

今年も「SHINGO★西成」たちのライブ「元気です!西成!!」に参加して来ました。今年で4回目だそうです。昨年と同じ2月中旬に、会場も同じ西成区民ホールでありました。出演者も「SHINGO★西成」を始め、「ベリーグッドマン」や「まちゅこけ」、沖縄県人会「でいごの会」等、ほとんど昨年と同じでした。残念ながら、今年は主催者から「動画等をネットに流すのは遠慮してほしい」旨の依頼がありましたので、今回はブログ掲載用の写真もほとんど撮っていません。その代わりに、ライブで謳われた曲と同じ物をYouTubeから拾い出して下記に貼り付けておきますので、それでライブの雰囲気を堪能して下さい。
SHINGO☆西成 アメ村三角公園02
2012年10月26日に大阪のアメリカ村・三角公園で行われた路上ライブ。以下はその歌詞。
♪歌いたい 叫びたい 会いたいやつには会いたい
My Life 伝えたい 冴えないこともあるけど
逃げない 諦めない 負けない自分に負けない
上手くいかないこともあるけど ええことあるよきっと見つかるよ
心とフトコロが寒いときこそ胸をはれ 心とフトコロが寒いときこそ胸をはれ
行けるならGo!! 見えるならGo!!
見てるだけNo!! 逃げるのはもう
やめにしよう 素直にいよう
今できることからやってみよう 俺は下町焦げたアンパンマン
もう満タンや準備万端や 暗いとこから這い上がった
音楽の力を見せてやろう 音楽が俺の翼になった
だからどこまでも飛んでいける いける Fry今なら言える
出来る出来る俺らは出来る
心とフトコロが寒いときこそ胸をはれ 心とフトコロが寒いときこそ胸をはれ
負けない一心でやってきた でも上には上がいるんやね
でも続けることから始めよう 気付いてくれる人いるんやね
要らないもんは捨てましょう 軽くなったらまた会いましょう
やるべきことをやってたらな なるようになるいつか春になる
欲しいもん自分で手に入れる 覚悟してるならほな試そうや
ほんま長い旅になりそうやな いつか会えるかなトムソーヤ
毎度! 元気? バイバイ ほなな 言葉少なくていい
気持ち伝わればいい Every Thing Gonna
Be All Light Every Thing Gonna
Be All Light
今日も学校仕事に向かう 自分を抑えて時間を使う
1円に泣き1円に笑う また請求書 また金払う
金かねカネの世の中で 金だけにこだわっていたら負け
金が人を狂わせている 仲間も手を震わせている
泣いてばかりじゃ音がズレる 死は平等に訪れるから
死ぬのは怖くは無いねん でも生きていくのが怖い日がある
生活の安定を求めて 気持ちが不安定もあるって
1回きりの人生やもん かけてみよ自分の可能性!
心とフトコロが寒いときこそ胸をはれ 心とフトコロが寒いときこそ胸をはれ♪(以上)
しかし、その「元気です!西成!!」ライブの冒頭で、いきなりあの橋下徹・大阪市長の顔がモニターに映し出され、公務員コンビの「安定志向」を使っての西成プロモーションビデオが流されたのにはびっくり!これが昨年との大きな違いです。ビデオの内容も、「”西成は怖い”などの”風評被害”を無くす為に、西成が”人情の街”である事をアピールしていこう!」というものでした。これで一気に興ざめ。実際に、観客の一部からもブーイングの声が上がっていました。
でも、それでもライブの内容そのものは最高でした。「文房具のコンパスを逆さにすればピースマークに、一人一人がコンパスになろう」との「ベリーグッドマン」からの呼びかけや、その後の「SHINGO★西成」による「心と懐(ふところ)が寒い時ほど胸を張れ」「心の中の段差なんて俺らが平らにしていこう」との言葉には、今も胸にジンと来るものがあります。最後の、障害者も参加する「チーム・バイアフリー」との「明日があるさ」の大合唱の場面では、観客も全員総立ちになって歌っていました。
だからこそ余計に、その合間に入る行政サイドの「人権啓発」ビデオが、ライブの雰囲気と全然マッチせず、シラケムードが会場全体に漂っていたのが非常に残念でした。しかも、その内容たるや、ことごとく「お説教」調のものばかり。
人権の大切さをアピールするなら、「親が子供のメールをのぞき見するな」などの「お説教」よりも、もっと取り上げるべき事が一杯あるはずです。ブラック企業による人権侵害とか、秘密保護法(表現の自由・知る権利)、集団的自衛権(平和に生きる権利)の問題とか。特に西成では、生活保護や貧困ビジネスの問題なぞ、真っ先に取り上げるべきではないでしょうか。もっとも、お役所の手によるPRビデオなので、余りそういう「自分たちの汚点」については触れたくないのでしょうが。それでも「食うに困ったらどこに救いを求めたら良いか」とか、「生活保護の権利や意義、その申請の仕方」や「労働基準法の内容や違反告発の仕方」程度の内容ぐらいは、今のお役所でもやる気さえあれば直ぐ作れるはずです。
・橋下市長 女性公務員コンビPVに起用(デイリースポーツ)
http://www.daily.co.jp/newsflash/gossip/2013/02/07/0005725962.shtml
この新聞記事で取り上げられているのが女性公務員二人組のお笑いユニット「安定志向」。
これなら、ライブ会場隣の会議室で同じ時間に開催されていた「にしなり写真展・人権パネル展」の方が、まだよっぽどマシです。この写真・パネル展も「風評被害防止」が目的のようですが、それでも監視カメラによる住民監視や、散水栓設置や公園封鎖によるホームレス排除の実態が、それなりによく分かる形で展示されていましたから。
しかし、ただそれだけで「西成区役所よう頑張っとる」と評価する訳にはいきません。西成区は生活保護世帯が区全体の4分の1を占め、最近は国からの締め付けも厳しいので、何とか生活保護を削減しようと躍起となっています。でも、本当に削減しようとするなら、それに代わる教育・福祉支援策が不可欠のはずですが、実際はそれもせずに、ひたすら削減だけに走っている様です。これでは、折角のこの写真展も、「ただのガス抜きだ」と言われても仕方ないでしょう。






その写真・パネルの中でも、上記「西成区で起こった差別事象」の展示にはさすがにびっくり。ここに掲げられているのは、昨年の「元気です!西成!!」ライブの後に回収されたアンケート用紙ですが、ライブとは何の関係もない「在日朝鮮人の通名」を貶める書き殴りで埋め尽くされています。これには、さすがにお役所としても見過ごす事は出来なかったのでしょう。通名(創氏改名)が、植民地時代に日本によって強制され、それが今も尾を引いている事や、それをあたかも朝鮮人の責任であるかのように誤認し、「犯罪の温床」だと言い募る事が、いかに差別を助長するか。その簡単な説明書きが、横に掲げられたパネルに書かれていました。


写真・パネル展示の中には上記の「にしなりアートプロジェクト」に関するものもありました。このプロジェクトは、何かと暗いイメージの西成・あいりん地区を、明るい色の塗装を建物の壁やシャッターなどに施す事で変えていこうというものです。それも住民や地域のNPOが参加する形で。既に南海電鉄の高架下や萩之茶屋商店街の一角には、暴走族のスプレー落書きとも違う、その様な塗装が施された箇所が見られます。
この写真展や「元気です!西成!!」ライブ、「にしなりアートプロジェクト」も、橋下市長が進める「大阪都構想」と連動した「西成特区構想」の一環として行われているものです。それで「元気です!西成!!」の入場料も無料だったのですね。
「西成特区構想」については、まだその全体像が明らかになっていません。大阪市の計画によると、子育て世代の転入や外国人観光客の誘致を進める事で、西成のイメージアップを図るもののようです。
でも、実際には、今現に住んでいる高齢者・日雇い労務者・生活保護受給者を脇において、いくらそんな事をしても住民には何のメリットもない。住民にとってはイメージ戦略よりも今日明日の生活の方が大事だ。今のままでは住民切捨てにもなりかねない…。そういう反対意見も多いようです。
・西成特区構想のシンポジウムで「意味ないやろ」とヤジ怒号飛ぶ(NEWSポストセブン)
http://www.news-postseven.com/archives/20120904_140824.html
・西成特区シンポ:週刊ポストのねつ造記事を批判する(鈴木亘のブログ)
http://blogs.yahoo.co.jp/kqsmr859/36778057.html
・週刊ポストは捏造記事か? ─ 動画で確認できる事実もありますよ(ニュースの社会科学的な裏側)
http://www.anlyznews.com/2012/09/blog-post_2740.html
・西成特区構想と「アートプロジェクト」批判(人民新聞)
http://www.jimmin.com/htmldoc/152902.htm
・【松ゼミWalker vol.149】SHINGO☆西成さんらと西成アート回廊プロジェクトを!(阪南大学)
http://www.hannan-u.ac.jp/doctor/tourism/matsumura/mrrf43000001lbbh.html
実は私も、この「西成特区構想」の中身については、まだよく分かっていません。だから、当該構想に対する評価はここでは差し控えますが、折角「SHINGO★西成」のライブを楽しもうとやって来たのに、取って付けた様な「人権啓発」ビデオや、橋下徹の宣伝を一方的にされたのでは堪ったものではありません。私は、あくまで音楽を楽しみに来たのであって、橋下の応援に来たのではありません。