礫川全次のコラムと名言

礫川全次〈コイシカワ・ゼンジ〉のコラムと名言。コラムは、その時々に思いついたことなど。名言は、その日に見つけた名言など。

今も「吉良の赤馬」という郷土玩具が作られている

2018-12-16 07:16:15 | コラムと名言

◎今も「吉良の赤馬」という郷土玩具が作られている
 
 今年も年末が近づき、「討ち入り」の話題を耳にするようになった。
 昨年の一二月四日のコラムで、旧吉良家領の上州白石村では、明治維新まで忠臣蔵の芝居を許さなかったという話を紹介した。
 その後、ほかにも似たような話があることを知ったので、本日および明日は、その話を紹介したい。出所は、朝日新聞中部支社報道部編の『夏草の跡――愛知県郷土史話』(朝日新聞中部支社、一九五四)という本である。
 同書の中に、「吉良上野介義央」という一篇がある。本日は、その前半を紹介してみたい。

  吉良上野介義央
  (西暦一六四一~一七〇二年)

 忠臣蔵、義士伝ではカタキ役の吉良上野介義央(ヨシヒサ)も、その旧領地の幡豆郡横須賀村では「名君義央公」とその治績をたたえられ、土地の人々はいまも変らぬ遺徳を語りついでいる。
 吉良氏はもと足利三代の義氏(源頼朝の義理のオイ、妻は頼朝の娘)が三河の地頭となって、初めて西条(いまの西尾市)に城を築き、後さらに東条―いまの横須賀村駮馬(マダラメ)にも築城、長男義継を東条に、二男長氏を西条においた。このあたりは古くから雲母(キララ、キラ)を産し、西尾市八ツ面(ヤツオモテ)の山から盛んに掘っていたが、最近はどうやら掘りつくしたということだ。雲母に因んで吉良ノ荘と呼ばれたので、この地の足利氏も土地の名をとり吉良氏といったが、西尾氏今川には長氏の二男国氏が住み、これは後の今川氏となったもので、足利―吉良―今川は血縁の名門であった。
 西条の吉良氏は天文六年(西暦一五三七年)織田信秀に通じて今川義元に攻められ、ついで永禄四年(西暦一五六一年)松平氏のため城を奪われたが、一方東条は今川、松平両氏とよく、吉良持広は松平広忠(家康の父)のエボシ親となり、持広の孫義定は家康とイトコ同士という関係から、特に家康に目をかけられ、元和三年(西暦一六一七年)幡豆郡のうち七カ村三千二百石を与えられた。その子義弥(ヨシミツ)に至って高家(コウケ、幕府の儀式係の長官)に列し、上州で千石を加えられ、上野介を名乗ったが義央はこの義弥の孫であった。
 横須賀村大字岡山の背撫山(セナデヤマ)と呼ぶ小山の中腹に登ると、すぐ東の黄山(キイヤマ)のふもとまで約百間の山あいに見事な堤防が横たわっている。現在はこの堤防の東端は一部切り開かれて県道が走っているが、堤防の北側には青田が続き、その向うに須美川、広田川が望まれる。かってこれらの川がハンランすると濁水が地勢の低い西南部に流れ込み、この狭い山あいから横須賀、吉田の一帯を水びたしにして農民を苦しめた。貞享三年(西暦一六八六年)九月義央は隣の西尾藩の反対を押し切って高さ十三尺、堤脚二間強の土手をこの山あいに築かせたが、この工事には領民がこぞって協力して一夜のうちに完成したという。その後この土手は吉良領内はじめ付近一带に非常な恩恵を与え、人々は黄金堤(コガネヅツミ)と呼んで義央の徳をほめたたえた。

写真【略】 吉良義央の築いた黄金堤(幡豆郡横須賀村)

 また義央は横須賀村下河原から吉田町高島まで約二里にわたって幅四間の用水路を開き、元禄元年(西暦一六八八年)には吉田町小山田に約九十八町歩の新田を開いた。この新田は義央の夫人富子の名から富好(トミヨシ)新田と呼ばれた。用水はいまも田畑のカンガイに役立ち、新田は後に塩田となって「饗庭(アイバ)塩」を産したが、いまの塩田はやや前面に移っている。このように領内の民政に深く心を用いた義央は、領地に帰ると必ず赤い馬に乗って領内をすみずみまで見て回り、領民たちから慈父のように親しまれた。領内駮馬村の清兵衞という人がこの赤馬のオモチャをつくり、子供らに与えたのが始まりとなって、いまも「吉良の赤馬」という郷土ガン具がつくられている。【以下、次回】

*このブログの人気記事 2018・12・16

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

亡友よ霊よ感応の谺と叫べ山河に(弔魂歌)

2018-12-15 01:44:11 | コラムと名言

◎亡友よ霊よ感応の谺と叫べ山河に(弔魂歌)

 奥田良三・宮田東峰共編『われらの歌 国民愛唱歌集 第三巻』(新興音楽出版社、一九四二年七月)を紹介している。本日は、その四回目(最後)。本日は、同書の中から、町田敬二作詞・伊藤昇作曲の「弔魂歌」という歌を紹介してみたい。

  弔 魂 歌
        町 田 敬 二作詞
        伊 藤 昇 作曲
 あゝ想ひ出の 戦場に
  侘びしく残る 友垣【ともがき】が
  築く泪の 供養塔【くやうたふ】
  零露【れいろ】冷き 奥津城【おくつき】に
  無量の想念【おもひ】 溢るれど
  誰【たれ】にかのい告げん このこゝろ
 中支の奥の 名無草【ななしぐさ】
  手向けて黙祷【いのり】 献【ささ】ぐれば
  輪回【りんね】に浮ぶ 俤【おもかげ】は
  死の群像を 乗り越えて
  虚空【こくう】を翔【かけ】る わが戦友【とも】が
  あはれ散華【さんげ】の 絵巻物
 変る相【すがた】に 搖籃【えうらん】の
  往時【むかし】を偲ぶ 幼などち
  訣【わか】れがたなき せつなさに
  墓標見守る 目も滲【にじ】み
  影はうつらふ 丘の上
  風は悲しみ 日は暮れぬ
 あゝ大陸の 月今宵
  ひとり歌はん 弔魂歌
  亡友【とも】よ霊【みたま】よ 感応の
  谺【こだま】と叫べ 山河【やまかは】に
  「草蒸す屍【カバネ】 われこそは
  永劫【とは】に大地の 礎石ぞ」と
  
 戦友の死を悲しむ歌で、いわゆる「軍歌」とは、いささか趣が異なる。これを作詞した町田敬二については詳しくないが、インターネット情報によれば、陸軍士官学校卒の軍人(陸軍大佐)で、歩兵第百四十五連隊大隊長、西部軍報道部長などを務めたという(一八九六~一九九〇)。
 明日は、話題を変える。

*このブログの人気記事 2018・12・15

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

ねんねのお夢に見る鳥は遠い神代の金の鵄(日本子守唄)

2018-12-14 00:44:31 | コラムと名言

◎ねんねのお夢に見る鳥は遠い神代の金の鵄(日本子守唄)

 奥田良三・宮田東峰共編『われらの歌 国民愛唱歌集 第三巻』(新興音楽出版社、一九四二年七月)を紹介している。本日は、その三回目。本日は、同書の中から、安孫子省三作詞・古関裕而作曲の「日本子守唄」という歌を紹介してみたい。

家 庭 の 歌
 日 本 子 守 唄
    安 孫 子 省 三 詞
    コロムビアレコード吹込

    (一)
坊や、ねんねん ねんねしな
ねんねのお夢に 見る鳥は
遠い神代【かみよ】の 金の鵄【とび】
びいひよろひよろろと 輪をかいて
夢のお空を 飛びまする
    (二)
坊や、ねんねん ねんねしな
ねんねのお夢に 見る旗は
赤い日の丸 国の旗
ひらひらひららと 東風【こち】けて
夢のお里で 鳴りまする
    (三)
坊や、ねんねん ねんねしな
ねんねのお夢に 見る花は
まるい月夜の さくら花
ほのぼのほんのり 紅【べに】染めて
夢のお庭に 咲きまする

*このブログの人気記事 2018・12・14(9位に珍しいものが入っています)

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

それからご飯だ、ああうれし(高村光太郎)

2018-12-13 02:05:28 | コラムと名言

◎それからご飯だ、ああうれし(高村光太郎)

 奥田良三・宮田東峰共編『われらの歌 国民愛唱歌集 第三巻』(新興音楽出版社、一九四二年七月)を紹介している。本日は、その二回目。本日は、同書の中から、高村光太郎作詞・箕作秋吉作曲の「こどもの報告」という歌を紹介してみたい。

 こどもの報告   高 村 光 太 郎
一 めがさめる、とびおきる。
  晴れても降つても、一二三。
  朝のつめたい水のきよさよ。
  こころも、からだも、はつらつ。
  お父さまお早うございます。
  お母さまお早うございます。
  みんなもお早う。
  かしこきあたりを直立遥拝。
  それからご飯だ、ああうれし。
  かうしてぼくらのその日がはじまる。
  その日がはじまる。
二 日がくれる、戸をしめる。
  勝つても負けても、ジヤンケンポン
  夜のたのしいうちのまとゐよ。
  こころも、からだも、のびのび。
  お父さまおやすみなさいませ。
  お母さまおやすみなさいませ。
  みんなもおやすみ。
  お国のまもりへ直立敬礼。
  それからお寝まき、ああらくだ。
  かうしてぼくらのその日がをはるよ。
  その日がをはるよ。

 二番の「まとゐ」は「円居」、団欒の意味である。「まどゐ」とも言う。
 なお、明日以降、このほかの歌詞も紹介する予定ですが、昨日の「目次」をご覧になって、「この歌の歌詞を知りたい」などと思われた方がいらっしゃいましたら、コメント欄を使って、その旨をお知らせください。優先的に紹介します。

*このブログの人気記事 2018・12・13

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

おいらの胸にゃぐっときた(進め一億火の玉だ)

2018-12-12 02:06:45 | コラムと名言

◎おいらの胸にゃぐっときた(進め一億火の玉だ)

 先日、古書展で、奥田良三・宮田東峰共編『われらの歌 国民愛唱歌集 第三巻』(新興音楽出版社、一九四二年七月)という本を入手した。「定価金五十銭」、古書価三〇〇円。
 パラパラと中味を見てみると、聞いたことがないような珍しい歌が、たくさん入っている。このあと、そうした歌の歌詞をいくつか紹介してゆきたいと思うが、本日は、とりあえず、「目次」のみを紹介してみる。

  わ れ ら の 歌
    (第 三 巻)
  ――目   次――
ア ジ ヤ の 力……………………… 4
十 億 の 進 軍……………………… 5
無敗潜水隊の歌…………………… 6
シンガポール晴の入城 ………… 7
ハ ワ イ 海 戦……………………… 8
マ レ ー 沖 海 戦 ………………… 9
海軍落下傘部隊の歌………………10
大東亜戦争陸軍の歌………………11
進め一億火の玉だ…………………12
海 の 進 軍 …………………………13
断 じ て 勝 つ ぞ…………………14
国民総出陣の歌……………………15
大東亜決戦の歌……………………16
感 激 の 合 唱………………………17
大詔奉戴日の歌……………………20
月月火水木金金……………………21
陥したぞシンガポール …………22
総進軍の鐘は鳴る…………………23
戦ひ抜かう大東亜戦 ……………26
躍進海車の歌………………………27
銃 後 の 花…………………………28
勇 士 に 捧 ぐ ……………………29
元気で行かうよ……………………30
陸上日本の歌………………………31
輝 く 軍 艦 旗 ……………………32
軍   旗…………………………33
敵 は 幾 万…………………………34
皇軍大捷の歌………………………35
桜   花…………………………38
陸軍行進曲…………………………39
若 き 妻…………………………40
船 出 の 歌…………………………41
日本婦人の歌………………………44
英 霊 讃 歌…………………………45
沈黙の凱旋に寄す ………………46
かへり道の歌………………………47
撃 滅 の 歌…………………………50
婦人愛国の歌………………………51
空 を ゆ く…………………………52
新 政 讃 頌…………………………53
少年少女愛国の歌 ………………54
みくにの子供………………………55
こどもの報告………………………56
兵隊さんよありがたう…………58
空 中 艦 隊…………………………59
少国民愛国歌………………………62
日本子守唄…………………………63
子 守 唄…………………………64
旅   愁…………………………65
母 の 背 は…………………………66
弔 魂 歌…………………………67
元   寇…………………………68
凱   旋…………………………69
国旗掲揚の歌………………………70
興亜青年行進曲 …………………71
昼    …………………………72
古戦場の秋…………………………73
花    …………………………74
蘭 花 の 頌…………………………76
国   土…………………………77
日章旗の下に………………………80
国   旗…………………………81
か も め…………………………82
秋 の 月…………………………83
若 葉 の 歌…………………………86
娘 田 草 船…………………………87
時計台の歌…………………………88
春 待 草…………………………89
戦陣訓の歌…………………………92
戦車兵の歌…………………………93
陸軍記念日を祝ふ歌 ……………94
海軍記念日の歌……………………95
健 歩 の 歌 …………………………98
国民学校の歌………………………99
四 季 の 月 ………………………100
春の草秋の草 ……………………101
寧 楽 の 都 ………………………102
軍人勅諭の歌 ……………………104
軍艦旗の歌 ………………………105
抜 刀 隊 ………………………108
日本陸軍の歌 ……………………109
雪 の 進 軍 ………………………112
敷島艦の歌 ………………………113
興 亜 の 妻 ………………………114
大 君 の ………………………115
此 の 一 戦 ………………………116
朝だ元気で ………………………118
僕等の団結 ………………………120
連 峯 雲 ………………………122

*このブログの人気記事 2018・12・12(なぜか1位にバラバラ死美人)

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする