◎ハバロフスクの日ロ協力事業つまずく
今月三日の東京新聞朝刊第六面(総合)に、「日ロ協力事業つまずく」と題する、比較的大きな記事が載った。見出しが三段、本文、注「日ロ経済協力8項目」、写真、地図が、併せて七段である。最初の部分を引用してみよう。
日ロ協力事業つまずく/極東空港建設 日本参加できず/ハバロフスク
日ロ両政府が進める経済協力の目玉案件、ロシア極東のハバロフスク空港の近代化で、日本側の共同事業提案をロシア側が最終局面で拒否していたことが二日分かった。日ロ双方の関係者が明らかにした。日本不在のまま、中核事業の国内線新ターミナル建設をトルコの共同事業体が受注し三月に着工。今後、日本抜きで事業が進む懸念が出ている。
極東の中心都市ハバロフスクの空港近代化は、北方領土交渉の進展を目指す安倍晋三首相が二〇一六年にプーチン大統領に提案した八項目の経済協力プランの重要案件。極東開発で存在感を示したい日本はつまずいた形だ。
詳しい事情をはわからないが、安倍内閣の対ロシア外交の失敗であることは、素人でもわかる。この協力事業には、総合商社の双日〈ソウジツ〉などが加わることになっていたという。
今回のロシア側の「拒否」を受けて、双日の公報部がコメントを発表している。その全文を引用してみよう。
利益なければ困難
双日広報部の話 ハバロフスク空港建設に関し融資協力の合意を交わしたが、ロシア側に提案を受けてもらえなかった。建設工事そのものはロシアで実績がある企業に勝てないとの判断があり、入札に参加していない。現在も運営に参画するために空港側と協議を続けている。(ロシア副首相が)日本の融資提案に不満を示したのは、協議に時間がかかり、なかなか進展しないことへの懸念の表れだと思う。空港近代化事業は日ロ経済協力プラン八項目の一つであり、両国政府には実績を作りたい思いがあるだろう。日本政府からもぜひやってくれと言われているが、民間事業なので利益がないとできない。(共同)
含みの多いコメントである。特に、最後の「民間事業なので利益がないとできない」というところが重要である。要するに、日本政府から「ぜひやってくれ」と言われているが、政治・経済・外交面からの有効な後押しはなかった、双日としては、そういう事業に積極的になるわけにはいかなかったと言っているのである。
もし日本政府が、本当に、この日ロ協力事業を推進しようとしているのであれば、日本政府は、政治・経済・外交、すべての面において、もっと強力な対応をとるべきであった。特に、双日に対しては、「経済面」からの支援を約束しておくべきだったのではないか。
二〇〇六年に東芝は、ウェスチングハウス社を買収したが、その後、これが原因となって経営危機に追い込まれた。当時の東芝の経営者に、「日本政府からもぜひやってくれと言われているが、民間事業なので利益がないとできない」と言えるだけの見識があれば、こんなことにはならなかったであろう。今回の双日の判断は、ことによると、そうした東芝の失敗を意識していたのかもしれない。