アフガン・イラク・北朝鮮と日本

黙って野垂れ死ぬな やられたらやり返せ 万国のプレカリアート団結せよ!

転載:内なるハシズムと闘う(Afternoon Cafe)

2011年11月29日 00時47分27秒 | 都構想・IRカジノ反対!
ファイト!by 中島みゆき


大阪だけではなく日本全体が長い間閉塞感や不安に包まれています。するとその苦しさから、他を攻撃して溜飲を下げたい、今ある既存のものを何もかもぶち壊して欲しい、という衝動が芽生えます。
問題解決にむけて自分の頭で考え自己決定する「自由」というのは産みの苦しみが伴いますから、特に社会が閉塞感に包まれる時代では、それを捨てて強大なリーダーシップに盲従することで安心感を得たいという逃避的欲求が生まれます。
そうすると彗星のように英雄が現れ、一発大逆転の劇的変化を望むようになり、それを実現してくれそうな強い人物に全てを委ねたくなります。

小泉氏しかり、石原氏しかり。もちろん橋下氏しかり。
高圧的で断定的な態度は民衆をぐいぐいひっぱてくれる頼もしいリーダーシップとうつります。そういう人に何もかも丸投げして依存したくなるのです。心酔が進めばついには「独裁が必要」という明らかに民主主義を真っ向から否定する言動さえ、頼もしいリーダーシップとされてしまいます。

「強いリーダー」は民衆のガス抜きとなるスケープゴートを提供して憎悪を煽り、自分への支持を取り付けるという方法をとります。
橋下氏は‘働く意欲のない怠惰な’生活保護受給者、ホームレス、といった社会的弱者、あるいは‘身分保障に甘え税金から高い給料を泥棒していく公務員’をはじめとする‘既得権者’なる者を敵と設定して過激な言葉で攻撃しました。ついには大阪府が苦しいのは大阪市があるせいだ、とまで言いだす始末。
白黒はっきり、単純でわかりやすいですが、それは大概プロパガンダ。
事実とは違うイメージ像を作り上げて憎悪を煽る手口は、ヒトラーがユダヤ人を劣悪な人種だと憎悪を煽ったのと同じです。

公務員や社会的弱者を攻撃すれば気分は良いかもしれませんが、それで自分たちの暮らしが向上するわけではありません。問題は何も解決せず、ずっと残り続けます。それどころか事態はもっとひどくなっていきます。
だって彼が高圧的な態度で実行したことは、こちらを見ればわかるように、福祉や医療や教育や文化を削り、公的サービスを激貧にし、市民生活をより圧迫することばかりでした。
他方で大企業、ゼネコンには至れり尽くせりの大甘。

橋下氏が知事になって自分の暮らしにどんな良いことがあったのか、具体的に挙げてみて欲しいです。そんなものは無いはずです(しかしその単純な事実に意外に気づかないものです)

結局橋下氏を支持しても、得をして笑うのは現在の強者。弱者を苦しめる現在の体制はぶち壊されるどころか逆により強固に維持されただけ。要するに自分で自分の首を絞めているのです。
こういうのを揶揄する有名な言葉が「(自分を殺す)肉屋を熱烈に支持する豚」ですね。

しかし、わかりやすいワンフレーズを発する強い者を盲信する快感、大義名分を与えられて誰かを排除し攻撃するのが正当化される快感にあらがうのは難しいものです。
かくして、
「格差を広げ、セイフティネットを破壊し、冷徹な自己責任論が横行する社会を継続させるのは簡単だ。今よりもっと格差を広げ、セイフティネットを破壊する政策をとればよい。そうすれば人々に自己責任論がもっと浸透し、草の根から勝手に右傾化してくれる。」(サイドカラムに書いてある言葉です)
という一種の悪循環というかファシズム強化のスパイラルに入ってしまいます。

進んだ民主主義を謳ったワイマール憲法の下で、民衆は民主主義を破壊するナチスを熱狂的に支持し、自ら民主主義を破壊しました。
民主主義を破壊するファシズムは、民衆の支持を得て民主主義の手続きを踏んで生まれるのです。
橋下氏がが錦の旗のように「民意」を乱発するのは、まさに「民意」によって「民主主義」を破壊するというプロセスをたどっている事の表れですね。

これらは、何故民主主義下で民主主義を否定する独裁が生まれたかを研究したE・フロムのあまりにも有名な著書「自由からの逃走」にすべて書いてあることで、社会学ではスタンダードです。
この著書は人類が再び自分たちの手で民主主義を破壊するファシズムを呼び寄せないようにするための必読の書です。民主主義教育の一環として社会科の必修科目にしてもいいくらいだと思います。
それが歴史に学ぶと言うことです。

いつの時代も大衆をファシズムに煽動する手口は同じ。
なのに同じ手口に何度も騙されるのは過去に学んでいないからです。

この「自由からの逃走」について、過去幾度かエントリーの中で触れてきました
●http://akiharahaduki.blog31.fc2.com/blog-entry-497.html

●http://akiharahaduki.blog31.fc2.com/blog-entry-614.html

●http://akiharahaduki.blog31.fc2.com/blog-entry-419.html
などなど。

どうしてこのファシズム強化のスパイラルから抜け出せないか、ブログ「アフガン・イラク・北朝鮮と日本」が明確に指摘してくださっています。

(注:以下引用)
ポピュリズム(大衆扇動)やファシズムを克服するのが何故難しいかというと、それらが「楽したい」「自分だけ得したい」とか「自分だけは差別されたくない」などの大衆の劣情に媚び阿るからです。だから、橋下のようなポピュリスト・ファシストと戦うには、自分の中にあるそういう劣情をも克服しなければならないからです。
(http://goo.gl/65pCWより)(引用終了)

橋下氏は、弱い者イジメをしたい醜い心を「既得権者と闘う」というお題目で正当化し、堂々と実現してくれます。それを弱い者イジメだと認めるのは自分の醜さを認めることだから、できれば認めたくない、正当化したい。
それに思考停止になって強い他者に依存し陶酔するのは、楽だし安心感、一体感があって気持ちいい。
ポピュリズム、ファシズムのスパイラルを断ち切るのが難しいのは、一人一人がそういう自分の心と闘わねばならないからです。

ファシズムが支持されるのは民衆の中に「内なるファシズム」があるから。
ファシズムを生まない闘いは、権力者との戦いではなく、実は自分の内なるファシズムとの闘いなのだと思います。

橋下氏に投票しないという選択、それは自分の内なるハシズム~弱い者イジメして溜飲下げたかったり、自分で考えることを放棄して誰かに丸投げ依存したくなる気持ち~と闘うということではないでしょうか

民主主義云々という政治イデオロギーは苦手、と言う人は、自分の生活利益に直結させて考えても彼を支持する理由はないと思います。だって橋下氏を支持すれば、かえって自分の暮らしは苦しくなってしまうからです。彼は一部の富裕層を除いた一般の市民や社会的弱者の生活をより苦しくする政策(都構想も含め)しかしないし、実際してこなかった新自由主義の申し子である、ということを見抜くことです。

ヒトラーやゲッペルスは次のような趣旨の言葉を多く残しています。

(注:以下引用)
大衆の心理は、中途半端で軟弱なものには反応が鈍い。女性に似ている。
彼女らの心は、根拠と理性によって決まることはなく
足らざるを補ってくれる力に対する、名状しがたい憧れによって動く。

大衆は権威主義的である。大衆は強い権力に支配されたがっている。

大衆は理性ではなく感情で動く

大衆は単純化と断定を好む

大衆は小さな嘘より大きな嘘に騙されやすい

嘘も100回繰り返せば本当になる(都構想なんて嘘とごまかしだらけです)

大衆は無理解ですぐ忘れてしまう。だから理性で説得するのではなく、演説の内容は最低レベルの知的水準の者がわかるぐらい単純化されなければならない

一般市民は我々が想像する以上に原始的である。したがってプロパガンダは常に単純な繰り返しでなければならない。諸問題を簡単な言葉に置き換え、識者の反対などものともせずに、その言葉を簡明な形で繰り返し繰り返し主張する者こそ、世論に影響を与えるという最終的な結果を残すことができる
(引用終了)

橋下氏の言動の特徴に思い当たること大ありですね。
http://akiharahaduki.blog31.fc2.com/?no=816
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3 コメント

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おそくなってすみません (秋原葉月)
2011-11-30 21:00:05
私からのトラバをご紹介いただきありがとうございます。

選挙の結果は残念なことになりました。
今の閉塞感を打破するにはどういう政策がいいのか、答えはネオリベの申し子橋下氏とは逆の「大きな政府」にすることだと思うのですが、せっかく梅田さんが説得力ある明確なビジョンを出しても、なかなか聞く耳を持ってもらえない、という状況が問題です。
いくら正論を言っても聞く耳を持ってもらえないなら話になりません。
人は耳障りの良い聞きたい話しか聞かない、という性質があります。人は正論ではなく情で動く存在だと言うこと。

フロムが社会心理学的アプローチをとったてファシズムの心理を解明したのがもう60年以上前。それ以後社会心理学も発達してきたはずですから、そちらからのアプローチをもっと積極的に試みるべきではないかな、などと愚考したりしました。

プレカリアートさんも色々ご心痛がおありでしょうが、どうぞ無理されませぬよう、
今後ともよろしくお願いいたします。
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敗北を見つめて (あるみさん)
2011-11-29 22:45:07
何らかの形で今回の反ハシズムに関わったプレカリアートさんに対し、何にもしていない私がこうゆうことを書き込むのはおこがましいでしょうが、やはり敗北を敗北と認め、ハシズムよりもっとよいものを分りやすく提起する政治勢力を早急に作らないといかんでしょう。
ということで「敗北主義」まみれの記事をTBいたしました。
返信する
「歴史は繰り返す!」 (バッジ@ネオ・トロツキスト)
2011-11-29 08:40:59
という言い方も、同時に「一度目は悲劇として、しかし二度目は喜劇として」というような文言が続く場合が多いことを軽視しては、それこそファシズムと同根のニヒリズムやペシミズムに陥ってしまうだけでしょうね。
そういう傾向は、左右両極の人こそ特別に自覚すべきかも。
「進歩派」諸氏諸兄によるハシズムへの警鐘乱打を見ていると、ちょっと笑える議論もあります。
対外的にも国内的にも、経済的にも政治的・軍事的にも、21世紀の現代に単純なファシズムの再来など起こりようハズはありません。粗雑なアナロジーは、牧歌的な復古趣味者の専売特許です。
ファシズムは、手法だけでなく内容が問われる政治潮流である以上、不正確なレッテル貼りでは大衆的な説得力も持てないでしょうね。
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