◎寺院財産の管理規定を完備しなければならぬ
松尾長造述『宗教団体法解説』(仏教連合会、一九三九)を紹介している。本日は、その四回目で、「二、制定の理由」の続きを紹介する。ページでいうと、一〇ページから一二ページまで。
第四の理由は、宗教団体の財産の管理規定を完備しろと云ふ朝野の叫びであります。宗教団体就中〈ナカンズク〉寺院に於ける財産管理規定の確立と申しますか、完備と云ふか、それは是非やらなければならぬ。成程現在に於ても色々の規定が断片的には沢山ある。或は斯う云ふものは地方長官の許可を受けよ、斯う云ふものは文部大臣の許可を受けよ、又斯う云ふものは檀徒総代二名以上が連署しなければ無効である、と云ふ風に色々の規定があるが、之は断片的にアツチにも設け、コツチにも設けしてあるから一寸一つの事項を見出さうとしても大変である。之を完備しなければならぬ。何故完備する必要があるかと云ふと、宗教団体は営利事業は致さない、宗教団体の収入は主として善男善女の篤志寄附或は一般信者の浄財の集りである。営利団体ならば自分で儲けて勝手に使つても文句はないが、苟も〈イヤシクモ〉篤志家の寄附や善男善女の浄財が集つて居るのであるから、それを適正に使用しなければならぬのは当然であります。今日動〈ヤヤ〉もすれば色々の問題が起り、不祥な事実が新聞に掲載されたりするのは甚だ遺憾に堪へない。之では宗教団体の権威を失墜し其の活動を鈍からしめるから、此の点は是非改革しなければならぬと云ふのであります。殊に今一つは仏教界多年の懸案たりし国有境内地処分に関する件であります。之に就ては政府は寺院財産管理規定が完備した暁〈アカツキ〉には適当に処分すると云ふことを明かに公約して長い間来て居ります。所が今日までの所に於きましては、寺院の財産管理規定が完備したとは云ひ難い、何れ宗教団体法案が出来るから財産管理規定も完備しよう、其の際に於て充分考慮しようと云ふ事になつて居りました。斯う云つた訳でありますから、昨年〔一九三八〕来大蔵省 と色々相談して出来たのが「寺院等ニ無償ニテ貸付シアル国有財産ノ処分ニ関スル法律案」でありまして、之は影の形に添ふ如く、宗教団体法案が貴族院に提案せらるゝや、三日後にして此の法案も上程せられ、宗教団体法案の特別委員会に併託になり、軈て〈ヤガテ〉衆議院に廻ると此の法案も亦追つかけて来て衆議院へ廻ると云ふ風に、恰も兄弟案とも云ふやうな形で、三月二十三日に両方共一緖に手をつないで目出度〈メデタク〉上程可決と云ふことになりました。かやうに寺院財産管理規定を完備しなければならぬと云ふ点に第四の理由があるのであります。【以下、次回】
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