『銘酒居酒屋・赤鬼』赤鬼だより

東京三軒茶屋にある『銘酒居酒屋・赤鬼』のスタッフが、お酒周り、お店周り、そして旬のよしなしごとをトツトツと綴ります。

神無月十月、今月の六品 その1

2012-10-02 10:49:49 | 酒の肴
台風が去って十月がやってきました。
少しずつ深まってゆく秋の風情、
皆さまは如何お過ごしでしょうか?

今月も、心をこめてつくった定例「六品」が
できました。
ぜひぜひ、おためしください!

それではいつものようにひとつずつご紹介していきます。



「とろっと揚げ芋」

まさに秋に旬を迎える里芋は、
薩摩芋やジャガ芋よりもはるかに古く、
縄文時代から、日本人に食べられてきました。
栄養もたっぷりで、独特の粘りの成分は
ムチン(潰瘍予防、肝機能強化)や
ガラクタン(血圧やコレステロール値を下げる)。
ナトリウムの分解を助けるカリウムが豊富で
アミノ酸も多種含み、和食には欠かせない素材です。
(ちなみに、里芋の産地上位には、一位千葉を始め
関東五県が入っています。まさに地産地消の素材なのです)。

ふっくらと炊いた里芋はそれだけでもおいしいのですが、
そこに粉をつけてカラッと揚げ、うまみをぎゅうっと凝縮させ、
さらにきれいな出汁のあんかけにしました。
見た目はシンプルですが、
口に入れればとろとろ~ふわふわ~モチモチ~と、
三重の手間ぶんの複雑な滋味が染み込んできます。
燗もよし、うまみの乗り切った生酒もよし、
お酒のあてには和むこと間違いなしの小鉢です。
思わず「はー」と幸せなためいきを呼ぶ、
無骨な秋の宝石を、ほっこりほくほく、味わってくださいな。

(竹下作)

神無月十月、今月の六品 その2

2012-10-02 10:48:12 | 酒の肴
「炙り秋刀魚の肝味噌和え」

秋の刀の魚と書くとおり、
まさに旬も旬、塩焼きの香りが夕餉時の町なかに漂えば
鼻腔から秋が訪ねてくるような、サンマ。
筆者はいつもこの季節になると、
大岡昇平「サンマが届くから食べに来いよ、武田は青魚好きだろ」
武田泰淳「そうだな、サンマなんか一番うまいな」
という「富士日記」に出てくる作家たちの会話を思い出します。
目黒をはじめ、あちこちで「サンマ祭り」も催される昨今、
肝までしっかり食べられる新鮮な秋刀魚は、庶民のご馳走ですね。

そのサンマにひと手間加え、オツな酒肴に仕立てたのがこの一品。
新鮮で脂の乗ったサンマの皮目をさっと炙って
外はパリパリ中はしっとり、というところをとも和えにしています。
ほろにがい肝を溶いた味噌がサンマの脂によくなじみ、
刺身とも焼魚とも違う、えもいわれぬ食感と妙味が拡がります。
ちょいと秋刀魚をひと切れ、ぐいとお酒をひと口。
このループ、とまらなくなりそうな、
ちょいと危険な(笑)、酒好きにはこたえられないひと品です。

(中村作)

神無月十月、今月の六品 その3

2012-10-02 10:47:07 | 酒の肴
「鶏と秋野菜の黒酢あん」

築地の鶏専門店から毎日仕入れる新鮮な朝締めの鶏肉は、
毎回この「六品」でも登場して大好評。
その鶏のおいしさをぐっと活かしながら
秋の彩りを美しく取り合わせたのが、この一品。
素材はほとんど筑前煮とおなじですが、
料理法によってまったく違うおいしさの、
しかも日本酒にもしっかりと寄り添う肴になりました。

酢豚ならぬ、酢鶏。
素材ごとにしっかりと下拵えして丁寧につくりました。
きれいな出汁といい素材、あんには贅沢に黒酢をたっぷり。
鶏じたいのおいしさは言わずもがなですが、
炒め合わせた蓮根、南瓜、薩摩芋などの根菜も、
それぞれの甘みや滋味をしっかりと主張してきます。
ボリュームがあるのに黒酢あんが爽やかに味を引き締め、
鶏から野菜から出るうまみが渾然一体となって、
コロコロホクホク、お箸がすすみます。
きっと、んっま~い!と呟いてしまう
ニコニコのひと皿ですよ。

(大内作)

神無月十月、今月の六品 その4

2012-10-02 10:45:41 | 酒の肴
「蕪とかつおのカルパッチョ」

秋の青魚の代表を秋刀魚と二分する戻り鰹。
数年前の当「六品」から生まれた「焼きっぱなし」は
いまや、大人気のメニューになっています。
その戻り鰹を、ちょいと洒落たひと皿にしてみました。

新鮮な鰹と、さっと塩茹でにした蕪との相性は、120点!
脂の乗った鰹のねっとりと濃い旨味、
さくっと歯応えの残る蕪のほのかな甘み、
シャキシャキに刻んだ蕪の葉の独特の辛み、
そしてツン、と味を引き締め引き立てるマスタード入りの特製だれ。
皿の上の赤白緑、彩りの美しさもさることながら、
何よりも味の取り合わせがほんとうに絶妙!
ああ、これで一杯飲めたら今夜は幸せ。
そんな気持ちになること請け合い、薔薇色の一献に誘う一品です。

(中村作)

神無月十月、今月の六品 その5

2012-10-02 10:44:33 | 酒の肴
「秋鮭ときのこのホイル焼き」

秋味こと、秋鮭。
そしていまは年中出回っていますが、本来は秋が旬の茸たち。
定番ながら、秋の味覚をぐっと詰め込んだのが、これです。
秋鮭ときのこのホイル焼き。

秋の鮭は、脂が抜けてさっぱりとしているので、
ほかの素材とよく馴染みます。
包まれてほどよく蒸し焼きになった具材の
それぞれのおいしさがひとつになる相乗効果。
ジュワっとバターが溶け、茸の滋味が鮭にうつり、
鮭の出汁がまた茸に沁みて…
ホックホクの、シャッキシャキ(^_^)。
ホイルを破いた瞬間の香りから、もう「ご馳走」です。
王道ながら、ほんの少しの加減でプロの味に仕上がった逸品は
開ければとたんに秋が香る、銀の宝箱。
熱々をふーふーと吹きながら、召し上がれ。

(箕村作)

神無月十月、今月の六品 その6

2012-10-02 10:42:40 | 酒の肴
「鴨のハリハリ鍋」

はりはりとは、水菜(京菜)の煮えばなの「ハリハリとした」
様態を表現したことばです。
本家はもちろん「鯨と水菜」ですが、
ここではちょいとアレンジして、鴨のハリハリ鍋にしてみました。

なんといってもおいしさの決め手は鴨。
築地の専門店から鶏とともに仕入れる鴨は、品質保証、太鼓判。
引き締まった深い旨味にシコシコの歯ごたえ、
その名の通りの水菜のハリハリシャキシャキとともに、
濃淡完璧なバランスの旨さを醸し出します。
さらに味の沁みたもち入り巾着や根菜の滋味が、
食べごたえある満足感に心を連れていってくれます。
蓋を取った瞬間から、ほうっと香気に満ちた湯気、
そして全身にゆきわたる至福の温かさ。
最後の汁の一滴まで味わいたい、ウマウマなお鍋です。

(箕村作)