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路面電車の良さを何故もっとアピールしないのか?

2015年02月27日 21時53分49秒 | 身辺雑記・ちょいまじ鉄ネタ

 先日の休みに「堺トラム」に乗って来ました。「堺トラム」(正式名称:1001型)と言うのは、大阪の阪堺電気軌道(阪堺電車)を走る低床式の路面電車です。地元の堺市と国からの補助金によって2013年に導入されました。乗降口に段差がないので車椅子の方でも介添えなしに乗り降り出来ます。3車体連接の固定編成で、メタリック仕様の車体に緑色カラーが入った「茶々」(左上写真)、同じく紫色カラー入りの「紫おん(しおん)」の2編成が現在走っています。今年はそれに加え、青色カラー入りの「青らん(せいらん)」もデビューする予定です。それぞれの色は千利休(茶々)、与謝野晶子(紫色を好んだ)、かつて賑わった海水浴場(青)をイメージしたものです。



 堺トラムは上町線の天王寺駅前から阪堺線の終点・浜寺駅前まで、平日上下合わせて20便、土・休日は同じく17便で運行されています。どの電車が堺トラムなのかは、駅や会社HPの時刻表で確認できます。住吉以北の阪堺線と上町線のみの区間には走っていません。私が乗ったのは平日の午前10時半・浜寺駅前発の天王寺駅前行きです。
 座席は従来のロングシートだけでなくクロスシートもあります。運賃の支払いも、今までの現金を運賃投入箱に入れるやり方だけでなく、IC乗車券での支払いにも対応できるようになっています。 


石津北停留所の上り(天王寺駅前・恵美須町方面行き)ホーム


同じく下り(浜寺駅前方面行き)ホーム


石津北停留所開設のポスターと停留所の位置

 阪堺電車では、この「堺トラム」以外にも、様々な利用促進策が講じられてます。この2月に新たに開業した停留所「石津北」もその一つです。阪堺線の石津と東湊の間は約1.3キロもあり、地元からも新駅設置の要望が出されていました。今回新設された石津北停留所は、前述両駅間の丁度中間ぐらいにあり、幹線道路(泉北1号線)の踏切を挟んで斜め向かいに上下ホームが相対する形となっています。どちらのホームにも、阪堺電車の停留所では初めて身障者用のスロープが設けられるようになりました。



 その一方で、上町線と分岐する住吉停留所から終点・恵美須町までの阪堺線の区間は、昨年3月のダイヤ改正で大幅に便数が削減されました。それまでラッシュ時に残っていた浜寺駅前発・恵美須町行きのダイヤもなくなり、全て我孫子道発着になってしまいました。堺市内から恵美須町に出るには、全て途中の我孫子道で乗り換えなければなりません。運転間隔も、それまでの12分間隔から、ラッシュ時でも1時間に4本(12~20分間隔)、日中は同じく3本(12~24分間隔)に、更に21時以降は1時間に1本しかない(40~50分間隔)時間帯も発生するまでになりました。
 40~50分間隔となると、もはや地方ローカル線並みの運行ダイヤです。大都市の路面電車がこんなダイヤで走っていたら、更に客離れが加速するのではないでしょうか。折角、JR環状線との乗換駅の停留場名を、旧町名由来の南霞町(みなみかすみちょう)から「新今宮駅前」に変更して、名実ともに乗換駅である事をアピールしようとしても、肝心のダイヤが大幅削減では何の意味もありません。



 しかも、上町線終点の住吉公園停留所に至っては、朝のラッシュ時だけしか使用されなくなってしまいました。この停留所には1日5本しか電車がやって来ません。午前8時24分(土・休日は8時32分)に「終電」が出た後はロープを張って閉鎖されてしまうようになりました。
 この停留所は南海本線住吉大社駅とも繋がっており、正月三が日の初詣期間中はどちらも大混雑するのですが、それ以外のオフシーズンは閑散としているので、この様な思い切ったリストラ策に打って出たのでしょう。
 しかし、輸送量や電車のスピードではJRや大手私鉄とは勝負にならない路面電車が、唯一優位に立てるのが「いつでも気軽に待たずに乗れる」点なのに、その唯一の利点をみすみす放棄してしまう様な事をして、一体どうするのでしょうか。この停留所は、阪堺線・上町線分岐点の住吉停留所の直ぐ横にあり、回送車両の待避線として使う事も出来るのに。

 阪堺電車は、元々は新世界や住吉大社と郊外の大浜・浜寺海水浴場を結ぶ目的で敷設されたものですが、今はもう全線通しで乗る客なんてほとんどいません。私の様な物好きな鉄道ファンぐらいです。だって、郊外の浜寺から大阪市内の難波・日本橋や天王寺に出るだけなら、わざわざこんな路面電車になぞ乗らなくても、ほとんど並行して走る南海本線を利用した方がはるかに便利です。たとえ、運賃が倍近くかかり、新今宮でわざわざJR環状線に乗り換えなければならないとしても。移動時間も倍近くかかるのですから。

 ちなみに、阪堺電車・南海・JRのHPで所要時間と運賃を割り出して比較してみたら、下記の結果になりました。所要時間は平日午前7時台での比較です。

(浜寺・天王寺間での運賃・時間比較)
・使用経路:阪堺は浜寺駅前―天王寺駅前、南海+JRは浜寺公園―新今宮―天王寺。
・所要時間:阪堺45分、南海+JR20~30分で、阪堺電車の方が15~25分遅い
 例:浜寺公園7:01発(普通電車)堺7:09着7:12発(空港急行)新今宮7:19着(JR乗換)7:26発(環状線内回り普通電車)天王寺7:28着
・大人普通運賃:全区間均一210円、南海+JR450円(南海330円、JR120円)で、阪堺電車の方が240円安い
・一ヶ月通勤定期運賃:阪堺9890円、南海+JR16630円(南海12740円、JR3890円)で、阪堺電車の方が6740円安い

 確かに、運賃ベースで比較すると、阪堺電車の方が他社線への乗り換えが無い分、メチャクチャお得です。通勤定期なぞ、阪堺電車を利用した方が月6千円以上も安くなるのですから。私も思わず阪堺電車に乗り換えようかと一瞬思いました。
 でも、南海とJRでは20分少々しかかからないのに、阪堺電車では45分もかかるとなると、果たしてどうでしょうか。寝坊した時や、いつもより早く出勤しなければならない時や、逆に残業や職場の飲み会で遅くなった時の事も考えると・・・ちょっと微妙ですね。阪堺電車は、20時を過ぎるとローカル線並みのダイヤになっちゃうんですから。そもそも、私の今の勤め先は朝7時から仕事なので、阪堺電車のダイヤでは始発に乗っても間に合いません。


阪堺電気軌道(全線)輸送人員の推移 1981年年度24900千人→2008年度7571千人(27年間で約7割減少)


輸送密度(1日当たりの区間内平均輸送人員)の推移 1985年→2009年
堺市内 4486人→1627人(約65%減) 大阪市内 10707人→5291人(約50%減)

 阪堺電車の運賃が安いのも、堺市等からの補助金のおかげです。利用者にとっては大助かりですが、毎年2億円からの赤字を出しているのに、いつまでも安売りだけに頼る訳にはいかないでしょう。かと言って、南海やJRとスピードで勝負するのも、元は路面電車なので到底無理な話です。
 以前、阪堺電車について取り上げた時にも言及した事ですが、阪堺電車の利用の落ち込みは、堺市内でより顕著に出ています。大阪市内から遠い分、所要時間の長さがネックとなって、並行路線の南海本線やJR阪和線に利用が流れてしまうのです。(上図参照、出典元は2010年の阪堺電車資料
 その一方で、上町線は今でも黒字です。今でも6分間隔で運行し、天王寺付近では車内は大混雑となります。それは、上町線は阪堺線とは違い、他に競合する路線も無いし、市街地の空洞化もそんなに進んでいないからです。沿線は高級住宅街の帝塚山(てづかやま)や文教地区の北畠です。沿線が下町で、商店街も寂れる一方の阪堺線とは正に対照的です。

 阪堺線も、昔は今の上町線の様に賑わっていました。それが長年の不景気や少子高齢化の進展によって、ここまで寂れてしまったのですが、だからと言って、手をこまねいている訳にもいきません。今更、南海やJRと張り合っても、スピードでは勝負にならないのですから、他の分野で勝負する他ありません。
 南海やJRには無くて阪堺電車にだけ在る物は何か。それが「乗りやすさ」ではないでしょうか。「いつでも気軽に待たずに乗れる」という、路面電車ならではの良さをアピールする事こそが、もっとも重要な点ではないでしょうか。

 そういう意味では、運賃を安く抑え、低床式車両「堺トラム」の導入や「石津北」停留所の新設に踏み切り、旧町名由来の「南霞町」から「新今宮駅前」への停留所名変更で乗換の利便性をアピールした事については、高く評価出来ます。しかし、折角の「堺トラム」も一部の運用に限られ、バイアフリー仕様も新設の停留所一ヶ所のみでは、まだまだ「乗りやすい」とは言えないでしょう。安全地帯にスロープを付けるだけなら、そんなに難しい話ではないはずです。他の停留所についても早急にバイアフリー化を推進してもらいたいと思います。

 その一方で、阪堺線住吉以北のダイヤ大幅削減や、住吉公園停留所の日中閉鎖については、「乗りやすさ」を放棄するものでしかないと思います。住吉以北も赤字基調なのは堺市内と同じですが、むしろ赤字幅は堺市内よりも少なかったはずです。大阪市内への所要時間については、堺市内ほど南海やJRに水をあけられていた訳ではありません。だから、阪堺線一部廃止の話が出た時も、その対象はあくまで堺市内区間だけでした。それが、堺市が阪堺電車の存続支援に乗り出してきた途端に、そのしわ寄せを一転して住吉以北の利用者になすりつけるのでは、企業エゴ以外の何物でもないと思います。堺市とタイアップして、地元に企業や学校を積極的に誘致し、それを住吉以北の利用者にも還元するぐらいでないと、乗客減少に歯止めをかける事は出来ないのではないでしょうか。
コメント (2)
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