◎大きい戦争のあと、言語辞典は時代後れになる
齋藤秀三郎著『熟語本位 英和中辞典 新増補版』の巻頭にある「新増補版について」を紹介する。引用は、一九六一年(昭和三六)二月一〇日発行の「第18刷」から。
新 増 補 版 に つ い て
大きい戦争の体験のあとでは言語辞典は急に時代後れになる。国民生活の中に新しい概念,知識,事物が入つて,今まで知られなかつた語彙や表現が殖えて来るからである。第二次世界大戦後に英米の辞典が多く改版され新刊されたのは此のためであり,本辞典が新しく増補を試みたのも此のためである。
此の新増補版に於ては,重要な新語を補つたのは勿論であるが,本辞典の熟語木位と云ふ特性を失はないやうに留意し,努めて英米の新しい成句熟語の集録を図つた。そのためには1951年までに出版された英米の文献をなるべく多く参照したが,猶採録に漏れたものもあると思はれる。それは後日の補修に俟ちたい。
今回の追補については前の増補の場合と同じく九州大学教授中山竹二郎氏の援助に負ふ所が多い。又同大学教官前川俊一,後藤武士,長澤由次郞,一力秀雄の諸氏,及び福岡学芸大学助教授吉竹廸夫氏も中山教授を助けて追補の完成に貢献された。茲にその名を誌して感謝の意を表する。
昭和二十七年四月 東京青山にて 豊 田 實
末尾に、「東京青山にて」とあるが、豊田實は、この時、青山学院大学学長(初代)。