『銘酒居酒屋・赤鬼』赤鬼だより

東京三軒茶屋にある『銘酒居酒屋・赤鬼』のスタッフが、お酒周り、お店周り、そして旬のよしなしごとをトツトツと綴ります。

水無月六月、今月の六品 その1

2012-06-04 14:39:08 | 酒の肴
東京はまだ梅雨入り前の青空もみえる六月朔日から、
「今月の六品」が水無月バージョンになりました。
これからの、蒸し暑さと梅雨寒の混じり合う季節、
お酒を引き立てて口福いっぱいになるような肴を
スタッフめいめいが考え抜き、
工夫をこらしてつくりましたよ。
ぜひぜひ、今月も、召し上がってみてください。

例によってひとつずつ、ご紹介していきます。



「小鰯ぬかみそ炊き」

イワシの栄養価はよく知られるところですが、
血液をサラサラにして頭の働きもよくするというDHA、EPA、
歯や骨のもととなるカルシウム、カルシウムの吸収をよくするビタミンD、
そして良質のたんぱく質などがたっぷり、
毎日でも食べたいような優秀な食材です。
しかし、魚へんに弱いと書くくらい、鮮度が命の魚でもあります。
この時期には梅煮をされるかたも多いでしょうか、
新鮮さと味の工夫が必要で、意外に調理法は単純になりがちです。
その鰯を、ぬかみそで炊いてみました。

丁寧に下拵えをした小鰯を、酒、味醂、醤油で淡く炊き、
最後に糠味噌をいれて汁気がなくなるくらいまで煮あげています。
糠味噌は、昨年から料理長が仕込んで
毎日赤鬼メニューのぬか漬けをつくっている糠床のもの。
だから糠じたいに生姜や唐辛子の風味はもちろん、
熟成された複雑なうまみがよーく乗っているわけです。
青魚独特の生臭みがこの糠によって見事に相殺され、
こっくりとしたうまさに転化されています。

ちょっとした箸休めにも、「あと一杯」のお酒のお供にも。
小イワシならではのしっくり味のしみた小粋な酒肴は、
思わず「んまい!」と唸ること、請け合いです。

(菅作)

水無月六月、今月の六品 その2

2012-06-04 14:24:17 | 酒の肴
「海老とオクラの三杯酢がけ」

蒸し蒸しした時期には、やはりさっぱりした酢のもので
気分もお口もすっきり洗いたくなりますね。
目にもきれいなイタリアンカラー、
この季節にぴったりの、きれいな酢のものをつくってみました。

身が締まりすぎないよう丁寧に下拵えした海老、
緑鮮やかにさっと茹でたオクラ、
こうばしく焼いたエリンギを浸し地につけてなじませ、
お出しする直前に三杯酢をかけています。
プリプリの海老、サクサクだけれど粘り気のあるオクラ、
むちむちした歯ごたえのエリンギ、
歯ごたえのちがう素材の持つ「音」のにぎやかさを
あえかな甘みのきれいな三杯酢がまとめて、
ちょいと粋なアンサンブルにしています。
千鳥酢のかおりたつ、さわやかな一品で、
また一杯、お酒がすすんでしまいそうです。

(竹下作)

水無月六月、今月の六品 その3

2012-06-04 14:05:10 | 酒の肴
「蒸し鶏つくね」

赤鬼の鶏は、おいしい。
そんなふうに言っていただくことが多くなりました。
築地の鶏専門店から仕入れている新鮮で旨い鶏肉は、
定番メニューにも、そしてこの毎月の「六品」にも、
大活躍しています。
今月は、このおいしい鶏と、合鴨とをたたいて、
みんな大好きな「つくね」をつくりました。

素材そのものがフレッシュで旨味たっぷりなので、
その「肉の味」をストレートに活かして
ふんわりと蒸し上げています。
ほろほろと口のなかでほどけるつくねを噛みしめると、
やさしい口当たりの中に力強い鶏の旨さがひろがります。
焼いて締まったものとはまた違った味わいです。
挽き肉のうまさを引き立てる調味料と香味野菜の風味に
合鴨の野性味も加わって奥行き深く、
添えられたゴーヤの浅漬けも、オツなアクセントです。
地味な見た目と裏腹に、細かいところで手をかけられた極上のつくねは、
新酒のころよりも旨みの乗ってきたこのごろのお酒にぴったり。
ぜひ、おためしくださいな。

(中村作)


水無月六月、今月の六品 その4

2012-06-04 13:45:15 | 酒の肴
「タコの小倉煮」

お刺身でも人気の蛸は、シコシコの歯触りと
淡泊なうまみを合わせ持ち、古くから食されてきました。
そのほのかな甘さや歯ごたえは、
日本酒に、とてもよく合いますね。
タンパク質、ミネラル、タウリンなど実は栄養にも富んでいます。
関西では半夏生の日に蛸をたべる風習もあると聞きます。

その蛸を、小豆と煮る「小倉煮」に仕立ててみました。
蛸は血中コレステロールを排出する作用があり、
小豆も利尿作用、解毒作用とビタミンB1B2の豊富さで
身体をきれいにしてくれる効能が。
おいしいだけではなくお酒を飲む身体にやさしい、
優秀な組み合わせなのです。

戻した小豆をコトコトと炊き、
活蛸を加えてさらにゆっくりと炊き上げます。
やわらかく風味良い小倉煮に添えたのは、冬瓜、南瓜、人参。
これまた別々に炊いて添えているという手間のかけようです。
滋味しみわたるこんな肴があれば、
梅雨の夜の一献も極上のひとときになりますよ。

(大内作)



水無月六月、今月の六品 その5

2012-06-04 13:30:31 | 酒の肴
「冷製茶碗蒸し」

冬には大好評をいただいた茶碗蒸し。
今まで赤鬼の狭い厨房では無理なのではと思われていた
幻のメニューでしたが、がんばって、
蒸し器でひとつずつお作りしてお出ししました。
さて、今回はさっぱりと夏向けに、つめたい茶碗蒸しの登場です。
つくったのは、先月末から赤鬼に新しく仲間入りしてくれた
料理人・箕村でございます。
(また、別日に当ブログでご紹介いたしますね。)

蓋をあけるとまずは、きれいな夏野菜のお出迎え。
水茄子やトマトなどの彩りも美しいトッピングです。
つるりと喉越しのいいたまごの地をすくうと、
中には桜海老と椎茸という、それだけでも出汁をとれるような
おいしい具が待ち受けています。
合わせる具材もさることながら、
しっかりと味の根幹を支えているのは
上等の素材で丁寧にとった赤鬼の一番出汁。
夏の吟醸酒にさらりふわりと寄り添うような
すてきなアテが、できました。

(箕村作)



水無月六月、今月の六品 その6

2012-06-04 13:13:05 | 酒の肴
「白い鍋」

毎月の定番の小鍋立ても、いろいろな味と具材の
バリエーションで好評戴いてきましたが、
こんなのは、はじめてですよ。
蓋を取ると白い湯気の下、溶け残る高山山頂の雪のごとく、
また白がふつふつと現れます。
名付けて「白い鍋」でございます。

その名のとおり、入っているのはすべて白いもの。
酒塩で下拵えしたヤリイカと、里芋、蓮根、白ずいき。
鍋出汁でさっと炊いて、仕上げは卵白でとじています。
見た目の白一色とはうらはらに、
シコシコ、サクサク、ほくほくと、
歯ごたえも甘みも異なる具たちの味わいがたのしめます。
あわい出汁の上品さと雲のような白につつまれた
宝箱のようなお鍋です。
夏にごりを一献、行きたくなるかも。

(菅作)