母校の同窓会総会に出席するために、故郷北九州に帰りました。
だいたいは小倉駅近くのホテルに泊まりますが、ネット検索していたら戸畑駅前に築100年という旅館があるという情報を見つけました。
予約をしようと電話を入れたら「部屋は用意できるけど、古くてトイレも別だし、それでいいですか?」との返事。
「もちろん。よろしくお願いします」
角をこのように切り取った建て方からして、珍しく心そそられます。入口を入るとかなり広い玄関ホールです。
よく見ると大鵬、佐田の山の手形も。
チェックイン時のご主人。何と同じ戸畑高校の後輩でした。
玄関に立っただけで、贅沢な作りだとすぐにわかりました。奥にみえる応接コーナーのガラスは波打ってるようで磨き板硝子だと思われました。床は小さなタイルが張り詰められています。天井板のすばらしさ!
「この見事な柱は何の木ですか?」とお訊ねしています。「わからないんです」ですって。
ホールの右手には手の込んだ指物職人さんのお仕事。
広い玄関ホールから二階に続く階段は絨毯敷きになっていましたが、本来はサクラの板だったそうで「ぬか袋で磨かないといけないから、面倒でこうしちゃったんでしょう」確かに階段から続く二階の廊下は見事な風格を醸していました。
廊下の風情。各部屋を独立させた造りで、吟味された材料にもこだわりが感じられ、一つ一つの造作も手が込んでいました。
私が泊めて頂いた部屋の入口です。
前室が4帖だったか、お部屋は格調高いものでした。床の間は違い棚付きの二間の本床です。
床脇の窓の細工もスッキリ端正で素晴らしい。
私はこのようなデザインの障子は見たことがありませんでした。欄間も見事。
トイレは、ちょっと残念なことに近代的なものに作り替えられていましたが、壁には歴史を感じさせられるタイル画が存在感を放っていました。
二室あるトイレの両方とも。見事です。
作者のお孫さんが来られたことがあるそうで「当時、高い評価を受けていた方の作品だということが初めて分かったんです」とご主人が言われました。
トイレ前の廊下です。出窓は何の木でしょうか、みごとな一枚板。そして年代物の火鉢が無造作に置かれていました。
知識のある方が見たら、いくよ旅館は宝の山ではないでしょうか?
維持されることは大変でしょうが、どうにか保存できないものかと思いました。
私の住んでいる伊東市には東海館という旅館を保存して観光の目玉にしている施設があります。温泉旅館と商工業で栄えた町のトップ料亭や旅館として営業したいくよ旅館には差異があることは当たり前でしょうが、大正期~昭和初期の建築物としてどこか共通するものを感じました。
泊めて頂いて本当によかったです。ありがとうございました。