脳機能からみた認知症

エイジングライフ研究所が蓄積してきた、脳機能という物差しからアルツハイマー型認知症を理解し、予防する!

小布施便り―東部地区脳のリフレッシュ教室10周年!

2014年08月20日 | 認知症予防教室

8月1日に小布施に行きました。
いつものように講演会や勉強会も予定されていましたが、すべてに先立って「今年は、東部地区の脳のリフレッシュ教室が10年目になりました。そこで、在宅介護支援センターのスタッフと一緒にお邪魔することになってますから!」と嬉しそうな声で連絡がありました。(写真がまた回転してしまいます…)

P1000182 考えてみれば、小布施町で「『ボケても安心な町』ではなくて『ボケのない町』」を目指して認知症予防活動が始まったのは2000年に入った年だったと思います。
山王島を皮切りに、各地区で教室を立ち上げていったのですが「さしあたり町内全地区で教室ができました」という報告の後、一昨年からは10周年を迎える教室が出てきました。

2012.山王島の教室10周年記念

2013.北部の教室10周年記念

小布施町では、各地区が教室運営にそれぞれの特色を持っています。
東部地区の特徴は、ボランティアさんが支えているということです。

当日も、最強のボランティアトリオが3人参加してくださっていました。

なんとなく、ごく自然に教室が始まります。「じゃあ、最初は歌いましょうか」という声掛けをしてくださいました。

そうすると、手作りのピンク!の表紙の 歌集が開かれます。懐メロ、童謡、新しい歌も。なかなか素敵な歌集でした。

ボランティアさんが、歌う歌を決めるのではなく「さあ、今日は何から歌いましょうか?」と問いかけてくださいます。
これはきっといつも通りの展開なのだろうと思いました。

Nec_1275こういうことは何でもない事のようですが、「自分で決める」ということは前頭葉のためにはとても大切なことなのです。
考えてもみてください。毎月1回の教室でも、10年間にわたって「今日はこれを歌いましょうね」と指示され続けるのと「今日の歌は?」と問いかけられるのとでは、生き方に大きな差が生まれてくることはすぐにわかりますね。

前頭葉は日々の生活の中で、どのように使っていくのかということで、その働きが決まってくるのですから。

歌が決まると、さっとハモニカ伴奏が始まるのです。
伴奏者も歌い手さんたちも手慣れたもの。次々に歌いたい歌を申告しながら楽しい時間が流れます。

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手話を取り入れたり、体操を取り入れたり 、歌うだけでなく同時進行する課題にも楽しみながら取り組んでいますね。

歌は右脳発揮のいいチャンスですが、東部地区のような取り組みだと注意力を分配しないといけないので、前頭葉までも元気になります。
お互いにお互いを思いやるというような様子も、見てとれました。これも前頭葉。

P1000181東部教室、最高齢。もうすぐ90歳!

毎回30分以上かけて歩いて教室に参加してくださるそうです。
「楽しみなんですよ!
それにこれを見てください」とわざわざ私に声をかけてきてくださいました。

東部地区では、ボランティアさんたちが手芸 教室も取り入れてくださってます。
(ハモニカ伴奏の方の胸元のブローチも作品ですって。在宅介護支援センターのスタッフの胸も飾っていました)

「このテッシュ入れを作るとき、『好きな布を選んでください』って言われて、こんないいのがもらえました!
一番きれいなのが手に入って、ほんとにうれしかった」とこの笑顔。

席の向こう側からは、「私のはこれ」とシックな作品が次々見せられます。
「自分が選んだ布で、自分が作った作品」ですから、みんなとっても満足できているのですね。

話はちょっと飛びますが、手前においしそうなものがたくさんありますね。
だいたいいつも、だれが当番というのではなく、漬物や手作りお菓子や果物や時にはちょっとしたお料理まで集まるのだそうです。お茶の時間のお楽しみですって。

これは小布施町の色々なところで見られることなのですが、ちょっと質問してみました。
「負担にはならないのですか?」とたんにお返事がいくつも!

「家にあるものですから」
「みんなと食べるとおいしいし」
「昔の料理でも喜んでくれる」
「褒められたらうれしい!」
「『教えて』とか言われると、鼻高々」

いい関係ですねえ!!都会ではちょっと考えられないことかもしれません。

P1000178_3話は戻って、歌う曲の選択と言い、布の選択と言い、積極的に「自分」が関与するやり方が続いてきたことに 、ちょっと感動しました。

ボランティアさんたちの配慮、在宅介護支援センターのスタッフの指導が10年間継続してきたということです。
ありがとうございました。

実は東部教室には、男性が1名参加されています。
奥様をなくされて独り身の方です。

「いや、やっぱり一人だと楽しみも変化もないもんだで、教室があってよかったよ。ほとんど欠席なく来てるからね!」

ほんとうに、教室があってよかったですね。

周りから声がかかります。
「私たち、親切にしてあげてるしね」
そしてみんなで爆笑。

在宅介護支援センターのスタッフが言い添えました。

「〇〇さん、脳機能検査の成績よくなってるんだものね!」

そうなのです。これが大切なのですよ。
小布施町で行われている脳のリフレッシュ教室に参加するというような体験は、認知症予防に最も近い道ですが、一般的にはそれで確実に認知症予防ができているかどうかの客観的な裏付けがもらえません。

小布施町では、脳機能検査が常に行われますから「大丈夫!」と太鼓判を押してあげられるというわけです。
もうひとつ。教室の参加期間が長いほど、脳機能がよくなる傾向がはっきりしてきました。
山王島や北部では80%の方たちが、脳機能改善という結果を誇っています。
2010年の結果です。左が山王島。右が北部です。


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