、こうも会ひたくなるものか。アーコラコラ
ハーハ盆に牡丹餅彼岸にだんご、五月節句にかしわ餅。アーコラコラ
ハーハゐなかで育つた私の頭、思ひつき様もありません。アーコラコラ