今年2月9日投票の東京都知事選で、本来なら猪瀬・徳洲会献金疑惑追及の先頭に立つべき候補が、猪瀬同様の金権体質を抱えていると、かつての仲間から批判されています。澤藤統一郎氏や醍醐聰氏らによる宇都宮健児候補への批判がそれです。特に澤藤氏などは、ご自身のブログ「澤藤統一郎の憲法日記」で既に20本以上も宇都宮氏の立候補辞退を呼びかける記事を書いています。
澤藤氏や醍醐氏による宇都宮氏批判の要点は概ね次の通りです。
(1)選対本部長(上原公子・元国立市長)や選対事務局長(熊谷伸一郎・岩波書店社員)など一部幹部による専断的な選対運営によって、翌日の街宣日程が前日になっても決まらなかったり、現場の人手不足がずっと放置されてきた。それに対して、宇都宮候補の随行員として選挙ボランティアに加わった澤藤氏の息子・大河氏が、選対事務局に何度もその問題でかけ合ってきた。選対事務局はそれに対し、改善するどころか逆に、大河氏ともう一人の随行員を、理由も明らかにしないまま、いきなり「臭い物に蓋」とばかりに随行員から外す挙に出た。
(2)その一方で、上原本部長は、公選法では買収供応として明確に禁じられている選挙報酬を、ウグイス嬢などの労務費(バイト料)や交通費・宿泊費などの実費支給に限り例外的に認められている規定を悪用し、違法に受け取り、政治資金収支報告書にも虚偽の記載をした。
(3)熊谷事務局長も、岩波書店社員として給与を貰いながら、有給休暇も使わず、選挙活動に業務として参加する「企業ぐるみ選挙」を行っていた。
(4)その他にも、選挙ボランティアを単に自分たちの手足としてしか見なかったり、ビラ配布中に不当逮捕された運動員の釈放・救援にもまともに取り組まなかったりといった、差別的な選対運営がまかり通っていた。
(5)自身も選対幹部として加わった父親の澤藤統一郎氏が、何度もそれらの問題点を内部で指摘してきたのに対し、選対事務局は今度は澤藤氏も選対事務局から排除するに至った。
(6)宇都宮健児氏自身も、前述の選対運営の横暴を何ら諌めず、事実上、見て見ぬふりでお茶を濁してきた。
(7)宇都宮氏自身の都知事候補としての適格性も甚だ疑問だ。選挙戦の最初から最後まで同じ内容の演説の繰り返しで、かみ合った論戦が全然できていなかった。
それに対する反論が「澤藤統一郎氏の公選法違反等の主張に対する法的見解」の名で宇都宮後援会「人にやさしい東京をつくる会」の公式サイトに掲載されましたが、抽象的な言い訳に止まり、全然、具体的な反論になっていません。例えば、選挙報酬について、「あれは交通費や宿泊費等の実費支給に過ぎず、買収供応には当たらない」と反論していますが、それなら何故、実費なら必ず出る筈の千円以下の端数が一切計上されず、まるで判で押したように10万円ちょうどという、いかにも取って付けたような報酬金額になるのでしょうか。既に醍醐聰氏もご自身のブログでこの疑問に言及しておられますが、私も醍醐氏と同じ疑問を持ちました。確かに猪瀬・徳洲会の5千万円疑惑とは全然金額が違いますが、やっている事は全く同じです。
これでやっと、前回2012年都知事選での宇都宮大敗の理由が分かりました。当時は猪瀬直樹が石原慎太郎の後継者として自民・公明両党に加え「維新の会」からも推薦を得て、同時に行われた衆院選での自民党圧勝の余勢をかって、433万票もの大量得票で早々と当選を決めました。
それと全く対照的だったのが宇都宮健児氏です。こちらも猪瀬には及ばないものの、元日弁連会長や年越し派遣村の名誉村長、サラ金に対する過払い金返還訴訟のリーダーとして、それなりに知名度がありました。それに加え、これまで同氏を支援してきた共産党だけでなく、社民党や緑の党、菅元総理など民主党の一部からも支援を得て、かつての革新共闘に近い体制で選挙に臨んでいました。東京都民ではない私も、この選挙にはかなり期待していました。
ところが、いざ蓋を開けてみると、事実上の革新共闘が成立していたにも関わらず、僅か96万票しか得票できませんでした。得票率も僅か14%余りです。これが地方の知事選なら寧ろ善戦との評価になるでしょうが、仮にも大都市・東京で、民主党左派や革新無党派も加えれば今でも150万票ぐらいの潜在的リベラル票が存在する筈なのに、何故たった96万票しか得られなかったのか。確かに、衆院選挙との抱き合わせで都知事選の争点がかすんでしまった、民主党が自主投票に回り、かなりの票が松沢成文・元神奈川県知事や猪瀬に流れてしまったという、不利な条件もありましたが、その点を割り引いても、これでは幾ら何でも負け過ぎではないかと、ずっと疑問に思っていました。実際、その翌年2013年参院選での吉良佳子(共産党公認)70万票+山本太郎(革新系無所属)66万票+大河原雅子(民主左派系無所属)23万票の得票を合計すれば、約150万票になります。
そりゃあ、街宣スケジュールが前日になっても決まらず、素人同然の技量しかないくせに、権力欲だけは一人前の選挙スタッフや、前評判こそ良いものの、実際はそんな選挙スタッフに振り回されるだけの、弁舌も朴訥なだけで論戦もかみ合わない候補者では、幾ら優れた政策を提示できても、全然勝負になりません。
特に、これだけ政治不信が蔓延している中では、言っている事とやっている事が違う政治家は、有権者からことごとく総スカンに遭います。これは保守(右派)・革新(左派)問わずです。寧ろ、今はソ連崩壊や北朝鮮拉致問題などの思想的影響や、生活保護バッシングなどの弱い者虐めの風潮もあって、寧ろ左派の方が右派以上に叩かれる傾向があります。与党の保守系政治家にクリーンな政治や社会正義の実現なぞ誰も期待しません。それでも多くの人がそんな政治家を支持するのは、見返りを期待しての事です。逆に野党の革新系政治家には有権者はクリーンさや社会正義の実現を期待します。ところが、その野党の革新系も、保守陣営の企業ぐるみ選挙や権力支配を散々批判しながら、自分達は業務命令で部下に選挙応援させたり、与党も顔負けの権力欲にまみれていたのでは、有権者にとっては「どっちもどっち」でしかなくなります。「どっちもどっち」なら、「見返り」のより大きい方を選んでしまうのも、肯定はしませんが理解はできます。
この澤藤氏や醍醐氏の宇都宮氏批判を、利敵行為や私憤で片付けてはいけないと思います。これでは、さしずめ「ブラック企業の搾取と闘う」と言いながら、支持母体の生協内部で蔓延しているパワハラや不当労働行為には目をつむり、それへの批判を利敵行為や私憤として握りつぶす様なものじゃないですか。元生協職員で前述の被害にも遭った私としては、そんな二枚舌の政治家なぞ到底許容できません。
しかし、それでもやっぱり、若し私が東京都民だったら、しぶしぶ宇都宮さんに投票はするでしょうね。下手に棄権に回って、舛添や田母神なぞ都知事にさせようものなら、後々大変な事になります。福祉は切り捨てられ、ブラック企業も今以上に野放しにされます。「日の丸・君が代」強制を始めとした思想統制や、女性や障害者への差別も更に酷くなるのは確実です。何故なら、相手は、現憲法の主権在民(民主主義)・人権尊重・戦争放棄(平和主義)の思想をことごとく敵視し、戦前の帝国憲法を美化する様な人たちなのですから。万が一、田母神なぞ知事にさせようものなら、世界中からバカにされてしまいます。かつて橋下徹を知事にしてしまった後に他の大阪府民まで「お笑いバカ」と揶揄された以上のバッシングを受ける事になるでしょう。
だから、棄権に回る位なら、まだ宇都宮さんに「しぶしぶ」入れるでしょう。しかし、今回の事で、私の宇都宮さんに対する期待はすっかり冷めてしまいました。もはや、かつての様に、他の人にも同氏を推薦しようという気には全然なれません。
まだ告示日まで何日間かありますから、その間にもっと素晴らしい人が名乗りを上げてくれれば良いのですが、現状ではそれも望み薄です。私自身は、澤藤統一郎さんでも良いと思いますが、当人が固辞されている以上どうしようもありません。そういう意味では、今回の都知事選挙には殆ど何も期待できないでしょう。
でも、これを「対岸の火事」と舛添や田母神自身が思っているなら、それはとんでもない間違いだという事も、ここで同時に申し上げておきます。人材難は別に革新陣営だけに限った事ではありません。人材難は保守も同じ。だからこそ、客観的に見れば「過去の人」でしかない舛添、田母神、細川、東国原といった人物しか、候補者として名前が上がって来ないのでしょう。それで仮に嘘とペテンで幾ら票を掠め取っても、それらが砂上の楼閣にしか過ぎない事は、今の猪瀬を見れば良く分かります。たとえ今回の件があっても、人柄と政策については、我々の陣営の方が「敵」を上回っているのは確かです。あちらの陣営の方が上回っているのは、嘘とペテンと権力で人をたぶらかすテクニックだけなのですから。(続編に続く)
澤藤氏や醍醐氏による宇都宮氏批判の要点は概ね次の通りです。
(1)選対本部長(上原公子・元国立市長)や選対事務局長(熊谷伸一郎・岩波書店社員)など一部幹部による専断的な選対運営によって、翌日の街宣日程が前日になっても決まらなかったり、現場の人手不足がずっと放置されてきた。それに対して、宇都宮候補の随行員として選挙ボランティアに加わった澤藤氏の息子・大河氏が、選対事務局に何度もその問題でかけ合ってきた。選対事務局はそれに対し、改善するどころか逆に、大河氏ともう一人の随行員を、理由も明らかにしないまま、いきなり「臭い物に蓋」とばかりに随行員から外す挙に出た。
(2)その一方で、上原本部長は、公選法では買収供応として明確に禁じられている選挙報酬を、ウグイス嬢などの労務費(バイト料)や交通費・宿泊費などの実費支給に限り例外的に認められている規定を悪用し、違法に受け取り、政治資金収支報告書にも虚偽の記載をした。
(3)熊谷事務局長も、岩波書店社員として給与を貰いながら、有給休暇も使わず、選挙活動に業務として参加する「企業ぐるみ選挙」を行っていた。
(4)その他にも、選挙ボランティアを単に自分たちの手足としてしか見なかったり、ビラ配布中に不当逮捕された運動員の釈放・救援にもまともに取り組まなかったりといった、差別的な選対運営がまかり通っていた。
(5)自身も選対幹部として加わった父親の澤藤統一郎氏が、何度もそれらの問題点を内部で指摘してきたのに対し、選対事務局は今度は澤藤氏も選対事務局から排除するに至った。
(6)宇都宮健児氏自身も、前述の選対運営の横暴を何ら諌めず、事実上、見て見ぬふりでお茶を濁してきた。
(7)宇都宮氏自身の都知事候補としての適格性も甚だ疑問だ。選挙戦の最初から最後まで同じ内容の演説の繰り返しで、かみ合った論戦が全然できていなかった。
それに対する反論が「澤藤統一郎氏の公選法違反等の主張に対する法的見解」の名で宇都宮後援会「人にやさしい東京をつくる会」の公式サイトに掲載されましたが、抽象的な言い訳に止まり、全然、具体的な反論になっていません。例えば、選挙報酬について、「あれは交通費や宿泊費等の実費支給に過ぎず、買収供応には当たらない」と反論していますが、それなら何故、実費なら必ず出る筈の千円以下の端数が一切計上されず、まるで判で押したように10万円ちょうどという、いかにも取って付けたような報酬金額になるのでしょうか。既に醍醐聰氏もご自身のブログでこの疑問に言及しておられますが、私も醍醐氏と同じ疑問を持ちました。確かに猪瀬・徳洲会の5千万円疑惑とは全然金額が違いますが、やっている事は全く同じです。
これでやっと、前回2012年都知事選での宇都宮大敗の理由が分かりました。当時は猪瀬直樹が石原慎太郎の後継者として自民・公明両党に加え「維新の会」からも推薦を得て、同時に行われた衆院選での自民党圧勝の余勢をかって、433万票もの大量得票で早々と当選を決めました。
それと全く対照的だったのが宇都宮健児氏です。こちらも猪瀬には及ばないものの、元日弁連会長や年越し派遣村の名誉村長、サラ金に対する過払い金返還訴訟のリーダーとして、それなりに知名度がありました。それに加え、これまで同氏を支援してきた共産党だけでなく、社民党や緑の党、菅元総理など民主党の一部からも支援を得て、かつての革新共闘に近い体制で選挙に臨んでいました。東京都民ではない私も、この選挙にはかなり期待していました。
ところが、いざ蓋を開けてみると、事実上の革新共闘が成立していたにも関わらず、僅か96万票しか得票できませんでした。得票率も僅か14%余りです。これが地方の知事選なら寧ろ善戦との評価になるでしょうが、仮にも大都市・東京で、民主党左派や革新無党派も加えれば今でも150万票ぐらいの潜在的リベラル票が存在する筈なのに、何故たった96万票しか得られなかったのか。確かに、衆院選挙との抱き合わせで都知事選の争点がかすんでしまった、民主党が自主投票に回り、かなりの票が松沢成文・元神奈川県知事や猪瀬に流れてしまったという、不利な条件もありましたが、その点を割り引いても、これでは幾ら何でも負け過ぎではないかと、ずっと疑問に思っていました。実際、その翌年2013年参院選での吉良佳子(共産党公認)70万票+山本太郎(革新系無所属)66万票+大河原雅子(民主左派系無所属)23万票の得票を合計すれば、約150万票になります。
そりゃあ、街宣スケジュールが前日になっても決まらず、素人同然の技量しかないくせに、権力欲だけは一人前の選挙スタッフや、前評判こそ良いものの、実際はそんな選挙スタッフに振り回されるだけの、弁舌も朴訥なだけで論戦もかみ合わない候補者では、幾ら優れた政策を提示できても、全然勝負になりません。
特に、これだけ政治不信が蔓延している中では、言っている事とやっている事が違う政治家は、有権者からことごとく総スカンに遭います。これは保守(右派)・革新(左派)問わずです。寧ろ、今はソ連崩壊や北朝鮮拉致問題などの思想的影響や、生活保護バッシングなどの弱い者虐めの風潮もあって、寧ろ左派の方が右派以上に叩かれる傾向があります。与党の保守系政治家にクリーンな政治や社会正義の実現なぞ誰も期待しません。それでも多くの人がそんな政治家を支持するのは、見返りを期待しての事です。逆に野党の革新系政治家には有権者はクリーンさや社会正義の実現を期待します。ところが、その野党の革新系も、保守陣営の企業ぐるみ選挙や権力支配を散々批判しながら、自分達は業務命令で部下に選挙応援させたり、与党も顔負けの権力欲にまみれていたのでは、有権者にとっては「どっちもどっち」でしかなくなります。「どっちもどっち」なら、「見返り」のより大きい方を選んでしまうのも、肯定はしませんが理解はできます。
この澤藤氏や醍醐氏の宇都宮氏批判を、利敵行為や私憤で片付けてはいけないと思います。これでは、さしずめ「ブラック企業の搾取と闘う」と言いながら、支持母体の生協内部で蔓延しているパワハラや不当労働行為には目をつむり、それへの批判を利敵行為や私憤として握りつぶす様なものじゃないですか。元生協職員で前述の被害にも遭った私としては、そんな二枚舌の政治家なぞ到底許容できません。
しかし、それでもやっぱり、若し私が東京都民だったら、しぶしぶ宇都宮さんに投票はするでしょうね。下手に棄権に回って、舛添や田母神なぞ都知事にさせようものなら、後々大変な事になります。福祉は切り捨てられ、ブラック企業も今以上に野放しにされます。「日の丸・君が代」強制を始めとした思想統制や、女性や障害者への差別も更に酷くなるのは確実です。何故なら、相手は、現憲法の主権在民(民主主義)・人権尊重・戦争放棄(平和主義)の思想をことごとく敵視し、戦前の帝国憲法を美化する様な人たちなのですから。万が一、田母神なぞ知事にさせようものなら、世界中からバカにされてしまいます。かつて橋下徹を知事にしてしまった後に他の大阪府民まで「お笑いバカ」と揶揄された以上のバッシングを受ける事になるでしょう。
だから、棄権に回る位なら、まだ宇都宮さんに「しぶしぶ」入れるでしょう。しかし、今回の事で、私の宇都宮さんに対する期待はすっかり冷めてしまいました。もはや、かつての様に、他の人にも同氏を推薦しようという気には全然なれません。
まだ告示日まで何日間かありますから、その間にもっと素晴らしい人が名乗りを上げてくれれば良いのですが、現状ではそれも望み薄です。私自身は、澤藤統一郎さんでも良いと思いますが、当人が固辞されている以上どうしようもありません。そういう意味では、今回の都知事選挙には殆ど何も期待できないでしょう。
でも、これを「対岸の火事」と舛添や田母神自身が思っているなら、それはとんでもない間違いだという事も、ここで同時に申し上げておきます。人材難は別に革新陣営だけに限った事ではありません。人材難は保守も同じ。だからこそ、客観的に見れば「過去の人」でしかない舛添、田母神、細川、東国原といった人物しか、候補者として名前が上がって来ないのでしょう。それで仮に嘘とペテンで幾ら票を掠め取っても、それらが砂上の楼閣にしか過ぎない事は、今の猪瀬を見れば良く分かります。たとえ今回の件があっても、人柄と政策については、我々の陣営の方が「敵」を上回っているのは確かです。あちらの陣営の方が上回っているのは、嘘とペテンと権力で人をたぶらかすテクニックだけなのですから。(続編に続く)