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奴隷根性の一掃に向けて

2010年05月21日 23時41分30秒 | 職場人権レポートVol.1
   

 この一週間風邪気味で、ブログ更新を抑えていました。どうやら風邪も治まったので、ぼちぼち再開しようと思います。まずは手始めに、職場人権レポートの続きから。

 私の勤め先の状況については、4月11日付記事「今後の闘い方について」に書いた通りです。曰く、業務請負企業として、某大手スーパー物流センター業務を請負っているものの、最近一次下請けから二次下請けに格下げとなり、従来よりも低い賃金で余計に働かされるようになった。しかし、下請けの悲しさか、直接の雇用主でもない当該スーパーには誰も逆らえない。社員や古株のバイト・チーフも、仲間内では不満たらたら愚痴るものの、いざ実際に仕事をする段になると、上には何も言えずに下に当り散らすばかりで、「奴隷根性の虜」に成り下がってしまっている。
 そんな中で、この間の労働強化に怒った私が、「どうせ辞めるにしても、せめて一矢ぐらいは報いてやろう」と、個人加盟の地域労組に加入して、「会社との闘いも辞さず」と決意を固めた。しかし、具体的に何から手をつけていけば良いか、全く手探り状態の中で、まずは皆の「奴隷根性」を払拭する必要があると考えた私は、次の二点に狙いを定めて、行動を開始しました。

 一つは、労組員一人だけでは何も出来ないので、他のバイト仲間を労組に誘う事。それも、今まで無風地帯だった職場で、大っぴらにオルグしても誰もついて来ないし、下手すれば弾圧の口実を与える事にも為りかねないので、まずは「探りを入れる」所から始めました。既に何人かのバイトには、私が地域労組に加入した事や、労組結成も考えている事も、それとなく言っています。
 但し、それに対する反応は、概して消極的なものでした。勿論、自分たちの弱い立場を見透かすかの様なスーパーの汚いやり方には、全員が怒っています。しかし、「どうせ立ち上がっても潰されるだけだ」という諦めが、必ず次に出てきます。
 しかしこれも、実際に搾取しているのが元請のスーパーであるにも関わらず、雇用関係においては完全な第三者でしかない為に、下請けにとっては手も足も出ない。他方で、直接雇用主たる二次下請けの業務請負会社は、単なるスーパーや一次下請けの配下にしか過ぎず、労働条件改善については何の権限も無い。そういう「不利益だけは確実に押し付けられるが、その責任は誰も取らずに済む」汚い構造が背景にあるからなので、無碍に非難は出来ない。
 それよりも、「食べていける賃金」「人間らしい働き方」への要求は確固として存在するし、それ自身は絶対に正当なものなので、そこに確信を持って、今後も諦めずに声を掛け続けていくつもりです。

 もう一つが、職場内に骨の髄まで染み付いた「奴隷根性」を一掃する事。勿論、その「奴隷根性」の背景には、間接雇用であるが故の、先述の「不利益だけ押し付けてその責任は誰も取らない」構造があるからなのですが、それでもハナから「自分は奴隷です」と諦めていたのでは、凡そ物事は何も進みません。今まで散々相手の言いなりで来て、最後に「お前死ね」と言われて、初めてそこで幾ら「嫌だ」と言っても、誰も見向きはしない。
 その為の実践が、この間の給与未払い分の是正要求や、資材検品表の書式改善要求です。その一つ一つは、あくまでも自分の為のささやかな要求にしか過ぎません。しかし、その証拠集めの手間も厭わず、諦めずに要求する姿勢を皆の前で示してきたのも、偏に、他のバイトも私に続いてくれる事を期待しているからです。その変化も実際に現れつつあります。それで実際に、総務担当者が今月支給予定分の給与算定ミスに気付き、私に感謝の言葉をかけてくれましたし、私の実践を見習うバイトも出てきましたから。

 そこで問題になって来るのが、私の所属する二次下請け会社の職場リーダー層たる正社員や、その配下で実際に采配を振るっている「現場監督」の古株バイト・チーフの動向です。とりわけ後者のバイト・チーフについては、注意が必要です。
 ここで、このバイト・チーフの人となりについて、説明しておきます。年齢的には既に還暦を過ぎた団塊世代ですが、剣道で身体を鍛えていた事もあって、今でも現役バリバリで仕事をこなしています。元百貨店の営業統括課長としての経験を買われて、同じヒラのバイトでありながら、主任正社員以上の仕事をこなしています。毎月の勤務シフトを組み、毎週のミーティングも社員と共に参加しています。
 それも、よくいる「偉そぶるだけのパワハラ上司」タイプでもない。人に言うだけの事は自分もやるので、社員もバイトもみんな、この人には一目置いています。
 その一方で、昔かたぎの頑固おやじタイプでもあり、高血圧の持病を抱えている事もあってか、ちょっとした事でやたら興奮する。そして、実際にも命令口調で人を動かそうとするので、肌の合わない新人バイトは、この人を嫌って次々と辞めていく、という事も過去にあったそうです。実際、この人から頭ごなしで、将棋の駒みたいに扱われるのを、疎ましがっているバイトも、決して少なくはない。斯く言う私も、どちらかと言うとその一人で。

 政治的には、過去に「日の丸・君が代」の話題を巡って、通勤用送迎バスの中で私と論争になった事もあった、そういう人です(関連記事)。但し、この人の名誉の為に言っておくと、決して安倍・田母神の様な極右でもネットウヨクでもない。商売絡みで台湾に滞在し、現地で皇民化政策の犠牲者に接してきた事もあり、歴史修正主義には結構批判的。その一方で、「日の丸・君が代」を尊重しない左翼も嫌っている。
 そして何よりも、「ALWAYS三丁目の夕日」や「サザエさん」「釣りバカ日誌」の舞台の様な「古き良き時代」の正社員の感覚で、今のワーキングプアの問題も「自己責任」で片付けようとする。反自民で米国流の新自由主義にも批判的だが、それもあくまで過去の日本的経営を懐かしむ立場からのもの。恐らく国民新党あたりが、この人の政治的立場に最も近いのではないかと思われる。

 そういう人なので、この間の労働強化の局面の中で、ともすれば上から目線で、将棋の駒のようにバイトを動かそうとする、このバイト・チーフに対しては、私は当初「資本家の犬」と看做していました。日頃の命令口調への反発も手伝って、現場で言い合いになりかけた事も何度かありました。「上には何も言えずに、下にばかり当り散らすな!」と。
 ただ、最近は「強ちそうとも言えないのでは」と思うようになりました。一つには、「今でも、会社と従業員は家族みたいなものだと思っているのか?」という私の問いに対して、「かつてはそう思っていたが、今はそうは思わない」と返してきたからです。そして、「このままいたら、仕舞いに会社に殺されてしまうわ」と、ポロッと口に出したからです。でも実際は今でも「上には何も言えずに、下にばかり当り散らす」が如き状況で、これが正社員なら板ばさみに遭うのも分かるのですが、同じバイト身分なのに、何故そこまで会社に忠誠を尽くすのかが、私には理解出来ません。
 どちらにしても、キーマンのこの人の意識が変わらない事には、職場の意識も変わらないだろうと思っています。こちらも一朝一夕にはうまく行きませんが、気長に変えていこうと思っています。 
コメント (3)
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