諸般の事情でブログ更新が滞っていました。今から大車輪でたまった原稿を書き上げていきます。(何か作家みたいな物言いですが…)
まずは3月16日にあった大阪都構想に関する学習会の参加報告から。当日13時半から大阪・京橋のパルコープという生協の本部で、「都島のまちづくりと大阪都構想を考えるつどい」という催しがありました。私は京橋なんて普段余り行かないので、当初は別に参加する気はありませんでした。しかし、私の加入する地域労組の事務所も京橋にある関係で、私の所にも案内のメールが来たのと、私もかつて大阪の別の生協に勤めていた関係で、パルの生協本部も一度見てみたかったので、一度行ってみようかという事で参加しました。
生協本部の会場ホールには開演の少し前に着く事が出来ました。メールでは参加費用の500円は労組から出る事になっていましたが、受付の人には伝わっていなかったようで、お金を払って代わりに領収書を切って貰いました。私の労組もたまたま事務所が京橋にあるというだけで、生協とはそんなに深くつながりがある訳ではないので、お金についてはそんなに気になりませんでしたが。開会の司会をパルコープ理事の藤永延代さんが行いました。藤永さんの名前は生協関係や「行政見張り番」などの市民運動の分野でも聞いた事はありましたが、実際にお目にかかるのはこれが初めてでした。生協理事という事で学者肌の冷たいイメージを想像していましたが、素顔は「大阪のオバちゃん」そのもので。まるでハイヒール・モモコみたいな感じの、ヒョウ柄のワンピースを着せて阪神タイガースの応援なんかさせたらとっても良く似合いそうな人でした。
まず本題の大阪都構想の話に入る前に、京橋のある都島区の現状についての報告が幾つかありました。地図で見ても分かるように、都島区は淀川から大川(旧淀川)が分かれる分岐点にあります。昔から水害の常襲地帯で、有名な毛馬の閘門(こうもん)も水害防止の為に明治時代に造られました。それは今も変わらず、しかも大川沿いを中心に次々と高層マンションが造成された為に、雨が降る度に下水があふれるようになってしまいました。昨年9月16日の大雨では、淀川河川敷の公衆トイレも流されました。広域避難場所に指定されている所でもこの有様です。
しかも、橋下市政になってからは保育所の民営化もどんどん推進され、園児が遊び回る庭もないのに70~80名も収容予定の民間保育所のビルが区内の友淵に造られようとしています。橋下やそれを支持するホリエモンみたいな奴らにとっては、園児もただの金ヅルでしかないようです。
都島区は他にも色々な問題を抱えている事も、この学習会で初めて知りました。例えば淀川左岸線の延伸問題もその一つです。関空や南港へのアクセスを強める為に、阪神高速道路の淀川左岸線を門真まで延伸させて第二京阪道路と繋ごうという計画が今進められています。その計画道路がちょうど都島区を通るのですが、予想される排気ガスの量が半端じゃないのだと。計画では、都島区内は地下で通し、高さ40メートルもの排気塔を1キロごとに造って排気ガスを逃す予定なのだそうですが、そんな事になれば排気塔から半径800メートル以内が全て排気ガスに汚染されてしまいます。今、中国で問題になっているPM2.5に都島も汚染されるようになってしまいます。
その他の福祉施設や区役所の窓口業務についても、正規の公務員はどんどん削減され、代わりに月手取り13万円程度の非正規で有期雇用のパート・アルバイトだけとなり、どの窓口もベテランは1人いるかいないかで、その人がいなくなれば外部から応援を呼ばないともはや業務が回らない現状が報告されました。
その一方で、赤バスは廃止されたがそれに代わる市バス路線の増設を勝ち取った、ただやり込められているだけではないという力強い報告もありました。
その後、5分程度の休憩を挟んで15時から立命館大学の森裕之教授による大阪都構想についての講演が行われました。大学教授の講演という事で、さぞかし難しい話をされるのではないかと身構えていましたが、実際は全然違いました。難しい話を庶民の語り口で、箇条書きで簡潔に書かれたレジュメと映像も交えて説明して貰い、強行軍のスケジュールにも関わらず非常に楽しく聞けました。
大阪都構想というのは、表向きの目的こそ「大阪府と大阪市を一本化して二重行政の無駄をなくす」と言うものですが、本当は大阪市から奪った金で「大阪都」(元の大阪府)が関空開発や湾岸開発、カジノ誘致、リニア建設などの乱開発を推し進め、福祉や教育はその残りで「下請け」の特別区や民間業者に丸投げという「やらずぼったくり」の構想に他なりません。橋下はこの前のダブル選挙でも「大阪市はなくしません、今の24区もそのまま残します」と言っていましたが、そんなの大嘘です。それは今の東京都を見れば一目瞭然。昔はあった東京市は今や跡形もありませんでしょう。
その結果、大阪都の特別区には、今の東京のように区議会も区役所も置かなければならなくなった。この建物を立てる金は一体どこから調達するのか。これでは「二重行政」どころか「多重行政」でしかない。それを誤魔化そうと、今度は今の庁舎を分散利用すると言いだした。そんな事をされたら住民は、戸籍申請は旧A区役所、年金や保健関係は旧B区役所、生活保護は旧C区役所とたらい回しにされかねない。コンピューターのシステムをどうするかといった問題もある。今まで通り統一したシステムで運用するなら、何もわざわざ大阪都にする必要なんて全然ない。
しかも、大阪は人口規模も東京の5分の1しかなく、財源も東京都とは比べ物にならないほど少ない。当初は「都構想で4000億円も浮く」と言っていたのも蓋を開ければ900億だけ。それも都構想とは本来無関係の地下鉄・水道の民営化によるものが殆どで、それを除くと実際は僅か9億との試算も。その一方で出費は多重行政でうなぎ上りに。第三セクターの大阪府都市開発(略称OTK、泉北高速鉄道の経営主体)を外国のハゲタカファンドに叩き売ろうとしたムチャクチャも、ひとえにこの出費を粉飾決算で埋めようとしたからに他ならない。
だから、「新しい特別区の区割りをどうするか」といった形で話が具体的に煮詰まって来れば来るほど、ますますボロが出てきて、今まで橋下の言いなりだった自民党や公明党も、流石にこのままでは拙いと、橋下と袂を分かつ様になったのでしょう。
出てきた区割り案も、大企業のオフィスが集中し税収も多い今の北区と中央区をどこが手に入れるか、厄介者の西成区をどこに押し付けるかといった、数合わせとカネ勘定だけで無理やりこじつけたものでしかない。上図の「最有力案」も、橋下がその観点だけで法定協議会に一方的に押し付けたものでしかない。住民の暮らしをどうするかなんてハナから考えていない。そんな話がうまくまとまる訳がない。それを橋下は「議会が審議を意図的に遅らせている」と逆切れして、出直し市長選の破れかぶれの茶番に打って出てきたのです。
そして橋下市長は、「多重行政」「住民たらい回し」の批判や懸念に対して、今度は他の自治体との「水平連携」の実施や「新たな広域自治体」の設置で対応すると言いだしました。今でも消防などは複数の自治体で共同事務組合を作ってそこで運営する仕組みになっていますが、それをもっと大規模にしようとしているのです。大阪市は規模が大きいので、「新たな広域自治体」も一杯必要になります。一体「何重行政」になる事やら。
そうして始めた保険や年金、徴税などの事務も、決して公選区長の思い通りにはいかない。国保料などの料金も、格差是正という名目である程度の線に抑えられるからです。格差是正と言えば聞こえが良いが、元々の発想が「数合わせとカネ勘定」でしかないので、一律「値段ばかり高く質は最悪」という事にしかならない。大阪都と特別区の間だけでなく、特別区同士でも限られた財源を巡って血みどろの争いになる可能性が高い。貧乏区の区民は永遠に差別され、金持ち区の区民もこんな奴らにいつまでも関わってはいられないと、大阪都から独立宣言すらしかねない。道を歩いていても「お前、どこの区から来た」と脅されかねない。
これが果たしてまともな地方自治と言えるのか。これの一体どこが民主主義なのか。そもそも今回の出直し市長選にしてから、一見民意を尊重しているかのように見せかけ、実際は今まで述べた自分の不始末を誤魔化す為に利用しているに過ぎない。本当に民意や民主主義を尊重するなら、こんな自分勝手な都合だけで選挙なぞ行わない。橋下にとっては民意も民主主義も有権者も所詮は「使い捨て」の道具でしかないのだ。こんな橋下の欲望を満たす為だけの「大阪都構想」なんぞ潰してしまわなければならない。でないと大阪全体が世界の物笑い、後世の物笑いにされてしまう。この学習会に参加してその感が更に強まりました。